サッカーコラム:もう、この質問やめませんか
よく見る質問
Jリーグや日本代表の試合の中継を、試合後の選手へのインタビューまで見たことのある方ならこの質問を聞いたことがあるでしょう。
「今日の試合を振り返ってください」
「ゴールシーンを振り返ってください」
最初の質問として当たり前のようになってしまっているけれど、僕はこの質問はやめるべきではないかと考えている。
はっきり言って、試合を観ていたはずのインタビュアーの方がする質問じゃない。相手に丸投げしているだけだ。
こちら側も慣れてしまっているけれど、改めて考えてみたら選手に対して失礼じゃないだろうか。
例えるなら、映画の上映試写会で映画を全部観たあとに出演者が登壇して、その出演者にインタビュアーが「どんな映画か振り返ってください」と聞くようなもの。
いやいやあなた観ていたんでしょう?と怒られても何一つ不思議じゃない。
本来なら、インタビュアー自身がその映画を観て、そして感じたことから質問に繋げていくというのが普通なはず。
それなのに、なぜか日本サッカー界ではこの失礼な質問が当たり前のように行われている。
おそらくサッカーのことは詳しくなく、あくまでも仕事として行っている方も多いであろうことも関係しているのだろう。
でも仮にそうだとしても、試合を観ていたのであれば「ゴールシーンは角度がなく簡単ではなかったように見えましたがあのゴールシーンを振り返ってください」のように、せめてひと手間加えることはできるはず。
自分なりに、試合を観たからこそ、感じたからこその質問をぶつけることで選手からもテンプレート的な回答ではなく、より深い部分まで引き出すことができる。
日本サッカーの成長のために
僅かな差のように見えるかもしれないけれど、これを繰り返すことは大きな差を生んでいく。
サッカーが本気で好きな方は選手だけでなく、周囲の事柄の細かな部分まで見ている。
だからこのひと工夫を繰り返すことは、インタビュアーの方自身の評判を上げることにも役立つ。
そして毎回決まった質問をするよりも、インタビューする側もされる側も臨機応変に対応できるようになっていく。
最終的には「振り返ってください」という言葉を使うことなく、全てを自らの言葉で質問することが当たり前のようになると、観ている僕ら側としても楽しみが増えることになる。
この部分の進歩は、回り回って日本サッカーの質を上げることにも繋がる。
日本サッカーが更に発展しW杯や五輪で安定的な活躍を見せるためには、選手の質を上げようとするだけでは足りない。
インタビュアーの方などメディアをはじめとする、サッカーに関わるすべての人の質の向上が必要不可欠なのである。