【随想】ウーバーイーツの法律学#4−規制の合目的性を検証する必要性(4/4)

 貨物自動車運送事業法によれば、排気量が125cc以下ないし出力が1キロワット以下の「原動機付自転車」であれば、届出せずに貨物運送事業を行うことができる。もちろん、自らの足でペダルを踏み進める自転車はそもそも同法の対象になっていない。これが、街中を疾走する「ウーバーイーツ」配達員の圧倒的多数が自転車を使っていることの答えということになる。
 では、同じく「他人の需要に応じ、有償で……貨物を運送する事業」でありながら、自動車や軽自動車、さらには自転車など使用する車両ごとに規制が異なっているのはなぜだろうか。
 同法によれば、一般貨物自動車運送事業に場合、許可制のもと、輸送の安全性向上への努力義務と安全管理規程の策定・届出、安全統括管理者・運行管理者の選任その他の安全確保のための義務が課されることとなる。これに対し、貨物軽自動車運送事業だと届出制のもと、輸送安全性向上への努力義務は前者と変わらないが、その他安全措置についての義務は緩和されている。
 このように、現状では事業に用いる車両に応じて輸送安全性確保義務に濃淡が見られるわけだが、この差異はどこから来るのだろうか。車両の大きさの違いによって事故が起こった時の規模が違うからなのだろうか。
 しかし、貨物自動車運送事業法をよくみてみると、一般貨物自動車運送事業と貨物軽自動車運送事業に課される輸送安全性確保義務は、車両の違いによるものというよりは、想定されている事業規模の違いによるものではないのか。前者に義務付けれられている輸送安全性確保措置は、いずれも一定の規模を前提とした組織的な対応を求めるものとなっているではないか。使用する車両の問題とは違う。
 貨物自動車運送事業法には、究極的には「公共の福祉の増進に資すること」を目的として掲げている。そして、その手段として「輸送の安全を確保すること」、そして「貨物自動車運送事業の健全な発達を図る」ことが記されている。輸送の安全を確保することは、確かに公共の福祉を増進することにつながる。しかし、輸送の安全確保のために採用される規制が目的合理的に組み立てられているかは適切に検証されなければならない(2022年11月5日記)。

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