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演出後記#2

あぶねえ。

演出後記#1を読んでくださった方ありがとうございました、南極ゴジラ『桃源Q』演出のこんにち博士です。ほんとうはね、昨日#1を出して、そこから1日に1エピソードずつ出していけば、ちょうど#6を出す日に#7が配信されて良い感じになるなと思ったんですけど、#2にしてさっそく諦めかけましたな。ましたな、ってなんやねん。

ではさっそく!今日は、「#2染まれ 青春よりも青く汚い 空の果てまで」の演出後記です。夜中なんで、テンポはやめでパンパンパン!といきますね。

まだ#1を読んでない方は是非こちらから。


あゆたろが染める『桃源Q』

今回のエピソードにはそれぞれタイトルがついています。
#1 ウーピー、ミンミン、カンフーパンダ
#3 かえるびっくりいつの間にお湯?
#4 ビー玉になった雨粒いつまでも溶けない
といった具体で、それぞれの回を担当した脚本家がその回のタイトルをつけることにしていました。※一部例外的に別の人がつけている回もあり
(ちなみに話が逸れるけど、#3→#4のタイトルの流れがめっちゃいいですよね。この2回は太田垣百合子さん脚本の回なのでいずれも百合子さんがつけているのですが、リズム感といい、浮遊感がありつつも背伸びしている様子がないところといい、とっても素敵です。百合子さんの短歌については今後の回でじっくり書きます)

#1~3では、こんにち博士→あゆたろ→百合子さんの順で、1人1回ずつ脚本を担当しました。脚本を走り出す際に、タイトルは基本的に14文字(短歌の下の句が7・7なのでそのリズムになるように)でいこうというお願いを脚本担当の二人にはしていたのですが、そんな中あゆたろから上がってきたのがこのタイトル「染まれ 青春よりも青く汚い 空の果てまで」でした。

24字。

字余り中の字余り。

あゆたろは「うまく14字にできなくて・・これから削って14字にします」ということだったのですが、このままでいくことにしました。すごい気に入っちゃって。このタイトル、二箇所半角のスペースが入っています。"染まれ"の後と、"汚い"の後。
最初パッとこのタイトル見た時、「染まれ、青春よりも青く、汚い空の果てまで」やと思ったんですけど、汚いは青春にかかってるんですね。青春は青くて汚くて、それよりもさらに、青く、汚く。

何より「染まれ」っていうのが好きです。「染めろ」でも「染まる」でもなくて「染まれ」。「染まれ」って懇願なんですよね、こっち側の。劇中の二人に向かってこっち側の、あゆたろの台詞なんですよ、この「染まれ」は。それがなんか良いなと思いました。

染まれ、南ゴジ

太郎物語を知ってるか。
君は太郎物語を知っているのか。


太郎物語がなんなのかと聞かれたら僕も正直わかりません。前述のあゆたろ、そして今回#2に出演してくれた果音さん、この2人によるユニットが太郎物語です。ユニットと書きましたが正直ユニットなのかもわかんないです。劇団であり、企画屋であり、アイドルであり、友達、?

白状すると僕は今回の企画で接点を持つまで太郎物語を知りませんでした。Twitterで流れてきたことがあるから、名前だけは知ってる…程度。桃源Qで関わるということでYouTubeやらTwitterやらで太郎物語の活動を見ていったのですが、これがね、面白いんです。

誤解を覚悟で言うんですが、まずね、可愛いんです。2人が。あゆたろと果音ちゃんが。「いや見た目て…」となるかもしれないのですが、ここが重要ポイントなのです。2人はね、まずベースとして、アイドルなんですよ、で、劇をやるんですよ。でもアイドルが劇をやってる、という感じではないんです。劇をやってる俳優2人がアイドルくらい可愛い、とも違う。アイドルであり、劇団なんです。これは見たことないというか、新しいジャンルだと思います。

背が高くすらっとしていて、髪が黒くて長くてつやつやで、目が涼しくて、ややかすれめな声がかっこいい果音。小柄で、顔が小さくて目が大きくて、よく通るきれいな声で、どこか消えてしまいそうな雰囲気もある杏優。(ごめんなさい、雰囲気出すために呼び捨てにしました…まじでごめんマン
この2人のバランスが絶妙です。

あんまりこれ以上話すともう太郎物語だけで何もかもが終わってしまうのでこれくらいにしておいて、気になる方はSNSで「太郎物語」と検索してみてください。


https://youtu.be/SigzAzyuGHQ

(太郎物語がミスiD2021にエントリーし、エントリーして活動していくことそのものを公演にしたというすごい企画です。おすすめ。)

果音ちゃんを客演に迎え、脚本をあゆたろ、南極ゴジラからは役者3人の中では一番彼女たちに年齢が近しい瑠香が出演し、そうこうあって南極ゴジラフューチャリング太郎物語な作品となりました。面白いなと思いました。他の団体の方に脚本を書いてもらうことがないので、こんな感じの化学反応になるのか…とほぼ理科の実験みたいな感覚でした。

あゆたろの脚本は一部必ず「いや太郎物語やん」ってなるパートが入るのでイヤガオウニモ太郎物語感は出るのですが、#2が一番色濃いめでしたね。

ちょっと待ってな。これ終わるか?いま3時やねん。ちょっとここで、私、ケーキが食べたくなってきました。コンビニに走るか迷うところですが、グッと堪えます。

じゃがいもパピヨンの誕生と栄枯盛衰

いよいよ物語についてのところまでこぎつけました。

この回ではじめて、赤星とQがしっかりそれぞれ"確実に赤星、Qである状態"で登場します。#1はこの辺曖昧だから。そんな2人のお笑いコンビ名が"じゃがいもパピヨン"です。

あゆたろには脚本を書いてもらう前のイメージ共有のときに、このお笑いコンビは、おしゃれお笑いやねん。という話をしました。空気階段だったり、ラランドだったり、かが屋、Aマッソ、コウテイだったり。いま人気の若手お笑い芸人の一部にある"お笑いをゴリゴリやってるけどどこかアンニュイで芸術的な側面がある"という空気感を出したかった。

イメージしたのは大前粟生さんの『おもろい以外いらんねん』という小説です。めっちゃいいので良かったら読んでください。

お笑いに熱い2人、というよりは、お笑いゴリゴリやりつつも、限りなく現代的で、リアルな熱さを出したかった。そういう意味でこの脚本は抜群でしたね。ちなみにあゆたろは『おもろい以外いらんねん』を読んでませんが、この小説をなぜか彷彿とさせる空気がありました。

瑠香演じる赤星はお笑いにストイックで、Qの才能を認めつつ、台本も書いています。でもQをコントロールしている感じではなかったですね。お互いのことを尊重しつつ、絶妙な距離感もあるようでした。ある一定のところで踏みとどまる。(昔からの知り合いじゃなくて養成所での出会いだしね)

TGCに行くと言い出したとき、それを止めはしない。これが彼女にとっての戦い方だったのでしょう。その後、言葉が爆発しますが、おそらく赤星がQに強く言ったのは(本気でぶつかったのは)これが初めてだったと思います。どこかハスに構えて、自分はお笑いがやりたいだけだし、と取り繕っている姿は、少しわかってしまうようでかなりヒリヒリひました。

南極ゴジラの瑠香が演じましたが、電話をするQを背中で感じる時の表情、それに続く感情の爆発は手前味噌ながら痺れましたね。南ゴジ俳優陣の中で、本番になって演技のギアが一番ぐっとあがるのは彼女です。

演技のギアが上がるのでいうと、果音ちゃんも同じです。本人にも伝えましたが、果音ちゃんはまさしく本番でパァン!とはじける俳優さんです。

今回のQはお笑いコンビを組んでいながらTikTokでバズってしまい、それがきっかけで彼女にだけ色々な仕事が舞い込んでくる。という設定です。このTikTok、という小道具がかなりパンチが効いていて素晴らしいです。冒頭、TikTokをQが撮っているところから始まりますが、これは、ほんとに、果音ちゃんしかできないですね。ここに説得力を持たせているのは果音ちゃんが持っている空気感だったり、どこか人間臭いというか、人間味があるというか、本来3枚目をすることが多いらしい果音ちゃんだからこそ出せるリアリティだったと思います。

ちなみに、僕はこの回の赤星とQを、どーーーしてもジャルジャル兄やんのこのコントと重ねてしまってました。全然内容違うのに…。もちろん赤星が、後藤のやってる役です。

おそらくじゃがいもパピヨンは、売れるでしょう。売れないわけがない。ただ、本気でお笑いやってんのか、とか、もっと全員に伝わるようなネタにしろ、とか、いろいろ言われるでしょうね。彼女たちが売れる頃にはお笑いの世界のしきたりだったり、古い慣習みたいなのもほぼほぼ取っ払わられてそうけどね。

じゃがいもパピヨンには、誰も見たことがない、新しいジャンルのお笑いを切り開いて欲しいですね。太郎物語みたいに。

・・・おっけいいいでしょう!一応締まった感じでしょう!では、おやすみなさい。

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