割れたガラスはもう元には戻らない
例えば、ガラスのコップを床に落としてしまったとして
割れてしまった「それ」は、もうガラスのコップじゃない。
どんなに強力な接着剤で直そうとしても
割れた「それ」と同じものを買って補おうとしても
落としてしまった「ガラスのコップ」と全く同じものなんて、2度と手に入らない。
だから、一度ヒビの入った関係も
もう2度と、ひび割れる前の関係には戻れないから
割れてしまったものは完全に手放して
新しい形を二人で作っていかないといけない。
きっとそれが「復縁」で成功するか失敗するかの違いだと思う。
そして私は、完全に後者だ。
もう原型すらわからなくなってしまった程に粉々になった破片を、
未練がましくいつまでも大切に持っていて
新しい関係を作る勇気もなく、割れてしまったことを延々と嘆いている。
割れた破片は拾い集めるたびに自分を傷つけて、もうボロボロになってしまった。
変わりたかった。
変われなかった。
「彼は私を好きじゃない」
「彼にとって私はどうでもいい存在」
そんな呪いがかかっている。
彼にとっては、なんてことないセリフも
私を傷つけて、心を○すには十分で。
彼が好きで、とっても嫌いだ。
彼以外なんて考えたくはない。
でも、彼と一緒にいる私はちっとも幸せじゃない。
もっと、自分の気持ちを言えるようになりたかった。
復縁すると決めてから初めてデートしたあの日。
彼の一挙一動に傷ついた。
早く帰りたそうだった。
楽しくなさそうだった。
話は続かなかった。
彼は携帯をよく見ていた。
次のデートの予定も決まらなかった。
誕生日プレゼントを、「買わなくていいよ」と言われた。
誕生日を「祝われるような歳じゃない」と言われた。
きっと彼の中で、私は彼女ですらない。
私は、彼に何も言えずに笑っていた。
彼と別れて、帰り道一人泣いた。
夏が終われば、彼のいない世界で生きるから
最後の夏だけは、彼と思い出を作りたい。
そんな願いも、きっと叶わないんだろうけれど、
早く早く、身体中にささったこのガラスの破片を全て抜いてしまえたら。
抜くたびに痛みが伴うから、
いっそ抜かずにこのまま、
シーグラスみたいに、
ガラスの角が丸くなってしまうまで耐え忍ぼうなんて思ってしまうけれど
このままじゃ自分がいつか壊れちゃうから
早く、早く、自由になろう。
あと少し、あと少しだけ。
この悪夢を見ていたい。