新加入選手紹介:金森健志 生まれ育った地への帰還
先日のカウエ選手の獲得で、補強は終了だろうと考えていた。
最大の懸念だったCHの層が厚くなり、J1でも戦えるだけの戦力となったからだ。
しかし予想の範疇にもなかった所から、真のラストピースがやってきた。
2013〜2016シーズンまでアビスパで活躍し、その後は鹿島アントラーズ、そして昨シーズンまでサガン鳥栖でプレーしていた金森健志である。
アビスパサポーターならば良く知る選手だが、思い出す意味も含めて読んで頂けると幸いである。
金森の生い立ちと、アビスパの頃
福岡市出身の金森は4歳の頃に、福岡市南区で活動する若久サッカー少年団でこのスポーツを始めた。
筑陽学園中学校時代には、全国中学校サッカー大会の決勝にまで進んでいる。
そのまま筑陽学園高等学校に進み、3年時には九州プリンスリーグで19試合20得点と大暴れ。中心選手として、全国サッカー選手権大会の福岡県決勝にも進出した。
卒業後、地元のアビスパ福岡へと入団。高卒ルーキーながら1年目の開幕戦でベンチ入りすると、途中出場を果たし早速のJリーグデビュー。
ボールへの執着心とアグレッシブなドリブルを武器に出場を重ね、すぐに中心選手となった。
そのまま計4年間をアビスパでプレーしたが、特に記憶に残っている試合が3つある。
1つ目は2014年8月のジュビロ磐田戦。
ホームの地で、J2屈指の実力を持つ磐田を相手に2-1とリードしたものの、猛攻にさらされ押し込まれる展開。
その状況を一変させたのが、前線に唯一残った金森だった。
86分、ロングボールを受けるとドリブルを開始。1度バランスを崩すもすぐに起き上がり、1対2の構図を制して追加点を決めたのである。
2つ目は2014年9月のギラヴァンツ北九州戦。
アウェーでの福岡ダービーで前半に2点を失い、大きく劣勢に立たされたアビスパ。
しかし後半、47分に堤、56分には城後のゴールで同点に追いつくと、直後の57分だった。
エリアの外に溢れたボールに、迷いなく左足を振り抜いたのは金森。
物凄い勢いのシュートがニアサイドを打ち抜き、逆転ゴールを奪ってみせた。
3つ目は2016年6月の川崎フロンターレ戦。
この試合が始まる時点で川崎は1stステージの首位に立っており、この試合で初優勝が決まる可能性があった。
そしてそれを観るために、サポーターは福岡の地に大挙して押し寄せていた。
一方のアビスパは最下位で4試合勝ちなし。誰の目にも、どちらが有利かは明らかだった。
そんな下馬評を覆したのが、金森。
前半9分、さらには15分と、強烈なシュートで立て続けに2得点を奪い2-0とリード。
最終的に2-2の引き分けで終わったが、川崎はこのドローが響き優勝を逃している。
このシーズンでアビスパはJ2降格。このタイミングで金森は、フル代表という目標のために鹿島アントラーズへの移籍を選択した。
鹿島アントラーズ、サガン鳥栖での働き
2017年、鹿島アントラーズへと完全移籍。
しかしここで、大きな壁にぶつかった。
2016年度のリーグチャンピオンであった鹿島の質の高さと層の厚さは分かった上での移籍だろうが、予想以上のものだったのだろう。
リーグ戦では5試合0得点。ACLでも目立った活躍はできず。
翌年には鹿島でのリーグ戦初ゴールを含む2得点を奪ったが、スタメンは4試合のみと本領を発揮するにはまるで至らなかった。
2019シーズンも前半戦の出番は途中出場のみの7試合に留まり、リーグ最下位に沈んでいたサガン鳥栖への期限付き移籍を選択。
鳥栖では得点こそなかったもののスタメン9試合を含む14試合に出場し、J1残留に貢献した。
2020シーズンには完全移籍へと切り替え、26試合に出場し2得点とまずまずの数字を残している。
2021シーズンに向けても契約を更新、キャンプにも参加していたが、古巣・アビスパからのオファーを受け開幕直前に移籍を決断した。
金森健志への期待
「覚悟を持ってやってきた」と本人も語っているが、ある意味では1番厳しい場所でプレーすることとなる。
アビスパサポーターが知る金森は、彼が最も輝いていた時のものだからだ。
ジュビロ磐田のDF2人との1対2を制した、優勝が懸かった川崎フロンターレから2得点を奪った、あの姿。
観る側のハードルが高いため、それを超えるだけの活躍が求められる。
つまり、サイドでの起用であっても得点数を増やすこと。そのためには、両足から強烈なシュートを打てるという強みを発揮したい。
そしてもちろん、鹿島と鳥栖での計4年間も決して無駄に過ごしてきたわけではない。
戦術になかなか馴染めず苦しんだ部分はあったが、自分なりに解決する道筋を探りもがいたことで、J1でもトップクラスの走力を手にした。
そこはアビスパにいた頃とは異なる姿だ。
アビスパは右SHの位置に入ることが期待されたクルークスに来日の目処が立っていない。
そこへ、HGも満たす金森が加わったことは大きい。
やはり金森には、シンプルに前を向いて仕掛ける姿が似合う。
走力もあるため、長谷部サッカーとの相性はとても良いはずだ。
J1の舞台で「あの頃」の金森健志が再び観られることを、いや攻守に渡って躍動する、それ以上の姿が観られることを願っている。