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アルテリーヴォ和歌山 クラブスタッフ 平川凌大さん インタビュー・後編

Jクラブが存在しない和歌山県からJリーグを目指す、アルテリーヴォ和歌山。

今回はそんなクラブを広報として支え、8月4日に発売(福岡の3店舗では8月6日より発売)となったサッカー雑誌「Voyage」の取材の対応を含め、幅広く活躍している平川凌大さんに話を伺った。

アルテリーヴォ和歌山のサポーターの方はもちろん、岡山湯郷Belle、アルビレックス新潟、ガンバ大阪、欧州5大リーグ、様々なクラブの話が出てくるため、サッカー好きの方ならば楽しんで頂けるはず。

またクラブスタッフを目指している方にとっては非常に参考になるに違いない。

なお、平川さんのサッカーへの情熱が溢れ、10,000字越えの大ボリュームとなったため前・中・後編と分けて掲載する。

前編はこちら



中編はこちら


後編の今回は「和歌山への想い、アルテリーヴォ和歌山と平川の目指すもの」
以下本文。

生まれ育った和歌山に、念願のサッカークラブのフロントスタッフとして帰ることが出来た平川。

―平川さんの和歌山県の好きなところを教えてください。

「和歌山を離れた時に、観光資源がたくさんあるなと感じました。
フランスに住んでいたからかもしれないですけれど。

coupe de la ligue決勝を観にStade de Franceへ

フランスは観光大国で世界で1番観光客が多い国なんです。
フランスも和歌山も一緒で、海のレジャーがあり歴史的な建造物もあって。
例えば熊野古道、高野山等がありますし、夏になれば海があります。
冬になると雪の高野山が本当に綺麗で、四季折々の楽しさがあることは和歌山が誇れる部分なのかなと思います。

好きなスポットとしては、岩出市出身なので岩出にある根来寺(ねごろじ)というお寺を挙げさせてください。
和歌山の岩出、中でも根来寺は僧兵というお坊さんの兵隊がいたことが有名で、加えて個人的に根来寺には私の祖父母のお墓があるので、おじいちゃん、おばあちゃんに会える場所というのもあって。
とはいえもちろん、生まれ育った岩出市を象徴する場所が根来寺なので、そういった意味で見ていただきたいと思います」

―アルテリーヴォ和歌山の良さはどういったところに感じますか?

「サッカークラブというのは始めからJリーグを目指すために作ったところがほとんどだと思うんですけれど、アルテリーヴォはもともとサッカーが起点で始まったわけじゃないんです。
和歌山を元気にしたいからサッカーチームを作ってJリーグのチームを作ろうとスタートしているので、地域との連携や取り組みというのはアルテリーヴォの良さだなと思います。

例えば今年の1月に和歌山にあるテーマパークの和歌山マリーナシティで『フェスタ・ルーチェ』という、光の祭典が開催されていました。
その中で平日に、アルテリーヴォが施設を貸し切って福祉施設の方を招待し、楽しんでもらおうという企画を行ったんですけれどもコロナ禍ということで難しくて。
そこで、代わりにアルテリーヴォのジュニアユースだったりスクールの生徒、アルテリーヴォを応援してくださっている関係者・サポーターの方を招待して、ステージで選手がダンスを踊ってみたり地元のシンガーソングライターの方にパフォーマンスしてもらったりというイベントを行いました。
そうやってレジャー施設を貸し切って、アルテリーヴォ和歌山に関わる全ての皆様と1つになって楽しもうというのはなかなか珍しいと思うんですよね。

また私がまだいなかった時期ではあるんですけれど、企業に協賛金と言う形でお金をいただいてTシャツを作り、福祉施設の子供たちにプレゼントするといった活動もしてますし、福祉の面に目を向けているのはこのクラブ良さなのかなと思っています。

働き方という部分ではとても自由にさせていただいているんですけれど、それは児玉GMの器の大きさだと思っています。
任せてくださっているという嬉しさと共に責任感も感じるんですけれど、他のスタッフも若くて、例えば大北(アルテリーヴォの背番号7・キャプテン。Voyage第2号にインタビューを掲載)も30歳になったばかりですし、私と大野というスタッフは共に28歳です。
ここ数年で若返っていて、活発に意見が出るしクラブとしてよしやろう、動こうとなっているので、そこもアルテリーヴォの良さなのかなと思います。

また、関西サッカーリーグの中ではサポーターが多く、たくさんの方が試合を観てくださっていることは本当に嬉しい限りです。
2019年には有料試合で2000人以上のお客様が集まってくださいました。地域リーグで2000人集めるというのは、和歌山県にもアルテリーヴォにもポテンシャルがある証拠だと思うんですよね。
コロナ禍で声が出せない中でも、サポーターの方は太鼓や木琴を使って応援してくださっています。
木琴で応援するチームはJリーグやJFLを見てもアルテリーヴォのサポーターだけじゃないでしょうか。
サポーターの方が心からアルテリーヴォを愛してくださっていますし、熱心に応援してくださっているというのはこのクラブが誇れる部分です。
髙瀨(アルテリーヴォの背番号10。Voyage第2号にインタビュー掲載)も言っていたと思うんですけれども、Jリーグ以上の応援をしてくださっていると本当に思っていますし、サポーターの皆さんに感謝しています。
私は現在運営責任者をさせていただいているので、コロナ禍ということもあり制約というかお願い事をすることがどうしても増えてしまうんです。
声を出さないでくださいとか、メガホンを使わないでくださいとか。
そのお願いを皆さんにご理解いただいて応援してくださっているということに、本当に感謝しているところです。
ですので、サポーターの結束力という部分もアルテリーヴォの良さだと思います」

―クラブスタッフの面白さは、どういったところにあるとお考えでしょうか。

「例えば今回はその最たる例です。
『Voyage』さんとご縁をいただき大北と髙瀨にインタビューしていただいて、それが形になって世に出る瞬間。
そしてそれをサポーターの方が手に取って読んでくださる瞬間。
そういった、アルテリーヴォ和歌山だったり選手だったりスタッフが、世の中に発信されて手に届く瞬間というのは裏方としての喜びを本当に感じます。

また、フロントスタッフとして1つのものを作り上げていくという点で言えばホームゲームです。
運営責任者をさせていただいている中で、試合の運営計画を考えてそれをクラブで共有し、当日それを形にする。
そして両チームの選手に気持ちよくプレイしていただいて、90分何事もなく試合が終わった時は喜びもありますし安堵もあります。
運営責任者というのは平等でないといけないと考えています。両チームに対して平等に接するというのは僕のちょっとした信念です」

上記のように冷静な思考を持ちつつも、アルテリーヴォが勝利した試合のあとはやはり、嬉しさが込み上げてくる。

「もちろん、試合が終わってアルテリーヴォが勝った時というのはかけがえのない喜びがあります。
アルテリーヴォの試合は勝ったあと、有観客試合であればサポーターと選手・スタッフとアルテリーヴォガールズと一緒に集合写真を撮るんです。
僕はフロントスタッフなのでそこに入る事はなく、でもカメラマンの方がカメラを向けて写真を撮る時に傍にいて。
掛け声をかけて写真を撮っている時のその光景が僕は大好きで、選手・チーム・スタッフ・アルテリーヴォガールズ・サポーター・みんなが笑顔で写真に収まっている姿というのは幸せだなと思うんですよね」

一方で、サポーターからは見えない場所での仕事にも信念を持って行っている。

「毎試合、来場されるお客様に配るパンフレットをつめるなど、どのクラブであってもクラブスタッフには地味な仕事もあると思うんです。
でも、例えば商品を買ってくださったお客様の手元に届いて、アルテリーヴォを応援してくださる瞬間を目にするとこの仕事をしていて良かったなあと思いますし、アルテリーヴォが提供したことが世に伝わって、お客様の喜びに繋がったということを感じるとそれが何よりの喜びだなと思います」

―アルテリーヴォ和歌山の、平川さんの今後の目標を教えてください。

「アルテリーヴォ和歌山としては、もちろんJFL昇格。そしてその先にあるJリーグ昇格が、チームとしての目標です。
クラブとしては、今年『For Smile〜100年輝く笑顔のために〜』という、簡略化して言うと行動指針のようなものを掲げました。
意味としては言葉の通りで、アルテリーヴォ和歌山というクラブが勝利のためや貢献活動のために行動をする、その根底に何があるかというと、関わる人全ての笑顔のためというのがあるだろう、と。
ですのでクラブとしては、もちろんJのクラブになりたいんですけれども、それをゴールにするのではなくて、Jリーグクラブになることを1つの通過点としてとにかく和歌山を元気にしたい、活性化をしたい。
それを、和歌山にプロサッカークラブが出来ることで達成したい、というのがクラブとしての大きな目標です。

平川凌大としての目標は、まずはアルテリーヴォ和歌山がクラブとしてチームとしての目標を達成できるように、アルビレックス新潟や岡山湯郷Belleでの経験をしっかり還元することです。
それに加えて、今年の4月の下旬から個人としてTwitter(@Ryota_Hirakawa_)をしているんですけれども、サッカークラブやスポーツクラブのフロントスタッフを志す人が1人でも増えてくれたら嬉しいなという思いがあるんです。
スポーツのフロントスタッフは夢のある職業だと思われがちな所があるんですけれど、実際はシビアな環境でもあると思うんです。
私達はこの環境を良くしたいと思っていますし、夢のある仕事にしたいしそう思ってもらいたいと考えています。
そのために私の場合はTwitterを通じて、志す人が増えてくれると嬉しいなと考えています。
アルテリーヴォ和歌山のツイートをリツイートしてみたり、フランス語を勉強していたのでレキップ(フランスの)の記事を引用リツイートで紹介してみたり。
『こんなフロントスタッフが和歌山にいてるんだ』と少しでも知ってもらえて、こういう仕事をしているんだなと知ってもらえたらなと思っています。
それら全ての根底にあるのは『和歌山のため』という思いだけです。
『最後は和歌山で』という思いと『和歌山でサッカーに恩返しをしたい』をしたいという思いが全てなんです。

私は実はサッカー部に入ったことはなくて、ただサッカーが好きという気持ちだけでここまで来ました。
今でも覚えているんですけれど、小学4年生の時に、友達が『平川、サッカーやろうよ』と誘ってくれたのが全ての始まりなんです。
その一言のおかげでサッカーが好きになって、サッカーがきっかけで友達ができて、フランスに行った時もサッカーが共通言語になってくれたんです。


どれだけ僕がフランス語を話せなくても『メッシ、ロナウド』や『レアル・マドリー、バルサ』は皆知っているんです。
だから、フランスのクラスメイトもそうだし、どの国に行っても、サッカーの話をすれば自ずと友達になれるんですよね。
僕はフランス語と英語を齧ってきましたけれど、サッカーって本当に言語だなと思うんです。

SM CAENがLigue1昇格を決めた後のピッチ②


サッカーのおかげで友達もできたし、ヨーロッパも世界も見ることができたのでサッカーには心から感謝をしていて、ある意味憑かれたのかも分からないです(笑)
なので、最後は僕を救ってくれたサッカーに恩返しをできれば。そしてその場所が和歌山であれば1番幸せだなと思って、こうしてアルテリーヴォ和歌山で仕事をさせてもらっています」

アルテリーヴォのため、そして和歌山のため。
平川とサッカーの物語は、これからも続いていく。


平川 凌大(ひらかわ りょうた)

和歌山県岩出市出身。1992年11月25日生まれ。
趣味はスポーツ観戦。サッカーはもちろん、新日本プロレスやNFLなどもよく見ている。
「新日本プロレスはエンターテイメントとしてもそうですし、人生を変えてくれたスポーツでもあるので、本当に大好き」とのこと。
他にはラジオが好きで子供の頃からオールナイトニッポンを聴いており、現在もオードリー、Creepy Nuts、佐久間宣行のオールナイトニッポンをよく聞いているそう。
大阪のFM802というラジオ局も好む。

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