助産師あいあいこのプチ相談室「妊娠初期・つわり時の食事について」
こんにちは、あいあいこです。
前々回の記事では妊娠中の体重増加について、前回の記事では妊娠中の摂取カロリーについて解説をしました。
今回からは、妊娠初期・中期・後期に分けて、各時期の食事の特徴などについて解説をしていこうと思います。
まずは、妊娠初期(〜15週まで)について。この時期にはつわりがあり、思ったようにバランスの良い食事を摂ることが出来ない方が多いのではないでしょうか。
普段の摂取カロリーに+50kcalすることが望ましいとはされていますが、「そんなの無理!」という方はたくさんいらっしゃるはず。
でも、結論から言いますと、今の時期は食べられなくても大丈夫です。
この時期、赤ちゃんは卵黄囊(らんおうのう)という栄養の袋を持っており、栄養はそこからもらっています。
また、15週頃に胎盤が完成するまでは、母体からの栄養はあまり必要としないので、お母さんに必要な栄養だけを摂取すれば大丈夫です。
教科書的には12週頃にはつわりがおさまる、と言われていますが、つわりの辛さや期間は人それぞれ。
よって、自分がしっかり食べられるなと感じられるまでは、食べられるもの、飲めるものを、摂れるときに摂るという感じで大丈夫です。
そして、辛い時には心身ともに休むと症状が緩和すると言われています。周りに家事をお願いしたり、職場で配慮してもらえるようならば、遠慮なく休ませてもらいましょう。
もちろん、つわりがなく調子が良いという方は、厚生労働省の妊産婦のための食事バランスガイドに沿って、バランスの良い食事を心がけてみてくださいね。
また、つわりには色々なタイプがあります。タイプ別に対処方をいくつかご紹介していきましょう。
①食べられるけどなんとなく気持ち悪い
食べられるもの、飲めるものを、摂れる時に摂りましょう。
「特定の食べ物、飲み物だけなら摂ることが出来る」という方、それで大丈夫です。
アイスクリームだけ食べていた方もいましたし、逆にポテトチップスのようなものしか食べられないという方もいらっしゃいました。
無理に食べようとせず、吐かない程度に、気持ちの悪くない時に摂っていただけるとよいかと思います。
②お腹が空くと気持ち悪くなる
いわゆる「食べづわり」というやつです。
この場合は、食事を小分けにして摂るといいでしょう。おにぎりを作っておいてお腹が空いてきそうになったら食べたり、もしお仕事等で軽食を摂るのが難しければ、ポケットに飴やブドウ糖のタブレットを忍ばせておくのもいいかもしれません。
ただし、ちょこちょこ食べにより、口の中の環境が悪化して、虫歯や歯周病のリスクが上がると言われています。
こまめに歯磨きをするか、歯磨きが辛いという方は、マウスウオッシュを使うなど、ご自身に合う方法で口腔ケアをしてみてください。
③水分すら摂ることが出来ない、水分も吐く
固形物が食べられなくても、水分が摂れているのであればギリギリセーフ……なのですが、水分も受け付けない場合は、点滴が必要となってくる場合があります。
外来で点滴をするか、場合によっては入院をして点滴を24時間行うこともあります。
教科書的には、体重が非妊時=妊娠していない時から5%以上減少する、尿にケトン体(身体が飢餓状態の時に出てくるもの)がたくさん出る場合には点滴をする、となっています。
水分も摂れない場合は、かかりつけの病院に相談するのが良いでしょう。
ただ、固形物と水分が摂れていても、身体が辛い、吐き気が強い、体重が減っているという場合は、遠慮なく医師に相談してください。
点滴で楽になることもありますし、吐き気止めの薬を使うことも出来ます。吐き気止めによる赤ちゃんへの影響もないと言われています。
また、つわりによって安静にしていること、脱水症状になることから、静脈血栓塞栓症や深部静脈血栓症(血流が悪くなり、血管内で血が固まって血栓、血の塊が出来てしまうこと)を発症するリスクがあがるとも言われています。
予防法としては、水分を摂ること、身体や足を動かすこと……なのですが、辛い場合は着圧ストッキングを利用するなどして、血栓が出来やすいとされている足の血流を促進してあげましょう。
先程も申し上げたように、教科書的には12週頃にはつわりがおさまると言われていますが、その時期を過ぎてもつわりの症状が残る方は少なくありません。
また、出産までつわりが続くという方もいますが、その場合は別の病気が隠れている可能性もありますので、妊婦健診の時に遠慮なく医師に相談してください。
さて、今回の記事はいかがでしたでしょうか?
「これってどういうこと?」「ここをもう少し詳しく知りたいんだけど……」という場合は、是非コメント欄にお寄せください。
では、また次回お会いしましょう!
【出典】
産婦人科診療ガイドライン-産科編2020(日本産婦人科学会、日本産婦人科医会):https://www.jsog.or.jp/activity/pdf/gl_sanka_2020.pdf
病気がみえる 産科 vol.10(第4版)(株式会社メディックメディア)
妊産婦のための食事バランスガイド(厚生労働省):https://www.mhlw.go.jp/houdou/2006/02/dl/h0201-3b02.pdf
【画像提供】