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演出後記 #3
演出後記、第3回です!
深夜に書くのは止めにしましたぜ。何書いてるか自分でもわからなくなるから。さて、今日は「#3 かえるびっくりいつの間にお湯?」についてです。この回は僕も出演しておりますね~、なんでお芝居そのものに関しては客観視あんましできてないですが、バリバリ書いていきます。
まずは#3をご覧ください。
https://www.instagram.com/tv/COiHzqQHVwq/?utm_medium=copy_link
恋=お互いの想い度合いの不均衡
桃源Qはラブストーリーです。でも巷でよく見る、美男美女がいろいろやるキュンキュンのラブストーリーとは違ってて、というか、そういうものからできるだけ離し、アンチ・ラブストーリーでありながら、めちゃくちゃラブリーにしたい!これが今作でやろうとしたことです。キャッチコピーも、「奇想天外なSFラブストーリー」を謡っています。
企画発案時、恋とはいったい何だろう、というのを考える中で、恋というのは、「お互いの想い度合いの不均衡」のことなんじゃないかと思うようになりました。僕はあなたのことが好きだけどあなたは僕のこと好きくないかもしれない、このアンバランスこそ、恋そのものだと思っています。だから、#2が特にそうですけど、必ずしも恋愛感情が先行しているわけじゃなくても、「恋」は発生します。というのが今作における恋です。
さて、そんな中でこの#3が「恋とはお互いの想い度合いの不均衡」を一番色濃く表しているんじゃないかと思っています。「ラブストーリー」っていう点においても、”いわゆる”ラブストーリーで、『桃源Q』におけるタイトル曲のような立ち位置にしたいなと考えておりました。
この回の脚本を担当したのは太田垣百合子さん。太田垣さんとは、こんにち博士が勉強のために参加した、ナナロク社の新短歌教室で出会いました。出会いました、というと実際に会ったみたいですがそうではなくて、ちゃんと顔を合わせて会ったのはこの『桃源Q』に脚本で参加してもらうことになった後のことです。
太田垣さんの短歌は、教室の授業の時によく目にしていたのですが、超素敵で・・。短歌教室はすごい歌人ばかりで、魅力的な歌にたくさん触れることができました。自分には逆立ちしても詠めないだろうな、という歌人ばかりだったのですが、太田垣さんは少しニュアンスが違ってて。太田垣さんの歌は、身近で、どこか懐かしくて、生活と地続きな感じがあるのですが、でもふわふわと浮遊感がある。この浮遊感が好きです。見ている景色は同じだし、持っている単語も同じなのだけど、その紡ぎ方が違う、というか、自分には到底思いつかないような形で言葉が弾ける、というイメージです。
そんな太田垣百合子さんの初めての演劇脚本がこの回になったのですが、「銭湯」という日常でありながらどこか非日常感もある空間は、百合子さんにぴったりでした。
あと、百合子さんの脚本は句読点がたくさんついています。句読点に合わせて読むとかなり心地いいリズムになるのですが、この「脚本におけるリズム感」はこんにち博士も、そしてこれから出てくる愛里さんもかなり重点を置いていて、役者にとっても素晴らしい台本でした。
定休日の銭湯と宇宙一素敵な愛里さん
#3を話すうえで 、ここでようやく登場する大事な方が、Qの役をしてくれた愛里さんです。南極ゴジラと愛里さんは今回がはじめましてだったのですが、南極ゴジラ劇団員はもう愛里さんにメロメロで、そんな中でも一番メロメロなのが何を隠そう、アテクシ、こんにち博士でございます。
愛里さんの必殺技はなんといってもモノローグです。僕が勝手に必殺技にしているのでもし他にもっと必殺の隠し技があったらゴメンナサイ。愛里さんのモノローグ、これがもう天下一品。僕ら世代ではおそらくずば抜けると思います。こんなにモノローグがうまい人、他に見たことないんで。
声・リズム・強弱のつけ方・声の表情・時々わざと少し外すイントネーション、これらが抜群で、Youtubeにも愛里さんの一人芝居がアップされているので是非見てください。腰抜けるんで。
百合子さんには脚本を書くにあたって愛里さんの動画をたくさん見てもらい、(百合子さんはいつも脚本を書くとき、その役者が動いている動画をたくさん見てから、脚本を書きます)愛里さんが発したら素敵だろうな~という言葉を紡いで、脚本が書かれてゆきました。つまりはね、この脚本はもう愛里さんの魅力を伝えるための脚本なんです。
ロケ地として協力してくださったのは高円寺にある名物銭湯・小杉湯。行ったことない方はどうか行ってみてください。ミルク風呂というぬるめのお風呂があるのですが、それがもうすんごい気持ちよくて、てんごくはこういう場所だったらいいのにといつも思います。そんな小杉湯さん、定休日である木曜の夜、わたしたち小杉湯さんをお借りしまして、渾身の配信劇をしました。この回はギター生演奏、カメラも館内を動きまわるし、小道具もたくさんだし、衣装も途中で変わるし、ということで配信の裏側はかなりどったんばったんしてたんですが、いっぱい手伝ってもらい、何とか配信しましたね。
中でも頑張ったのは銭湯の脱衣所でくるくるカメラが回りながら、Qと赤星が音楽を聴いたり、本を貸し借りし合ったりする場面。撮影隊も一緒になって回りながら、裏方総動員でがんばりました。ちなみに、ここで貸し合っている本ですが、Qは赤星に歌集「花は泡、そこにいたって会いたいよ(初谷むい)」を、赤星はQに「エディアカラ紀・カンブリア紀の生物」という図鑑を貸しています。歌集については#5でもQちゃんがこっそりたしなんでいましたが、カンブリア紀は・・・、いえーい!
このシーン、イメージしたのは2020年最高の映画「ジョジョ・ラビット」内の最高のシーン。こっちはCGなのでこんなにうまくはいかなかったけど、人力の割にはまあうまくいったと思います。愛里さんもジョジョ・ラビットは最高だと言っていて、最高でした。
この小杉湯という最高のロケーションも、ギターから出る生の音楽も、そして脚本も、愛里さんの魅力を伝える、という一点に向かってまっすぐに進んでいたように思います。
これは別に愛里さんに限った特別なことではなく、他の回においてもQを魅力的に見せる、ということが今回演出するうえでの肝だと考えていました。赤星が、すべての赤星が、なにもかもを投げうつほどに恋をしている「Q」という存在。物語全体に説得力を持たせるためには、Qがいかに魅力的か、ということにかかっていました。
愛里さんはスーパー魅力的でしたね。言うまでもありません。
アンバランスを散りばめる
冒頭で話した「恋=お互いの想い度合いの不均衡」というテーマですが、視覚的だったり、物語的に不均衡に見せるための仕掛けを配信劇に仕込みました。特徴的なのは#1~3で、すべてに台詞がかみ合っていない(二人が別のことをそれぞれ発している)場面が登場します。
#1 Qはこれまでと同じテンプレートのセリフを話すなかで、赤星が心の内をぶつける場面
#2 Qがセミの抜け殻選手権のコントをするなかで、赤星がQに対する想いを叫ぶ
#3 Qが来なくなった理由を赤星とQが交互に発する。赤星の理由はだんだん芯を食っていくが、Qは最後まで嘘みたいな理由を言い続ける
これ、印象的かつ、すごく切ない場面でしたね。
桃源Q#3、僕は役者として出ていたのでその感想になってしまいますが、演じながらとってもどきどきしましたね。楽しかったです。またやりたいです。百合子さんの台本をまた演じたいし、小杉湯のミルク風呂また入りたいし、交互浴Tシャツもう一枚ほしいし、僕もカエル育ててみたい、牛乳飲みたい、そしてなりより、愛里さんとまた何回も共演したいですね。ラブコール送り続けようと思います。
今日の演出後記は少し話が逸れてしまいました。
またね⭐︎
※途中、天下の愛里さんを呼び捨てにしてしまってる箇所があったんですぐ直しました👶