【積読消化】ベティ・エドワーズ著『脳の右側で描け第4版』
本作、購入したのが2014年9月ごろ。読み終わったのは2021年12月19日。足かけ7年以上。やっと、積読していたこの本を読み終えられました……。自分で言うのもなんだけど、ホント長かった……。
今回紹介する本は、ベティ・エドワーズさん著、野中邦子さん訳。『決定版 脳の右側で描け 第4版』です。
本作は<左脳/Lモード>(以下:左脳)と<右脳/Rモード>(以下:右脳)という言葉を使って、絵を描く際の”絵の描き方”よりも、”物の見方・捉え方”に主眼を置いたものです。今日では右脳・左脳というのは非科学的なのですが、あくまで便宜上もちいられているだけで、本質的には「いかにして対象をそのまま見るか?」という内容。
家を描く時、三角と四角だけで”家”を表現したことがあると思います。自分もそうでした。何なら、成人しても割とそれに近い描き方してました。これを本書では左脳の働きと説明しています。「家とはこういうものだし、これで家だと分かるでしょ?」とばかりに、屋根を三角にして、残りの部分を四角で表現するのです。人間の目も、マンガやアニメのキャラクターのようにはなっていません。しかし、左脳によって、より記号的なものとして描いてしまう。これをどのようにして、より現実的に見て、それを紙に描写するのか?そのためのレッスンや練習法が掲載されています。
最初に自分の顔や手などを描いたのですが、いやー、ひどい。
ネットで暴露しても、特定さえできないであろう有り様。誰だよお前。あと、何で耳が無いんだよ。
その後、「対象を逆さまにして描いてみる」「ペンを持っている手を見ないまま、もう片方の手のシワを描いてみる」などのレッスンを経て、少しずつ”そのまま見る力”を養っていきます。自分は本書に掲載されている、用意しておいた方がいい道具を全く購入しないで、家にあるノートと鉛筆だけで攻略したので、ところどころできないレッスンがありました。なので、本書で学ぶ際は、できる限り道具をそろえたほうがいいと思います。もしくは、直接描きこめるワークブックもいいかもしれません。8年前のものなので、新品を買えるかは分かりませんが……。
こちらは、ある絵画を逆さにしたものを模写したもの。そして、それを反転して正位置にしたものです。逆さにしたものを模写していたとき、「ここの線はこことぶつかるな……」とか、「ここの幅はこうだから……」と、線を主体として見ることができました。おそらく、普通の模写だと、どこかでつまづいていたと思います。甲冑の描き方分からん!そもそも馬なんて描いたことねえ!みたいな感じで。
こちらはネガ・スペースを理解するために模写したもの。本来は立派なツノをもつヒツジの絵なのですが、忠実に描こうとすると確実に詰みます。ツノが複雑で、なかなか再現することが難しいからです。しかし、そのヒツジの”空白”から描いてみる。すると、より二次元的にヒツジを再現することができるのです。下のものは、ネガ・スペースを自分なりに解釈したもの。こうやって見ると、ホントに字が汚い。
一点透視図法を学ぶレッスン。本来なら廊下に立ち、実物をスケッチするべきなのですが、自分の家では不可能だったので断念。代わりに、スマホでほぼ自分と同じ目線で撮影し、それをスケッチしたもの。本当はダメなのですが、スマホの画像編集にある”グリッド”を使って、画像を9等分したものを見ながら描きました。9等分されると、どの四角にどの線がどういう配置であるのか?が分かるようになり、かなり描きやすくなったかなと。それでも技術が追いついてないけど……。本書はデッサンにおける目の使い方がテーマなので、だいぶ邪道なやり方をしてしまいましたね……。
”目測”やネガ・スペースなどを用いて、『マダムX』の習作を模写。本当はもっと美しい女性の横顔だったのですが、構図を読み取れなかった自分によって、なんかとんでもないことに。もう少し、上手くできた気がするなぁ……あくまで気がするだけだけど。
本当であれば、様々なレッスンの後、「鏡に写った自分を見て描く」という最後のレッスンがあったのですが。自分の家の環境では、記載されている状況を作ることができないと判断して、断念。まぁ、そもそもの話、かなりレッスンを端折って読み進めたところもあったので、いずれにせよできなかったと思います。
でも、”対象をそのまま見る”こと、”ネガ・スペースに気づく”ことなど、本書に触れる前までは分からなかったことが、多少ではありますが分かるようになりました。絵を描くという、非言語的なものに近い動作を教える上で、特に最初から見たまま描ける人にとって、「自分が何をどう見て描いているか?」を教えることは難しいと思います。自転車に乗れた後だと、乗れなかった時の自分の感覚がすっぽり抜けるようなもので、そのまま見ることができない人に、そのまま見ることを教えるのは至難の業。それを、ここまで言語化して、なおかつ習得させるための方法に落とし込めた作者は、本当にすごいなぁ、と。無論、ベティ・エドワーズ氏のレッスンに参加した人とのやりとりや、その場その場のひらめきによって生まれたものであり、ここまでになるには大変苦労されたと思います。その集大成が、本書に詰まってる。そして、それを7年近く積読してました。申し訳ございません……。
最初に、何かしらラクガキなどをして、絵を描く習慣を身に着けた上で挑んだ方が良かったのかもなぁ、と反省しております。どうも、絵を描くというのが大変なものだと思ってしまい、億劫になってしまいまして……。あと、デッサンスケールだけでも買っておくべきだった。レッスンにも使えるし、日々の練習にも使えるし。
来たる2022年。新しいことにチャレンジしたい方に、お勧めできる本だったかなと思います。技術を磨くのはその後の自分次第ですが、それより前の”知覚”を習得する上で、かなりの良書ではないでしょうか。今年の10月に、決定版として表紙をリニューアルした本書が出版されていますし、著者の最新刊『利き目を使って描け;左右それぞれの目の特性を活かす』も発売されています。
一番驚いたのは、著者のベティ・エドワーズさんが、御年95歳。すごい人はご年齢もすごかった……。
2022年も、まだまだ残っている積読を少しずつ消化していきたいと思います。いやー、もっとたくさん読めたな……。せめて漫画だけはサクサク読み進めるべきだったなぁ。まぁ、緩く長く続けていけばいいかな。そんなノリで、来年も続けてまいります。
お読みいただきありがとうございました。