英文解釈演習室2023年8月号
【訳文】ペンネーム I am a cat.
歴史と同様に文学においても、唐突に見えるものはたいてい長い過程をへて生まれてくる。「小説(ノベル)」をその名である「新しいもの(ノベル)」と呼ぶ理由のひとつは、小説は変化し発見する文学形式だということだ。小説は新しい考え方や出来事とともに変わっていき、変化し発展していく人びとの内面や外から見える生活を描きだそうとつねに奮闘する。特定の日を挙げて、いつ「近代(モダン)小説」や「近代(モダン)運動」がはじまったのかと言うことは、決してできないだろう。それは、自身を「ポスト近代(モダン)」と呼んで、近代(モダン)はほぼ終わったとはっきり了解しているにもかかわらず、近代(モダン)がいつ終わったのか確信をもって知り得ないのと同じである。私たちにできるのは、社会・文化・芸術・言語を新鮮な目で考察させてくれた社会・歴史・芸術の変化を、これこそがまさしく「近代(モダン)」だと思わせられるような変化を、書きとめることだ。つまり近代(モダン)とはずっと昔からつねに存在してきた状態であり、そうでありながら、変化し加速する私たちの時代が強調しているものである。よって、かつてカール・マンハイムが言ったように、歴史という壮大な基準を用いて今はどのような時代なのかを知ろうとし続けているからこそ、私たちは近代的(モダン)なのだ。
※( )はルビ
【検討会後の反省点】
(あとで追加する予定)
【訳文提出前に考えたこと】
(全体の方針)
今回の準備のために読んだのは、薬袋先生の著作群『英語リーディングの秘密』『真実』『精読講義』『探求』『ミル「自由論」』。はたしてこれらが訳文に生きたのかどうかは不明。
(1パラ-1文目) In literature as in history, what looks sudden is usually born out of a long process.
(考えたこと)
literature, history は「文学」「歴史」以外の訳語は思いつかず。
→ 歴史と同様に文学においても、唐突に見えるものはたいてい長い過程をへて生まれてくる。
(1パラ-2文目) One reason we call the novel by that name is that it is a changing and discovering form, which alters with the new, and the news, and constantly struggles to express our shifting and developing inner and outer life.
(考えたこと)
that name = novel だが、直訳するとわけがわからなくなる。いろいろ考えたあげく、ルビ(ふりがな)で処理をすることにした。
the new = 新しい考え方、the news =(新しい)出来事、と解釈。
→ 「小説(ノベル)」をその名である「新しいもの(ノベル)」と呼ぶ理由のひとつは、小説は変化し発見する文学形式だということだ。小説は新しい考え方や出来事とともに変わっていき、変化し発展していく人びとの内面や外から見える生活を描きだそうとつねに奮闘する。
(1パラ-3文目) No one date will ever tell us when the "modern novel," or the "Modern movement," started, any more than we can know for sure when it ended, even though by calling ourselves "postmodern” we clearly assume it has, more or less.
(考えたこと)
"modern novel" は小文字、"Modern movement" は大文字だというのを見落としてしまった。どうやって訳し分けるべきかは不明。
No one date … any more than はいわゆる「クジラの構文」だろうが、あまりに長くなるので、訳文は2文に分けた。
→ 特定の日を挙げて、いつ「近代(モダン)小説」や「近代(モダン)運動」がはじまったのかと言うことは、決してできないだろう。それは、自身を「ポスト近代(モダン)」と呼んで、近代(モダン)はほぼ終わったとはっきり了解しているにもかかわらず、近代(モダン)がいつ終わったのか確信をもって知り得ないのと同じである。
(1パラ-4文目a) What we can do is note the social, historical and artistic changes that made people think in a fresh way about society, culture, art and language, and make them view these things as uniquely "modern"
(考えたこと)
"modern" をどう訳すかも相当なやんだが、「ポストモダン」に合わせて、結局すべてルビで処理をすることにした。
→ 私たちにできるのは、社会・文化・芸術・言語を新鮮な目で考察させてくれた社会・歴史・芸術の変化を、これこそがまさしく「近代(モダン)」だと思わせられるような変化を、書きとめることだ。
(1パラ-4文目b) — a condition that has always existed, but that our own age of change and speedup has highlighted, …
(考えたこと)
基本的には、英文の語順で訳していく。
→ つまり近代(モダン)とはずっと昔からつねに存在してきた状態であり、そうでありながら、変化し加速する私たちの時代が強調しているものである。
(1パラ-4文目c) … so that, as Karl Mannheim once said, what makes us modern is that we are always trying "to tell by the cosmic clock of history what the time is."
(考えたこと)
by the cosmic clock of history = 歴史という壮大な基準を用いて(直訳で「歴史の宇宙時計」としたのでは意味不明な気がしたので)
tell … what the time is 今はどのような時代なのかを(知る)、と解釈。
→ よって、かつてカール・マンハイムが言ったように、歴史という壮大な基準を用いて今はどのような時代なのかを知ろうとし続けているからこそ、私たちは近代的(モダン)なのだ。
【参考資料】(これという一冊は、今回はなし)
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