2020シーズンの思い出深い試合・後編
前回の記事の続きです。まだ読まれていない方は先に下のリンクを読まれることをオススメ致します。
第22節 アウェー・Vファーレン長崎戦
昇格のライバルで、この時点で3位につけていた長崎との直接対決。プレーオフがないため、4位に位置していたアビスパが昇格圏に入るためには是が非でも勝利が欲しい場面だったが、6連勝中の勢いは本物だった。
14分に高い位置でサロモンソンがカットすると増山から再びサロモンソンへと繋ぎ、グラウンダーのクロスに遠野が合わせて先制。
50分にも遠野が決めて追加点。そして昨季アビスパが奪った全ゴールの中でも有数の、美しいゴールが生まれたのは65分だった。
FKをフアンマが胸で落とし、ペナルティエリアの外から石津が左足を振り抜く。強烈なシュートがニアサイドを打ち抜いて3点目。
昇格のライバルを相手に3-1で快勝し、昇格圏内をいよいよ視界に捉えた。
第23節 ホーム・栃木SC戦
7連勝と勢いに乗っていたが極端な過密日程ということもあり、長谷部監督はこの試合で大幅にメンバーを入れ替えることを選択。
前節から実に9人を代え、コンディションの良いこの試合のベストメンバーを起用した。
しかしというかやはりというか、急造チームのためなかなか連動した攻撃ができず、試合は0-0で推移していく。
82分にほぼゴール正面の良い位置でFKを獲得するも、いつものキッカーはいない。
ボールの近くにはプロ入り後FKを蹴ったことのない福満。
それでも助走から迷いなく右足を振り抜くと、完璧な軌道を描いたボールはファーサイドへと突き刺さる。
ゴール後に雄叫びをあげた福満の喜びようを見ても分かるように、様々な想いが込められたFKであった。
この勝利でクラブタイ記録の8連勝。3位へと浮上してみせた。
第26節 アウェー・アルビレックス新潟戦
10まで連勝を伸ばし、昇格圏内の2位まで上がってきたアビスパ。この試合でも14分、CKからグローリのヘッドで幸先よく先制するが、64分にこちらもCKから同点にされてしまうと流れは新潟へ。
厳しい展開になったが、アビスパの選手達は耐え凌ぎながら焦れることなく一瞬の隙を狙っていた。
71分、新潟のCKをしのぐと、自陣ゴール前で遠野が競ったこぼれ球を増山が拾いトップスピードで突っ走る。追いすがる新潟の選手達を引き離しながら長い距離を持ち上がり、残っていた新潟のDFを引き付けてからゴール前へのパスを選択。
その先にはフリーの福満。ボールが足元に入ってしまいGKも詰めてきたが、冷静にシュートを打ちこれで勝ち越し。
そのまま2-1で勝利し、クラブ史に名を刻む11連勝を達成した。
第29節 ホーム・ジェフユナイテッド千葉戦
ついに首位にまで浮上したものの第28節の町田ゼルビア戦で引き分けしまい、連勝が途絶えて迎えた一戦。
ここで敗れるようなことがあると一気に調子を落とす可能性があるために注視していたが、長谷部アビスパの強さは本物だった。
10分、福満のスルーパスにサロモンソンが右サイドのスペースへ抜け出し、マイナスのクロス。松本が左足で落ち着いたシュートを放ち、先制に成功する。
前半終了間際、ハイボールを競ったCB上島が危険な体勢から落下してしまい交代を強いられるというアクシデントはあったが、後半もアビスパはゴールに鍵をかけ続ける。
最後は藤井を投入して5バックに変更し、得意のウノゼロ(1-0)で勝利。
首位をキープすることに成功した。
第33節 ホーム・FC琉球戦
遠藤保仁の加入で勢いに乗っていた磐田、監督の交代で息を吹き返した松本山雅に敗戦。これで2位へと落ちてしまい、さらに下からはエジガル・ジュニオらを補強した長崎が猛追するなか迎えた一戦。
14分に琉球の小泉にポスト直撃のシュートを打たれるなど危険な場面もあったが、この試合で最も輝いたのは10月にモンテディオ山形から完全移籍で加入した山岸だった。
25分に胸トラップからGK直撃の決定的なシュートを放つと、31分には湯澤の右からのクロスをトラップしてシュート。腕に当たったようにも見えたが笛は鳴らず、これがアビスパでの初ゴールとなった。
さらに73分には遠野の速いスルーパスを完璧に収め、細かいタッチからGKとの1対1を制して追加点。
77分にもCKに上島が頭で合わせて3点目。
終了間際に1点は返されたものの、3-1の快勝で再び勢いに乗ることに成功した。
第39節 ホーム・ツエーゲン金沢戦
昇格をがっちりと手繰り寄せるために勝利が欲しい試合だったが、思わぬ方向へと進んでいく。
27分、ワンツーでアビスパの右サイドが崩されると、GKとCBの間を狙った正確なクロスに合わせたのは杉浦。先制を許すと、49分にもCKからゴールを決められ0-2。
そのまま時間は経過し、アビスパの攻撃が噛み合わないままあっという間に80分を過ぎてしまう。
それでも、ドラマはここから始まった。
84分、CKのこぼれ球を遠野が右サイドに展開し、サロモンソンがグラウンダーのクロス。
田邉が右足を合わせて1点を返す。
このゴール、そしてサポーターの手拍子も相まって流れが変わると、87分。カウンターから遠野が長い距離を運び、左サイドの田邉へ。
田邉はダイレクトでクロスを送り、これに遠野が左足を合わせる。
GKが触ったが止めきれず、同点。
しかし2点を奪うためにエネルギーを消費してしまい、終了間際には金沢に立て続けにCKを奪われる。
ここで、守備の面で忘れられないシーンが生まれる。アディショナルタイム5分だった。
CKを2失点目と同じようにニアで逸らされ、ファーサイドからヘディングシュート。
シュートは枠を捉えていたが、輪湖が決死のブロック。さらにこぼれ球を至近距離からシュートされたが、これもセランテスが伸ばした左足でセーブ。
その直後鳴り響く直後試合終了のホイッスル。勝ち点3を積みたかった試合ではあったが、結果としてこの勝ち点1がチームに大きな自信をもたらすこととなる。
第40節 ホーム・京都サンガFC戦
この試合が始まる前の時点で、2位につけるアビスパと3位・長崎との勝ち点差は僅かに2。
勝利だけが求められるためプレッシャーがかかることが予想されたが、アビスパのイレブンはこの大一番で最高の内容の試合を見せる。
45分、ピーター・ウタカにこの試合唯一の決定的なシュートを打たれたが、ここは上島が身体を投げ出してシュートコースを消した。
反撃は63分。左からのクロスが流れると、その先には走り込んできたサロモンソン。しっかりコースを狙った右足のシュートで先制する。
直後の65分にもキャプテン・前のパスカットから左サイドを田邉がドリブルで運ぶと、タイミングを図って中央の遠野にパス。
遠野が左足で放った豪快なシュートがクロスバーを叩いてネットを揺らし、2-0。
94分にも三國のクロスから決定機を作るなど、攻守共に京都を上回って快勝。昇格圏内をキープした。
第41節 アウェー・愛媛FC戦
この試合に勝利し3位・長崎が引き分け以下ならば昇格が決まるという状況だったが、シーズンを通して一戦一戦を積み上げていくことに集中できていたアビスパの選手達は、ここでも目の前の試合だけを見据えていた。
19分にCKから上島が頭で逸らして山岸がシュートを放つ。GK岡本が懸命に掻き出したがゴールラインを超えており、得点が認められた。
前半終了間際にはGKセランテスのゴールキックをフアンマが競り勝ち、遠野が巧みなトラップでDFの逆を取る。
そのまま左足でシュートを放つと、右隅に決まり追加点。遠野は極めて重要な終盤戦で3試合連続得点と、エースと呼ぶに相応しい活躍をみせた。
76分にはサロモンソンが積極的な攻め上がりを見せ、最後は左SBの湯澤から裏に走り込んだ右SBのサロモンソンへパスが繋がりネットを揺らしたが、これはオフサイドの判定。
3点目は奪えなかったが、最後まで安定した守備を披露し2-0で勝利。
試合が終了したあとはベンチ前で、同時刻に開催されていた長崎の試合を全員で確認。
インターネットの環境のためかサポーターが先に長崎が1-1で終了したことを知り、選手達が結果を知るまで少し待つという場面も見られた。
そして昇格が決定したことが分かると、選手・スタッフ全員が喜びを爆発。愛媛の地まで駆けつけたサポーターも含め、全員で喜びを分かち合った。
第42節 ホーム・徳島ヴォルティス戦
前節で昇格を決め、この試合では首位・徳島との優勝決定戦に挑むことに。とはいえ優勝のためには7点差での勝利が必要であり、可能性が高いとは言えないなか選手達がどういったテンションで試合に臨むのかに注目していた。
いざ試合が始まると、普段よりもリスクを負って得点を目指すアビスパイレブンの姿がそこにはあった。
しかし序盤は、徳島に危険なシーンを作られる。7分、縦パス一本で左SBの裏のスペースを突かれ、岸本にGKとの1対1へと持ち込まれるが、ここはリーグ戦初出場のGK山ノ井がビッグセーブ。
11分にも西谷にエリア内へと持ち込まれシュートを打たれるも、ここも山ノ井が立ちはだかる。
ある程度のリスクは承知の上。この積極的な姿勢が報われたのは16分。重廣のカットから、福満がタイミングを図って中央へパス。受けた石津があえて振り抜かずにコースを狙ったシュートを放つ。
これで先制に成功するもゴールパフォーマンスはなく、そのままボールを運んで再開を急ぐなどアビスパの選手達は確かに優勝を狙っていた。
しかし先制されてもまるでリスクを犯す必要のない徳島の守備は堅く、じりじりと時間が過ぎていく。
58分には山岸の横パスから重廣がミドルシュートを打つも、ここはGK上福元がセーブ。
61分にも遠野と重廣の連携から最後は重廣がシュートを打ったが、上福元に当たってクロスバーに直撃し惜しくもゴールならず。
7点差が極めて厳しくなった終盤はこのまま勝ち切ることへと意識を変え、徳島の攻撃を防ぎ切って1-0で勝利。
優勝は徳島に譲ったものの、最終的にその徳島と並ぶ勝ち点84、シーズンダブル(1シーズンで2勝すること)も達成し、J1昇格に華を添えた。