『センチメートル』#210
口語だなという印象で固まった、長さの単位。馴染みのある単位のうちメートルとミリメートルについては公的な印象、キロメートルについては、なんていうか地球的な印象。規模がでかい。印象、とはいえ、理由はハッキリとわかっていて、メートルとミリメートルについては建築設計で基本の単位であるから。主に図面ではミリメートルで記載して、現場での細かな寸法は(ほぼ)すべてミリメートルでの指示となる。ミリメートル以下は扱わず、1ミリ(いちみり)、10ミリ(とおみり)、100ミリ(ひゃくみり)、1,000ミリ(せんみり)なのだ。きっかり1,000とか3,000とかキリのいい数字ばかりでもなく、廊下幅1,350とか開口部高さ2,280とか、カウンター奥行き435とか、ベースがミリメートルであるわけだから、2.28メートルとか、228センチメートルとか、そういう単位の出番が無くなる。外回りで敷地面積や長さの単位ともなればメートルは登場するものの、結局図面の単位はミリメートル。10,000オーバーの値が表れる。
じゃあセンチメートルってなんだろう。ってよく思ったものだった。ものだった、し、今でも思う。
なにか。それはやっぱり、口語の長さの単位なんだと思う。これでそれなりに納得している。
爪の幅と同じくらい、1.5センチ。靴の大きさ、26.0センチ。身長、163センチ。思いつくままに「センチメートル」で言い慣れているものを挙げるとわかるのは、身体スケールに沿う単位であるということ。文字通り、身近な単位。だからといって、センチメートルが身体スケールから割り出された単位であるかといったらそれはノーで、フィートの方が身体的であるとも言える。センチメートルはあくまで、基準単位の100分の1を示す接頭辞“センチ”をメートルに適用しただけのこと。そのメートルにしたって、赤道から極点までの長さの1万分の1、光が1秒に進む距離の約30万分の1、それでしかない。身体スケールなんてまるで無い。それでもたまたま、人体のスケールを過不足なく、極端な小数点以下を作らず、極端な桁数の上昇をさせず、言いあらわせる単位がたまたま、センチメートルであった、それだけの、こと。
細かくもなく粗くもない、不思議なんだけど、使い勝手のいい単位。
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