【菓子探求】蒲田本町・清野の「エッグタルト」

 昨日、久しぶりに所用のため蒲田に立ち寄った。前後に予定もなく、ふと思い立ちほぼ四半世紀ぶりに蒲田本町の清野さんを訪れた。丁寧な作りに定評のある和菓子店だが、わたしの思い出の一品はここのエッグタルトである。
 ご記憶の方もおられると思うが、1990年代末期に空前の(!?)エッグタルト・ブームがあった。このときの火付け役はマカオからやってきたエッグタルトだったと思う。当時カスタードについて研究をしていたわたしは、さまざまなエッグタルトを訪ね歩き、探し当てたのがここ清野さんだった。
 長崎出身の先代はかねてより正統派の和菓子以外に、カステラ等の南蛮菓子も手がけており、なかでもここのエッグタルトがわたしのお気に入りだった。職人気質の地味な店ゆえ、もしかしたらなくなっているかもしれないと不安になりながら商店街を歩いていくと、あの頃と変わらない佇まいでその店はあった。代が変わり、先代の御息女(多分)がお店を継いでおられた。
 作りの美しい上生菓子は健在で、「別立て」製法でふかふかのどら焼きも美味しそうだった。あいにくエッグタルトはとても手間がかかるため、いまはやっていないのだという。ここのエッグタルト復活を待ち望んでいる人間がいることを伝え、懐かしいカステラと定番のどら焼き、季節柄、桜餅を購入して家路についた。
 カステラは、品質のよいカステラに特有のしっとりとした密度感とキレの良い品の良い甘さ。桜餅は道明寺粉をつかったもの。帰り際、エッグタルトに並々ならぬこだわりを見せたわたしを慮ってか、知り合いのポルトガル菓子店を紹介してくれた。近いうちに、そちらにも伺わねばと思っているが、清野にも折に触れ、行かなければ!(看板の「清野」の文字は先代が修行した六本木・青野総本舗社長の青野次郎氏によるもの)(2024年3月31日記)。

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