第34節 アビスパ福岡vs大分トリニータ レビュー
残留を達成し、俗に言う「5年周期」は打破。
次なる目標は開幕前に長谷部茂利監督が掲げていた「勝ち点50」。
サポーターでさえも多くが厳しいと感じていた数字までも、あと1勝と王手をかけて挑んだ大分トリニータ戦だった。
前半戦
3バックを採用するチームが苦手とは以前から述べてきたが、それに対して長谷部監督が前節・北海道コンサドーレ札幌戦でみせた回答は「同じシステムにしてぶつける」というものだった。
今節の相手、大分トリニータも3バックのチームということで、今節も3バックを継続して挑んだアビスパ。
試合はトリニータペースで始まったがこれは予想の範囲内。
しっかりしのぎながら、試合の中で修正できることはアビスパの強みの1つだ。
徐々に盛り返していたなか、25分にアクシデント。トレヴィザンと接触した山岸が起き上がれず、負傷交代。金森が投入された。
チーム得点王の1人を欠くこととなってしまったが、チームに動揺は見られない。
これで得たFKをクルークスが直接狙うも、惜しくも枠の横。
試合が動いたのは直後の32分のこと。
カウンターから左サイドの志知へ展開すると、志知はエリア内を確認し迷わずクロス。エリア内にはジョン・マリのみだったが、ピンポイントクロスとしか表現のしようがない完璧なボールはその頭に一直線。
トリニータのDF三竿に完全に競り勝ち、頭でネットを揺らした。
おそらくこのゴールには、トリニータの弱みを分析しそこに付け込む狙いが表れていた。
トリニータの3バックはが中央のエンリケ・トレヴィザンが185cm、右の刀根は182cm。しかし左の三竿は175cmと、高さには課題がある。
守備ブロックが整う前に左からクロスを上げると必然的に三竿が中央に絞って対応することになるため、意図的にミスマッチを作り出したのではないだろうか。
先制後はアビスパがリズムを掴み、ボールは持たれてもシュートまでは許さない。そのままリードして折り返すことに成功した。
後半戦
トリニータは後半開始から井上健太を投入。スピードをいかしチャンスを生み出していくが、やはりなかなかシュートまでは至らず。
大きなチャンスだったのは74分。FKからこぼれ球を途中出場の小林が切り返し、シュート。抑えが効いていたが、これはGK村上の正面だった。
77分にもCKを途中出場の長沢に合わせたが、奈良が身体を当てていたことで事なきを得た。
アビスパもただ守るのではなくロングカウンターを繰り出し、83分にはサロモンソンのクロスから途中出場の田邉、フアンマと繋いでシュート。
追加点はならずとも、トリニータの勢いを削ぐ効果はあった。
そのまま1-0でアビスパが勝利し、ついに勝ち点50に到達。
あと4試合を残しての達成で、どこまで伸ばせるか楽しみだ。
一方のトリニータはシュートの意識がやや低く、怖さを見せられず。またアタッキングサードで斜めではなく縦にポジショニングを取る場面が目立ち、ポゼッション率の高さをチャンスに繋げられなかった。セットプレーからは惜しい場面を作ったものの、残留のためにはしっかりと得点に繋げたい。
採点(及第点5.5)、寸評
GK村上昌謙 6.0 ピンチは決して多くなく、良い意味で採点は伸びなかった。
CB奈良竜樹 7.5 MOM。空中戦の強さや危険な場面でのブロックはもちろん、5バックの恩恵か積極的に前に出てプレスをかける場面が目立った。
CBドウグラス・グローリ 7.0 紙一重の場面でみせる出足の速さを、この試合でも発揮。DFラインを統率した。
CB宮大樹 6.5 十分にJ1ならではのプレーをみせていたが、88分のように競り負ける場面もあった。
WBエミル・サロモンソン 6.5 前回出場時から大きく修正し、キックの精度が戻ってきた。カウンター時の攻め上がりも魅力。
WB志知孝明 7.0 強度の強いプレーはもちろん、ピンポイントクロスで先制点をアシスト。課題は47分に井上に裏を取られた場面ぐらいか。
DH中村駿 6.5 守備面はもちろん、攻撃参加も増えている。前との斜めの関係性は安定感抜群で、頼りになる選手の1人だ。
DH前寛之 7.0 危険なエリアを消す能力はこの試合でも健在。J1への慣れか、上手さを見せる場面も。先制点にも関与した。
STジョルディ・クルークス 6.0 守備意識は高かったが、普段のような凄みは見せられず。やはりSHが最適なポジションか。
ST山岸祐也 5.5 26分の激しい接触で無念の負傷交代。試合をこなす毎に動きの質を上げていただけに、早期の復帰を願うばかり。
CFジョン・マリ 7.0 先制点をゲット。拮抗した試合を「壊せる」個の力は大きな魅力だ。徐々に守備意識も高まっている。
ST金森健志 6.5 山岸の負傷により29分から出場。豊富な運動量、積極性でピッチを駆け回った。64分の接触で負傷しなかったのは何よりだった。
ST田邉草民 5.5 クルークスに代わって69分から出場。守備の意識を持ちながら、カウンター時にはゴール前へ侵入した。
CFフアンマ・デルガド 6.0 ジョン・マリに代わって69分から出場。プレーの安定感が増しており、途中出場でもスタメンでもチームに貢献できる選手。
ST渡大生 採点なし 後半アディショナルタイム、金森に代わって出場。守備意識の高さが評価されていることが分かる起用法だった。
印象に残ったシーン
前半にジョン・マリがリフティングをみせた場面。「スコーピオン」をみせたGKイギータのように、魅せることもサッカー選手の役割の1つであるため、個人的には悪いことだとは思わない。
だが長谷部監督のサッカーに不要なものであることも確かで、マリが促されて片野坂監督に謝罪したことは良いことだった。
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