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『裸足で鳴らしてみせろ』

"裸足で鳴らしてみせろ"なんてきっと、一生のうちに口に出すことのない言葉。私的2022年No. 1邦画が本日決まった訳です。この衝撃を残しておきたいなと思いnoteを書くに至ったのですが、まあ、というか、書いたから忘れられると思っている節があるのでこの瞬間のトキメキを書きます。

まず、本作で直己(なおみ)と槙(まき)という2人の名前に食らった。名前に性差を感じさせないことが嬉しかった。養母のために嘘の"音"を録音する2人。次第に2人の間に生じていく感情。それが愛なのか友情なのか私には理解が出来なかった。自分には磁場があると話す2人。その磁場を壊すためにとった行動が戯れあいにも見える格闘。2人の間にあるものが愛なのであれば、この方法でしか触れられない2人の関係性が辛かった。奥底で繋がり合えないものがそこにはあって、2人で色んな場所に行き色んな音を撮り色んな景色を見て、それでも満たされない何かはきっとある。その満たされない何かを埋めようと、直己は生き急いだのではないだろうか。ただ一緒に居られたらそれだけで良かったはずなのに、それが1番難しいと気付くのはあまりにも寂しい。ただ、2人はきっとあの頃の思い出を忘れることは出来ないし、大切な人・時間・出会いであったことは変わらない。磁場により互いに弾きあった2人がまた邂逅したその瞬間、全てを過去として宝箱に閉じ込められるのではないだろうか。その宝箱の鍵はそれぞれが持っていて、いつでも開けられるように、大切に守り続けるんだろうな。

内容が青いのはもちろん、映像も物理的に青くて美しかった。工藤梨穂監督、好きなものを好きなように作ってくださいと心の底から思ってます。こんな風に撮りたい、こんな風な色使いにしたい、美しい瞬間をおさめたい、これらの全てを感じられるし私のどツボを地で行ってる。なんなら、私が撮りたい映像を撮ってる人だ。羨望の眼差しです。

ちなみに、アンテロープキャニオンの座標を肩に彫っていたの、これまで観た映画の数あるシーンの中でも1番刺さりました。本当に有り難う御座います。観終わった後、ヘッドホンをして主題歌を聴きながら煙草を吸ったら、肺に入った空気が冷たくてほろりとした。第七藝術劇場に行くたび、床の冷えた体育館に全校生徒が集まり映画を観た学生時代を思い出す。十三の空気を吸いながら思い出すあの頃の記憶で、私たちは青い光の中輝いている。

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