『ヘッドスライディング』#209
緊急回避、あるいは最後の手段、そんな言葉が似合う。そんなイメージがある。
試合で使ったことは一度か二度くらいしかない。テレビで見てるとバッティングと走塁で使うよりは、牽制に対する帰塁で使われているのをよく見る。ほんの一瞬で刺されることもあるし、走るより手を伸ばした方が速く塁にタッチできる。非常時、というより緊急手段。緊急回避。スマブラ。緊急回避って言葉、普段使うことないし特定の動作を指すわけではないからまず登場機会がないんだけど唯一、みんなどハマりしたあのゲーム、大乱闘スマッシュブラザーズでバリア張ってスティックを倒したときのあの、相手の攻撃をかわせるアレ、アレを緊急回避と言っていたから、緊急回避のイデアはアレ。それと。モンスターハンターでは走りながら横っ飛びボタンをアクションを発動させると、相手の攻撃が当たらない回避行動でヘッドスライディング(というよりは飛び込み)があったことで、イメージとイメージが繋がっていま、ヘッドスライディングと緊急回避の結びつき獲得。
のんびりと波風なく生活しているとしても、ときどきは「…っ!? やばい」と焦るときが訪れる。朝の忙しない出発前の時間に天気予報を見ながら歯を磨いていたらハッとして「いつのまにかこんな時間!」と気づかぬうちに出発すべき時刻が迫っていたとか、友人への他愛ないメールをうっかり仕事相手に誤送信してしまった場合とか。刹那的に脳内でバチバチッと電気信号が駆け巡る。「まずいぞ」「謝らなきゃ」「間に合わせなきゃ」「スピード上げるぞ」「まずは先方への連絡だ」、どどっと次に取るべき行動の候補が表れて、最適で最速な順序で動くべくフローチャートが組まれる。選び出された行動項目の中身を思考する。こうした思考を経たものとは、ヘッドスライディングは違うよな、というわけで、ヘッドスライディングは脊髄反射的な行動なのだ、「やばい」と感じて考えてから実行する行動とは別物なのだ。
熱いやかんにうっかり触ってしまい「アチッ」と口で言うより速く、手は引っ込められる。手で受容した刺激が脳までいかず脊髄で、危険回避のため最速ルートで神経伝達を行い行動につなげる、脊髄反射。ヘッドスライディングは、意図してやるのとは違う、脊髄反射的なところがあるよなぁと思った。これは、脳までしっかり届けて思考を経たもの。最速でタッチするための最適解。