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背中を推す優三、吹き出す桂場、困惑する花岡、ニコニコ轟
『虎に翼』第5週は魔女5初めとする女性たちについても語りたいのだけど、まずは男性たちから。
背中を推す優三
ぐっと来ました。最初の筆記試験は共に合格して、喜び合う優三と寅子。いつも腹の具合が悪くなって実力が出せていなかった優三、寅子のおまじないが効いて、今回晴れて筆記試験に通っただけに、喜びも一塩だったでしょう。しかし、口述試験の結果は明暗が分かれてしまった。この時の優三の表情がさすが仲野太賀さん、自身の悔しさよりも女性初の合格者となった寅子を祝福しただけでなく、背中を推し出してくれる。そして、すぐさま、自分が実力を出し切っても届かないところにある合格ラインに見切りを付ける、諦めと決断の表情。わずかな時間の中に人生の様々な感情が詰まっていて、人に寄り添い、励まし、支えていくことが自然にできる優三さんというキャラクターに魅了されます。
仲野太賀さんは『いだてん』小松君『昔話法廷』桃太郎『拾われた男』松戸君の3作だけでもスゴイと思ってました。小松君の最期の疾走に見せた様々な表情、鼻水垂らしながら泣く桃太郎のリアルさ、などなど、名場面を挙げれば3作だけでもいくつも出て来ます。大河ドラマ『豊臣兄弟』の主役にキャストされたのも、一年間ドラマを安心して見られるぞーという気持ちになりました。
吹き出す桂場
寅子のスピーチが居並ぶ男性陣に冷や水を浴びせたものであったところ、ひとりだけ、ぷっと吹き出す桂場。
X(旧ツイッター)では「嘲笑」という書き方をする人も見かけましたが、あれは違うと思います。むしろ「快哉を叫ぶ」に近いでしょう。
なぜなら、協亜事件の判決の後、竹もとでお礼を言った寅子に「きみは裁判官になりたいのかね……いや失礼、婦人はなれないのだったな」と言った桂場に対して、寅子のスピーチはアンサーソング(のようなもの)だったからです。法律自体が女性を不当に扱っていることへの指摘、そして同じ試験を受けたにも関わらず女性は裁判官にも検事にもなれない不平等への指摘、これらの不平等に向き合う意欲を、抱負として述べているからです。
桂場のあの笑いは「こいつ面白え」とか「こいつ言うじゃん」とかに近いでしょう。あるいは、女性は裁判官になれないという今の仕組みを指摘する自分を超えて、仕組みと闘うという寅子の気骨に感嘆したか。
困惑する花岡
吹き出す桂場、いいスピーチだったと褒めた上で白けた場を取り持つように乾杯を促す穂積教授とともに、ふたりの男性の反応もまた違うものでした。
花岡は、たぶん常識的かつ形式を重んじるのでしょう。だから型破りな寅子のスピーチに、困惑の表情を浮かべている。
このパーティの前に「もしも不合格だったとしても、来年受験すればその時には僕も一人前になっているから」と、寅子を結婚して養うことを前提としているようでした。来週は寅子と花岡の考え方の違いが表面化するのではないかと予測します。
ニコニコ轟
轟はニコニコしてます。彼はバンカラな服装や言動で、女性を下に見ているのではないかと最初は思われたのですが、案外「女性はこうあるべき」という価値観に囚われていないですね。魔女5の皆さんは「女だけど『漢《おとこ》前なやつら』と思っているようです。一緒に合格した彼がこの後どんな法曹家に育っていくのか、楽しみですね。