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【短歌一首】 不忍(しのばず)に寛永寺より鐘の音の届きて正午のしじまを知りつ

不忍(しのばず)に
寛永寺より
鐘の音の
届きて正午の
しじまを知りつ

ちょうど正午ごろに、蓮で有名な東京上野にある不忍池(しのばずのいけ:通称しのばず)を散歩しながら、遠くに見える上野公園の森を見ていた。 
すると、ゴーン、ゴーンと鐘の鳴る音が聞こえてきた。

不忍池から上野公園方面を臨む

不忍池から直接見ることはできないが、上野公園の森の中には、徳川将軍家の菩提寺である「寛永寺」がある。寛永寺は天台宗のお寺で、寛永2年(1625年)に天海僧正が開山。 

冬枯れの不忍池の蓮

寛永寺には大鐘を吊るした時鐘堂(じしょうどう)がある。時鐘とは時刻を知らせる鐘のこと。後から調べてみると、寛文九年(1669)に設けられたこの鐘は、現在も正午と朝夕六時の計三回、毎日時を告げているとのこと。

そうか、今日はたまたま正午に不忍池にいたから寛永寺の正午の鐘を聴くことができたのか。不忍池にも上野公園にもこれまで何十回も来ているが、鐘の音をちゃんと聴いたのは初めて。

弁財天

寒空に遠くから寛永寺の鐘の音が届くと、ああ、ずいぶんと静かな昼なのだなと改めて気付かされる。確かに寒波の影響で人の姿がほとんど見えず、やけに静かなお昼時。

目を瞑って、池の水面を渡ってくる冷たい風を受けながら、鐘の音に耳を澄ませる。江戸時代の人々も不忍でこの鐘の音を聴いていたのか、と思うと嬉しくなる。

猫間英介



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