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第30節 アビスパ福岡vsサガン鳥栖

5年前、昇格し意気揚々とアウェーの地への乗り込んだ、2016年の開幕戦は1-2の敗戦。
今季第6節のアウェーゲームもスコアは0-0とよく耐えたが、内容においてははっきりと鳥栖のゲーム。

これらの悔しさを晴らすにはカップ戦の勝利では足りない。リーグ戦で、直接対決で勝つ必要があった。

シーズン全体の優劣は順位でつけられるが、ダービーマッチとはそういうものではないからだ。
順位が上のチームが強いのではなく、勝った方が強い。

近年のJ1での実績で勝るサガン鳥栖を今度こそ撃破し、我々のほうが強いのだと示すために非常に重要なゲームだった。

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前半戦

試合に入ってすぐに鳥栖がボールを握ることははっきりし、その通りに試合が進んでいく。

ただ、ボールの支配率では前回対戦時と大差なかったとはいえ、ほぼチャンスを作ることの出来なかったその時とは明らかに異なっていた。

ひと昔前のサッカーゲームで1人を動かすと他の全選手が一定の距離で付いてきていたように、アビスパはFP(フィールドプレーヤー)10人が適切な距離感にいるため攻撃的過ぎず守備的過ぎず、迷いなく2人・3人が絡むことが出来ていた。

鳥栖も10分の山下のシュートの場面のようにらしさを見せる場面はあったが、第6節と比べるとボールを支配は出来ても試合を支配出来なくなっているように感じた。

中心におり違いを生み出していた松岡や林がチームを離れたのだから仕方のないことではあるのだが。

試合が動いたのは41分。鳥栖のゴールキックを志知が跳ね返し、反応したフアンマが競り合いを制して蹴り込むという非常にシンプルなものだった。複雑な現代サッカーにおいて、シンプルに決める事ほど爽快なことはないだろう。
志知がボールを落としたポイント、身体の強さと冷静にニアサイドに蹴り込んだフアンマ。
どちらも素晴らしいプレーだった。

45分には、スルーパスから鳥栖の山下がネットを揺らしたがオフサイドの判定。映像を何度確認してもどちらにも取れるような非常に微妙な状況に見え、アビスパとしては助けられた。

後半戦

後半に入り、試合の熱さはさらに増す。
スコアが動くことだけがサッカーの面白さではないことをよく表した時間帯だった。

その時を経て、ゴールはアビスパに生まれる。

68分、自陣での山岸の落としから金森、前へと繋ぎ、ここでの前の選択が完璧だった。
あえて切り返した上でもう1つタメを作ったことで鳥栖の3選手の目線を引き付け、ギリギリのタイミングでスルーパス。局面としてはここでほぼ勝負あり。
抜け出した山岸の切り返しは大きくなりDFに追い付く時間を与えてしまったが、粘り強く足を出したことでボールはネットへ。

この追加点の影響は大きかった。アビスパイレブンがすべきプレーをはっきりさせ、84分に3枚を代えたことでより顕著となった。

鳥栖も交代枠を使いながらゴールを目指したが、課題はFWの選手が抑えられた際の得点の奪い方。

アディショナルタイム3分に高い位置でのボール奪取から、重廣がお膳立てし渡が決め、試合の行方は揺るぎないものとなった。

3-0。2016シーズン開幕戦の悔しさも、今季第6節ではっきりと見えた内容面での差も、一挙に晴らす完勝。

J1でのサガン鳥栖戦の初勝利となると同時に、大袈裟ではなくクラブ史に残すべきダービーマッチの1つとなった。

採点(及第点5.5)、寸評

GK村上昌謙 7.5    50分のヘッド、83分の酒井のシュートをしっかりとストップ。安心して観ていられる守護神。

DFエミル・サロモンソン 6.5  前半に惜しいFKを放ったが得点ならず。攻撃性能は抜群だが守備時の1対1の対応にやや課題。

DF奈良竜樹 8.0  気になったのはエドゥアルドと競り合い、ボールがゴールに向かった場面ぐらい。圧巻の強さで鳥栖の攻撃をシャットアウト。

DF宮大樹 7.5    古巣相手に空中戦の強さを見せつけた。グローリとのポジション争いは激しさを増すばかり。

DF志知孝明 7.0  鳥栖の穴を突き、フアンマの先制点をアシスト。なんでもござれの、総合力の高さを感じるSBだ。

MF金森健志 7.0    昨季まで所属していた古巣相手に攻守に奮闘。献身性と俊敏性を兼ね備えた右の急先鋒は鳥栖を苦しめた。

MF前寛之 8.0  DFの前の空間を支配しつつ、完璧なタメとパスの精度で2点目を生んだ。夏場の疲労感が抜け、再びコンディションを上げた印象。

MF重廣卓也 7.0  立ち位置はCHだが、純粋なCHというよりも前と斜めのラインを作り得意のパスセンスを発揮。中でも3点目のアシストは秀逸だった。

MF杉本太郎 6.0    ドリブルのキレはあるがその後に課題。オフサイドの判定に助けられたが、45分にネットを揺らされた場面では小泉に裏を取られた。

FWフアンマ・デルガド 8.0  MOM。積極的に守備をこなしながら、攻撃の起点に。さらに41分にはファン・ソッコに競り勝ち貴重な貴重な先制点をゲット。

FW山岸祐也 7.5  前のパスに飛び出し、2点目をゲット。切り返しは大きくなったが最後まで諦めなかった。57分のサロモンソンへのパスも絶妙。

FW渡大生 7.0    70分にフアンマに代わり出場。守備のタスクを遂行し、終了間際にはゴールを射抜いて試合を決定付ける3点目を奪取。リードした状態で投入されたFWとしてこれ以上ないような働き。

MF田邉草民 6.0    75分に金森に代わり出場。珍しい右SHでのプレーだったが、中央寄りの立ち位置で守備を引き締めた。

FWジョン・マリ 採点なし 84分に山岸に代わり出場。全体として逃げ切りを図る状況で、個で打開できる彼が最前線にいる意味は大きい。

DF湯澤聖人 採点なし 84分にサロモンソンに代わり出場。守備に重きを置きつつも積極性は失わず。

MFジョルディ・クルークス 採点なし 84分に杉本に代わり出場。左SHでプレーし、重廣への完璧な落としで3点目を生み出した。

長谷部茂利監督 8.0 前回対戦時からの成長を強く感じさせる、見事なサッカーを披露。サポーターの信頼は増すばかりだ。

気になった点

ベスト電器スタジアムの芝の状態は気掛かり。
凸凹で非常に荒れており、2点目の場面での朴一圭選手のように重要な局面で足を滑らす選手が見られたことは残念だった。

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