英文解釈演習室2023年12月号
【訳文】ペンネーム I am a cat.
「哲学」という語は、意味がまるで定まっていない言葉である。「宗教」という語とおなじく、「哲学」は過去の文化の特色を記述するときにはある意味で使われ、現在好ましいとされている研究や考え方を表現するときにはまた別の意味で使われる。哲学の探究が西洋の民主主義圏の大学でなされるとき、少なくともその意図するところは、知識の探究の一環であり、科学の探究と同様に対象から距離をおいた態度をめざしている。しかも、政府にとって都合のよい結論に達するよう、当局から要求されることはない。多くの哲学教師は、はねつけるだろう――生徒の政治的な意見に影響を及ぼそうとすることはもちろん、哲学の名の下に美徳を教えこむべきだと考えることなどは。哲学教師に言わせれば、こうしたことは物理学者や化学者と関係がないのとおなじく、哲学者にもほとんど関係がない。知識こそが大学教育のただひとつの目的であり、美徳については両親や私立学校の先生、あるいは教会にまかせておけばよいと彼らは言うだろう。
【検討会後の反省点】
(あとで追加する予定)
【訳文提出前に考えたこと】
Bertrand Russell の言う「哲学と科学(の違い)」については、インタビュー動画を見た。
"課題文以外の" ラッセルの英文は以下の2冊で復習した。
『英文をいかに読むか〈新装復刊〉』朱牟田 夏雄
『決定版 翻訳力錬成テキストブック』柴田 耕太郎
※『英文標準問題精講』原 仙作、中原 道喜(Bertrand Russell の文章を多数掲載)は読んだことはあるが、今回はとくに復習していない。
※語順は、できるかぎり原文を尊重している。
(1パラa) The word 'philosophy' is one of which the meaning is by no means fixed.
(考えたこと)
one = a word
the meaning of the word is by no means fixed
→ 訳文:
「哲学」という語は、意味がまるで定まっていない言葉である。
(1パラb) Like the word 'religion', it has one sense when used to describe certain features of historical cultures, and another when used to denote a study or an attitude of mind which is considered desirable in the present day.
(考えたこと)
it = the word 'philosophy'
it has one sense when used to describe … と
and (it has) another (sense) when used to denote … の並列
historical と in the present day が対比されている →「過去」と「現在」
直訳すれば「~するために使われるときにはひとつの意味をもっており、~するために使われるときには別の意味をもっている」だが、もう少し自然ですっきりした日本語にしてみた。
→ 訳文:
「宗教」という語とおなじく、「哲学」は過去の文化の特色を記述するときにはある意味で使われ、現在好ましいとされている研究や考え方を表現するときにはまた別の意味で使われる。
(1パラc) Philosophy, as pursued in the universities of the Western democratic world, is, at least in intention, part of the pursuit of knowledge, aiming at the same kind of detachment as is sought in science, and not required by the authorities to arrive at conclusions convenient to the Government.
(考えたこと)
the Western democratic world いちおう検索してそれなりの数が見つかったので「西洋の民主主義圏」 とした。
part of … 「~の一部」ばかりでは芸がないので、「~の一貫」とした。
detachment を日本語にするのがなかなか難しい。辞書にある「超然」では意味不明なので「対象から距離をおいた態度」とした。
→ 訳文:
哲学の探究が西洋の民主主義圏の大学でなされるとき、少なくともその意図するところは、知識の探究の一環であり、科学の探究と同様に対象から距離をおいた態度をめざしている。しかも、政府にとって都合のよい結論に達するよう、当局から要求されることはない。
(1パラd) Many teachers of philosophy would repudiate, not only the intention to influence their pupils' politics, but also the view that philosophy should inculcate virtue.
(考えたこと)
teachers of philosophy(哲学教師)は次の文の the philosopher(哲学者)とは別の人たちと解釈した。
someone's politics
= someone's opinions about how a country should be governed (Cambridge)
「政治」ではなく、「政治についての意見」
→ 訳文:
多くの哲学教師は、はねつけるだろう――生徒の政治的な意見に影響を及ぼそうとすることはもちろん、哲学の名の下に美徳を教えこむべきだと考えることなどは。
(1パラe) This, they would say, has as little to do with the philosopher as with the physicist or the chemist.
(考えたこと)
(This has little to do) with the physicist or the chemist
This = not only the intention … , but also the view … と考えたが、もしかすると後半だけなのかも?
→ 訳文:
哲学教師に言わせれば、こうしたことは物理学者や化学者と関係がないのとおなじく、哲学者にもほとんど関係がない。
(1パラf) Knowledge, they would say, should be the sole purpose of university teaching; virtue should be left to parents, schoolmasters, and Churches.
(考えたこと)
Knowledge「知識の探究(or 獲得)」などとするか迷ったが、最終目的だと考えて、よりシンプルに「知識」とした。
schoolmasters
= a male teacher in a school, especially a private school (Oxford)
大学の先生ではない。たんに「学校の先生」か「中高(?)の先生」か迷ったが、最終的には「私立学校の先生」とした。
→ 訳文:
知識こそが大学教育のただひとつの目的であり、美徳については両親や私立学校の先生、あるいは教会にまかせておけばよいと彼らは言うだろう。
【参考資料】
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