【随想】ふるさと納税、これでいいのか?#3−ふるさと納税に伴う国税補填(3/6)
2015年度、全国の地方自治体が受け取った「ふるさと納税」の寄付額は、合計で1,653億円にのぼる。前年度比で4倍である。この額は、2016年度にはさらに膨らむことが確実視されているという。
ふるさと納税をすると、寄付額から2000円を差し引いた金額分だけ、住んでいる地方自治体や国に納める税金(地方税・所得税)が減ることになる。したがって、ある人が3万円の寄付をしたとすると、税負担は28,000円に軽減される。仮に、1万円の返礼品を受け取れば、2000円の負担なので8000円の得となる計算だ。寄付を受けた自治体は、寄付金3万円を受け取って1万円の返礼品を提供したので、2万円の得。
ところが、寄付者が居住している自治体では、本来受け取れるはずの住民税が目減りする。国も受け取れるはずの所得税が減る。もちろん、寄付者の所得にもよるが、報道によれば、ふるさと納税による東京23区の税収減は約130億円にのぼり、2015年度の5倍以上になるというから深刻である。
実は、問題の根はもっと深いところにある。ふるさと納税で税収を減らした自治体はその減収分の75パーセントの補填を受けることができる。われわれの目に触れないところで、国はふるさと納税の穴埋めをしていたのである。国から地方自治体への補填の額は、年に数百億円規模になるという。
もちろん、ふるさと納税の補填は国税により、結局は国民全体が負担する。どれくらいの人がふるさと納税を利用しているか知らないが、積極的にこの制度を利用している人の分を国民全体の犠牲によって支えているという構図である。格差の問題が取りざたされる昨今、公平であるべき税制が格差を助長してどうするのだろうか(2017年3月5日記)。