我の推薦図書 第1冊目「黄色い目の魚」
私が中学生の頃とても好きな小説だったので紹介したいと思います。
登場人物たちの心理描写が細かく、特に主人公みのりに感情移入必至だと思います。
あらすじ
他人と深く関わることを避けている『村田みのり』と、本気で何かに取り組むことを避けている『木島悟』が、2人の共通点の「絵」を通じて、自分が避けていたことと向き合うようになり、お互いを大切な存在として想い合うようになる青春小説です。
幼少期はそれぞれが別々の話で主人公となり、高校生からは、出会った2人の交互の視点で、話が展開されていきます。
佐藤多佳子 著
感想
私が、特に好きな章は2つあり、1つ目が『黄色い目の魚』の章です。中学生みのりの、尖りに尖って、今にも誰かを傷つけてしまいそうな感情の描写に心動かされます。
自我が芽生え、自分が確立される時期として大切な期間のはずなのに、周囲に理解されない息苦しさには、私も身に覚えがあります。自分でも説明ができない、どこにむけていいのか分からない怒りのような、あの激しい感情は、今思い返しても本当に不思議です。
2つ目は『オセロ・ゲーム』の章です。高校生になったみのりは、木島と出会ってから、自分のとある気持ちに気づき始めます。気づいてしまうと、今まで気にも留めなかった些細なことが気になったり、自分の中にある嫉妬を覚えたりして、自己嫌悪します。ちょっとしたことで揺れ動く感情が表現されています。
一度は誰もが経験したことのある、あの切ない気持ちが詰まっていて、胸が締め付けられます。また中学生のころ、周囲の人間を寄せ付けなかったみのりの心の変化が感じられて、読んでいるこちらが嬉しくなってしまう章でもあります。
まとめ
木島はみのりのまっすぐさに、みのりは木島の夢中になる力に憧れを抱いています。黄色い目の魚は、相手の長所に触れ、自らも触発される、2人の成長物語だと感じました。初々しくて、切なくて、眩しい、あの気持ちを思い出すことができる小説だと思います。