【随想】増税ポイント還元策とクレジットカード加盟店手数料問題#1−(1/4)
日頃、お店で商品などを購入するときにはめったに言われることはないのだが、飲食店などで一人食事をしたり数人で会食のあと、支払いの際にクレジットカードを差し出すと、しばしば店の人にこんなことを言われる。「できればクレジットカードではなく、現金でいただけますか?」と。店によっては、クレジットカードが利用可能であることを示すステッカーのそばに「クレジットカードの利用は、3000円以上でお願いします」との貼紙があったりもする。総額の1割ほど追加料金を支払えば、クレジットカード払いに応じてくれるお店もあった。特に、日常使いの街中華や安い定食屋さん、居酒屋さんなどがそうである。
だいたい、わたしは、平日に銀行でお金をおろすのを忘れて、休日でかけたときにこういう目にあう。だから、うすうす感づいてはいたのである。飲食店がクレジットカード会社に支払わなければならない加盟店手数料はきっと無視できないほど高いのではないかと。
そんな折、こんな報道を耳にした。来年10月の消費税増税をひかえ、財務省と経済産業省が進めている消費者への増税分のポイント還元策について、これに参加するクレジットカード会社は加盟店手数料の上限を取引価額の3%台とするよう要請する方針であるとの記事である。クレジットカード会社が小売店から受け取る手数料は業種や規模によって異なり、中小事業者の場合だと決済額の4〜5%程度になる。わが国の決済に占めるキャッシュレスの比率は2割程度にとどまっているが、この原因の一つは重い手数料負担にあるという。
もともと今回のポイント還元策は、消費の落ち込みを回避するためのものである。しかし、政府はこれと合わせて、ポイント還元分の原資を補助し中小企業を支援し、これによりわが国のキャッシュレス化にはずみをつけようという算段だ。はたして政府の思惑どおり、コトはうまくはこぶのだろうか。鍵は、クレジットカード会社の協力だ。彼らがこの施策に乗るか否かは、彼らの収益の源泉たる加盟店手数料の構造を見なければこの問題の核心には迫れないのである(2018年11月5日記)。