何でもない日が記念日になる②「婚約約記念日」
高校生の頃、私と彼氏さんは3日に1回くらい放課後、だいたいどちらかのマンションの前で2~3時間立ち話をしていた。今日学校や部活であったこと、将来の話、自分たちの価値観、くだらない妄想、なんでも話していた。
3年記念を終え、4年目に突入したばかり。センター試験まで100日を切っていた11月のある日、どちらから言い出したのだろう。
「婚約しよう」
という話になった。しかし、高校を卒業してすぐに結婚しようと思っていたわけではないし、2人とも大学に進学する予定で受験勉強の追い込み期間真っただ中だった。
しかも、2人とも「婚約」という言葉に対して「結婚の約束」といった漠然としたイメージしかなかった。そこで婚約について調べた。婚約とは何をもって婚約となるのか、婚約するメリットは何なのか。
どのサイトを見ても「婚約とは両家の間で結婚の約束を果たすこと」。そのために「両家が顔合わせをすること」。
高校生でそこまでするつもりはなかった。けど、将来も一緒にいるという覚悟を示したり、一緒に入れるという安心感や保証が欲しかったのだと思う。
そこで私たちは2人だけの間で「婚約約」をしようと決めた。「婚約をする約束」から名付けた造語。ドラえもんの「翻訳こんにゃく」みたいなへんてこな名前。でもこの言葉がしっくりきた。
いつも通りの放課後。何の変哲もない場所。
木枯らしの吹く夕暮れ時。
2人で小指を切って約束した。
「これからもずっと一緒にいようね」
4年目にもなれば、もうとっくにドキドキ期は過ぎ、倦怠期も乗り越えていた。しかし、その日は家に帰ってから高揚感が止まらなかった。私はこの人と一生一緒に生きていくと宣言したのだという、ドキドキ。
2人の関係は、端から見れば何も変わっていない。ただのどこにでもいる高校生カップル。しかし、自分たちの関係性はアップデートしていけるのだと気が付いた。
―――――――――――――――――――――11月27日は、婚約約記念日。