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芥川賞とやぶれかぶれな

 8月、芥川賞受賞作品が発表されましたね! 
 図書館に行くと、入り口すぐの広間に、受賞作品のちょっとしたブースが設けられていました。
 今年の受賞作は二作品。朝比奈秋「サンショウウオの四十九日」と
松永K三蔵「バリ山行」。読んでみたいな~と思いつつ、やはりというべきか、収録雑誌はすでにすでに貸出済み。おそらく数か月先もずら~っと、予約が入っていることでしょう。

 その時は、まあ、そんな時期かと思い、気にも留めませんでした。そんなふうに、いつもの私ならすぐ忘れてしまいます。流行りものというか、世間でのリアルタイムのムーブメントには、あまり関心がないのです。
 しかし、今回はなぜか図書館の蛍光灯の光が反射した「貸出中」のラミネートフィルムが頭から離れない。芥川賞受賞作品、ちょっと読んでみたいなと思ったのです。それまでは、まったく興味もわかなかったのに、不思議です。
 やはり人生には、えてしてこういう瞬間があるものなのでしょうか。これまで全く気にならなかったものが、人生に入り込んでくる瞬間です。

 最新受賞作が読めないなら、歴代の芥川賞受賞作を読もう!
 その気概で、さっそく「芥川賞のすべて・のようなもの」を訪問しました。芥川賞のことならまずこのサイトです。

 さて早速確認してみると、第一回の芥川賞受賞作は石川達三「蒼氓」でした。名前は聞いたことがあるけど読んだことはない作品です。
 確か芥川賞受賞作は短編が多いのですよね。この機会に第一回から順に読んでみようかな。読書の秋と言いますし、ちょうどいいかもしれません。

 さて、先のサイトを見ていて、もうひとつ気になったことがあります。第一回の選考委員は軒並み若いということです。加えて、川端康成や谷崎潤一郎など、教科書や国語便覧に載っているようなお名前がずらりと並んでいるのも驚きです。

 第一回芥川賞といえば、やはり太宰治のエピソードが思いかびます。彼は、芥川賞を熱望していたが、結局取れなかった。受賞を逃した後も、選考委員であった川端康成や佐藤春夫に、(あえてこの言葉を使いますが、)みっともなく、手紙などを使って要求し続けたのですよね。サイトを見ると、当時26歳とあって驚きました。
 26歳の青年が、そんなやぶれかぶれになってまで、文学に、人生に身をささげたのか。いま、わたしはそんなに本気になって生きているのだろうか。誰かとぶつかって、恥をさらしてまで生きようとしているだろうか。
 思わず自分自身にそう問うてしまいました。
 このエピソードは有名なので知っていましたが、26歳という具体的な数字を見た時、心をえぐられたような気持ちになりました。

 太宰治ってすごいですね。いまなお、人気な作家なのもうなずけます。簡単に見習いたいとか、軽々しくそんな薄っぺらい言葉は使えませんが、自分の、人生に対する意識は少しは変えてもいいかもしれません。のらりくらりと、な人生も良いですけど、実際わたしはそういう人生を心掛けてきましたしそれがいちばんよい人生だとさえ思ってきましたが、これは改める必要があるかもしれないと少し思いました。

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