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アビスパ福岡が向かうべき方向性

J1昇格を決めた、我らがアビスパ福岡。
もちろん未だに喜びの気持ちも、明日の試合での奇跡の優勝の可能性も捨てきれないでいるが、思考の多くはすでに来季に向いている。楽しみな反面、来季のJ1がこれまでになく厳しいシーズンになることは確実だからだ。

今季は降格クラブがないために来季のJ1は20チームで争われ、2021シーズンにはチーム数を通常通りの18に戻す。つまり、来季は4クラブが降格となってしまう。
そんな過酷なJ1を戦い抜き、悲願である残留を果たさねばならない。そのための戦いはすでに始まっている。

チーム作りと、前書き

チーム作りというものはしばしば、料理に例えられる。
報道通りならば来季も長谷部茂利というシェフがその腕前でできる限りの創意工夫を重ねるだろうが、そもそも材料が良くなければそれにも限界がある。

だからこそ、調理が始まるよりも前、つまりはトレーニングが始まるまでに良い材料=選手を集めるという強化部の仕事が重要なのだ。


今回は、J1で目標を達成していくためにクラブが、特に強化部がどういった方向性で行くべきなのか、個人的な考えを纏めてみた。
現状と来年に関しては現実を直視し厳しいことも書いているが、全ては来季残留を達成ほしいからで、そののちにはJ1でも強豪になってもらいたいからだ。
読んでいて腹の立つ方もいるかもしれないが、ご了承いただければと思う。
なお、今回記したのはあくまでも方向性であり、あえて具体的な選手名は出していない。

まず前提として、アビスパが来季目指すべき姿と数年後目指すべき姿とでは、大まかな方向性では同じでも行き着くべき先は大きく異なっている。

アビスパの現状

来季はきっと、クラブとしては中位を目指すという発言になるだろうが、現実的に考えると残留さえできれば100点と言っていい。

早速現実を突き付けることになってしまうが、来季のアビスパは、J1で資金力ではおそらく下から1〜4番目。
また現在のチーム力を単純に順位で評価すると、J2の2位ということはJ1においては1番下ということになる。

さらに、現在のチームの主力は期限付き移籍で加入している選手が多い。
主力のうち、遠野(川崎)、上島(柏)、増山(神戸)、サロモンソンと松本(広島)、福満(C大阪)と計6選手が期限付き移籍である。

期限付き移籍とは選手を借りるということであるため、返すのが基本。
買取オプションが付いていたりすれば話は別だが、6選手のうち半数を期限付き移籍の延長という形ででも残すことができれば上出来だろう。
ということは主力の引き抜きが仮にないとしても、それでも複数人抜けるのはほぼ確実ということ。

そして上にも書いたように、来季は4チームが降格となってしまう。
つまり、お金はない、戦力もJ1では厳しい。期限付き移籍が満了し戻る主力もいる。降格するチーム数も多い。

という状況からスタートし、補強をして残留しなくてはならない。
ここまでネガティブなことばかりを書いたが、もちろんポジティブな要素もある。

長谷部監督はただ理想を追うのではなく現実をしっかりと見つめ、現有戦力を最大限にいかすということに長けている。

さらに、チームの背骨とも言うべきセンターライン(GK、CB、CH、CF)の戦力が充実している。
GKはセランテスと村上、CBにはグローリとグティエレス、上島。CHは前、重廣、松本。CFにもフアンマ、山岸、遠野。

期限付き移籍組を含めてはいるが、彼らが戻ってしまったとしても、過去の昇格時にここまでセンターラインが整っていることは一度もなかった。
また、川森社長をはじめとするフロントが前回の昇格を経験していることも大きい。

来季目指すべき姿

さて、現実を並べ終えたところで、では具体的にどうすべきかだ。
もちろん最初にすべきは、期限付き移籍組の慰留。ここはすでに着手しているだろう。
完全移籍への移行が無理であれば期限付き移籍の延長という形でもいい、すでに長谷部サッカーが浸透している主力は可能な限り残すべきだ。

ただ、期限付き移籍組だけでなく現在の主力が引き抜かれてしまう可能性もあるし、そもそも現有戦力でJ1に挑むのは無謀というもの。
残留のためには補強が必要不可欠。
問題なのは、資金力に乏しいなかでどういった選手の獲得を目指すかだ。

そこで参考になるチームが、近場にある。
大分トリニータだ。大分は、資金力では今季のJ1で最下位。だが、順位は昨季は9位、今季も11位と中位に付けている。見事な成績だと言っていい。

その秘訣は、「片野坂監督のサッカーに合う、J1での実績があまりない選手」を補強できていることにある。

具体的に挙げると、湘南で活躍したが鹿島では出場機会を失っていた三竿雄斗、甲府で光るものを見せていた島川俊郎、J2の横浜FCと徳島で活躍した野村直輝、当時J2の熊本で活躍していた田中達也など。大分はそれに加えて優れた新卒選手を獲ることにも長けているが、そこを真似することは1年では難しいだろう。

もちろん片野坂監督の手腕は素晴らしい。けれどそれだけではなく、資金力の乏しいクラブが残留するためには監督の手腕と強化部の手腕の両立こそが大切なのである。


アビスパも来季に向けて、長谷部監督のサッカーに合う、名より実の補強で着実にチーム力を上げるべきだ。
つまり、J1で出場機会に恵まれていない選手やJ2の資金力のないクラブで活躍している選手を狙うべき。
また、残留だけが目標となる来季はともかく、2022シーズン以降は有望な新卒選手の獲得、そして実を結ぶまでに時間のかかるユースの強化にも力を注ぐ必要がある。


3〜5年後目指すべき姿

来季は何がなんでも残留し、その後も残留を繰り返すことで少しずつ資金力を上げていく。もちろんその中では主力を引き抜かれることもあるだろうし、引き抜きなり解任なりで監督交代を迎える可能性もある。
主力選手は可能な限り契約満了時の移籍を防ぐことで移籍金を得、次の補強の原資とすることが大切。監督に関しても、長谷部監督と同じ方向性の人物を精査して招聘し、路線は変えてはならない。

もしもこの途中で低迷してしまった場合も慌てて身の丈に合わないことをするのではなく、ピンポイント補強で乗り切ることを考える。
それでダメであれば、どこかが間違えていたのだろう。照査し、反省し、もう一度最初からやり直せばいい。
長期に渡ってクラブを安定して運営することは、強化を上回るほどに大事なことだからだ。

その先、目指すべき姿

次の段階は中位で安定しての残留が目標となる。
この頃には新卒選手への競争力も少しずつ上がってくるだろうし、フロントの頑張りで年間予算も今よりは大きく増えていることを期待したい。

そこが達成できたならば次に目標とすべきクラブは、サンフレッチェ広島だ。
資金力では真ん中より下なのだが、2012、13、15年とリーグ優勝を経験し、今季も8位。
広島はユースが強くそこから上がってくる選手が多い。それ以外でも優れた新卒選手を獲得し育成することに長けている。
だから選手の獲得にお金を使うことが少なく、若手を積極的に起用する土壌もある。そうやって日本代表クラスの選手を何人も生み出している。

また、広島は意外とベテランの選手も多い。
実はベテランには大きなメリットがある。キャプテンシーや自らの経験をチームに還元することもそうだが、若手と比べて引き抜かれにくいのだ。だからある程度の資金力があれば、計算の立つベテランを適正な人数保有しておくことで、主力の大量流出を防ぐことができる。


資金力が決して豊富でないクラブが優勝を狙えるまでになるためには、ユースの強化と優れた新卒の獲得、実力の確かなベテランの確保。加えて期限付き移籍で借りる側ではなく貸す側になること、外国籍枠も含めて足りない部分はピンポイント補強を行うことも大切だ。

ここまで来る過程でアップダウンがあるだろうが、フロントの姿勢がブレることはあってはならない。

アビスパ福岡への想い

夢物語のように聞こえるかもしれない。
数年後の部分は理想論に思えるかもしれない。
けれども、実際にやれているクラブがある。
フロントの努力はもちろん必須だが、福岡という大都市に本拠地を置くアビスパがやれないわけはない。
とはいえそういったクラブになるためには多くの時間がかかるだろうし、その過程では再び低迷してしまう時期も来るかもしれない。
それでも、安易に方向性を変えないこと。
どうしても変えるならば、相応の理由と覚悟が必要だ。


誰になんと言われようと、アビスパ福岡というクラブがJ1で優勝してアジアや世界を相手に試合をする、その日が訪れることを本気で信じている。
厳しいことも言うが、全ての根本にはクラブへの愛情がある。
それがいつか報われると信じて、我々は明日もまた応援するのである。


※何度かに分けて出す、シーズンレビューや今回のような記事を、最後は加筆修正を加えて纏め、年間総まとめとして載せる予定です。

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