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「文学研究会」

日差しが照りつける9月。
僕は初めて君と話した。
出会いは大学の同じサークル。
文学研究会。

彼女は人見知りそうにしていた。
このサークルの飲み会で僕は彼女に話しかけた。

「こんにちは、隣大丈夫?」

「はい、大丈夫ですよ。」

そう言って座る場所を空けてくれた。

「今何年生?」
「2年です。」
「あ!後輩なんだ。俺一個上の松木って言います。よろしくね。」
「はい。よろしくお願いします。」
彼女は丁寧に応えてくれた。

僕の思っているイメージと違った。

人見知りそうにしていたから、全く答えてくれないと思ってた。

内心、僕は嬉しかった。

「松木さん。松木さんのことなんて呼んだらいいですか?」

「俺?なんでもいいよ!先輩でも、松木でも、松木さんでも。」

「じゃあ松木って呼びますね(笑)」

「え!?そっちかー。ま、松木でも大丈夫だけど。」

「冗談です(笑)」

後輩の冗談に翻弄されていた。
僕は人生で初めて松木で良かったと思った。

「あ、松木さん。私、自己紹介していませんでしたよね。すみません。星野っていいます。よろしくお願いします。」

「星野さん。いい名前だね〜。よ、よろしくね。」

本当に思っていることがそのまま口に出た。
難しいこととか一切関係なく、星野さんともっと話したいと思った。

「文学研究会って飲み会結構あるんですか?」

「えー。まちまちだね。大学の試験が終わった日とか、先輩が何かの大会で賞もらった時とか。後者はよっぽどのことがないとないけど。」

「そうなんですね。私、人と集まるのは好きなんですけど、お酒が弱くて...。」

そんな彼女はみんなで分けた瓶ビールのコップがまだ少し残っていた。

「そうなんだ。それなら別の集まりみたいなのしたら来る?もちろんお酒なしで!」

「はい。ぜひ行きたいです!」

「松木〜何してんの?」

「ごめん星野さん!呼ばれたから行くわ!またサークルで会おう!」

「分かりました!」

そう言って呼ばれた軍団の所に行った。

その後の飲み会の事は覚えていないけど、星野さんが、女子と楽しそうに話していたのが横目に見れて嬉しかった。
星野さんはお酒苦手だけど、人と集まるの好きって言ってたもんな。
自分から話しかけたのかな。
そんな妄想に更けていた。
星野さんが初めて来た飲み会は、夜をまたいだ時間で終了した。



「5限が終わるの待ってた訳もわからないまま〜」

バンドの曲のフレーズがイヤホンから流れて来た時、僕は居眠りをしていたことに気づいた。
イヤホンを外し、周りを見た。

隣には、星野さんがいた。
びっくりして、声を出した。

「こら、静かに。」

教授に怒られてしまった。
しーっと人差し指を口元に当てる、星野さん。
キレイだなーと思って見ていると

「何ですか?」
と小声で聞いてきた。
焦った僕は
「何でもないよ〜」
と誤魔化した。

星野さんはあからさまにそっぽを向いた。
というより、ノートの方を向きペンを握って、授業を聞き始めた。

僕もそろそろノートを取り出そう。
教授の眠たくなる授業を聞く。
早く、この5限が終わって、何で隣に星野さんがいるのか聞いてみよう。
そしてノートを見せてもらおう。

そう考えた僕は、久しぶりに授業に集中した。



「星野さん、なんでさっき隣に座ってたの?」
「松木さん、さっきの授業。選択科目の語学ですよ。」

「という事は?」

「眠たくなる教授...。んー、他に思い当たることがない。」

「松木さん、まだ眠いんですか?出る授業間違えたってことです!」

「あ!語学は2年生だけだった!」

「しっかりしてください!」

怒ってる星野さんもカワイイ。
僕はどういう訳か2年生の授業を受けた。
多分4限から寝てたんだと思う。
ラッキー。
神様ありがとう。
次の授業に星野さんが居てくれて。



5限が終わったので、そのまま星野さんと2人で文学研究会に行くことにした。
星野さんは6月くらいから、このサークルでちょくちょく見かけるようになった。
僕は1年生の時から、文学研究会にいる。
皆勤賞で通い続けているから、新しく入って来た人や、辞めた人も何人か見ている。
先生はちょっと変わった人だから、合わない人もいるらしい。

星野さんは途中から、入ったのにも関わらず、勤勉に創作に取り組んでいた。
その姿を見て、いつか話しかけたいと思い、この前の飲み会で話しかけた。

「松木さん着きましたよ。」

「よし、鍵開いてるかな〜?」

ガチャ。
「おおー!松木。星野。よく来たな。我が文学研究会へ。」
「文学研究会、今日も1日張り切りマッスルハッスル!」

「何でいつも僕にやらせるんすか。関根先生。」

「お前しかやってくれんからよ。」

「ふふ。」
星野さんが笑ってくれるだけ救われた。

「お前さん達仲良くなったんかー?」

「ちっ違っ!」

「はい。仲良いです。」
先生がはぐらかすように言ってきたから、僕は咄嗟に違うと言いそうになった。

「ああ。そうなんだね。それなら松木をよろしく頼みます。」
「先生っ!!!」

「はい。」

星野さんが、はいと言わなかったら、僕は心が折れそうになっただろう。
相変わらず、星野さんは優しいな。
何で僕なんかに優しく接してくれるんだろう。
まさか...。

「先生。今日も新しい詩、書いてきたんです。」

「見てもいいか?」

はる。暖かい春。どこもかしこも、お花見気分。
なつ。海。パラダイス。暑い時こそ遊べよ若人。
あき。穏やかに葉の色が変わる。葉が落ちる瞬間はまさに、映画のワンシーンのよう。
ふゆ。君と居たい。冬。ただ寄り添ってこれからも。

春夏秋冬


「良い詩だ。もうちょっとここを...」

「はい。」

関根先生のチェックは甘くない。痛いところを突いてくるような感じ。星野さんの詩も気になるけれど、僕ももうそろそろ作業を始めよう。
椅子に座って腰を下ろす。
荷物をかけてペンを握る。
僕は小説家になりたい。
児童文学作家。主に子ども達に向けた作品だ。
今書いている小説は、妖精の国に迷い込んだ少年少女が、妖精たちと一緒に冒険するという話。
なかなかペンが進まない。
後で先生に話を聞いてみよう。
それでも浮かばなかったら練り直そう。



「ふう。今日も疲れましたね。」
星野さんがそう言う。

「あ!そうだLINE交換しませんか?」

「んー。」

「えっ!?」

「またぼーっとしてるんですか?」

「ごめん聞いてなかった。」

「LINE交換しましょう?」

「え!?僕と全然いいけど...。」

心の中でガッツポーズをしながら、平然を装う。
「じゃあスマホ取り出してQR読み込んでもらって...」

「あ!これ?りさ?」

「それです。これですね?MATSUKI」

「えー!?」
「やっぱりなんでもないです。松木さん、いつもありがとうございます。」

「え?急にどうしたの?」

「私、松木さんに話しかけられて嬉しかったんです。あの時他の女の子とも話せたし、緊張していたから。文学研究会の先生も優しいし。松木さんには感謝しかないです。」

「こちらこそ。星野さんいつもありがとう。じゃあ俺こっちだから、また明日。」

「また明日!」

そのまま少し立ち尽くしていた。
僕は星野さんのことが好きだ。
いつかこの気持ちを星野さんに伝えよう。
ふと見上げると夕方の空が、こちらを向いて微笑んだような気がした。


いかがでしたか。
だいぶ前に、一気に原稿用紙に書いた小説です。
私の曲を元に書きました。
noteに書き起こすと結構文字数((

とにかく!書いてて楽しかったのを覚えています。
これで気分は大学生〜?笑笑

では次回お会いしましょう〜🎵
またね!👋



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