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出前館の配達員に怒られた。わたしは飲食店でアルバイトをしていて、その日は出勤した瞬間に出前館の配達員が店にやってきた。出勤したばかりで何も知らないので社員さんに詳細を尋ねると、出前館?注文きてないけど?と言われた。タブレットを確認したら注文はちゃんと入っていて、ただ、誰も気づかずに何も作っていなかった。それをわたしが配達員に伝えて、わたしが怒られた。何分かかんの?こっちにも予定あんだけど、などとしばらくキレられて、マジでその通りだよなーと思いながら申し訳ございませんをいっぱい言った。テクニック。まずはテクニックで戦いたい。何に関しても、だ。アルバイトをしていたら様々な感じないテクニックが身についた。マジで自分は悪くないときも、怒りを感じないテクニックで謝れるようになった。熱っついものも、熱さを感じないテクニックで持てるようになった。わたしは最強なんだよ。いくらでも謝るし、1000℃の鉄球だって持つ。そしてあいつ(それぞれの、許せないやつ、わたしの場合あいつやあいつ)の家まで持っていって、その鉄球を投げて屋根に穴を開ける。夜、家に帰ってきたそいつは、いつもより少し部屋が明るいなと思って天井に目を遣り、そこで屋根に穴が開いてることに気づけ。そうしたら意外なことに、まずそいつが感じるのは怒りでも恐怖でもなく、その穴の先に見える月の美しさだぜ!

わたしが勤務するのは大体営業の中盤~ラストでしかも店が暇でほとんどやることがないから、やってることがポリネシアン締め作業だ。ゆっくりゆっくり時間をかけて、締める。焦らすようにビールサーバーを洗浄する。精神を集中させる。それでも、レジ締めで一万円数え間違える。てか年中無休24時間営業の店って始まったときから一度も止まることなく営業し続けてんのかよ、まるで時間そのものみたいだなと思いながらフライヤーの油を落とす。業務用の青い洗剤をぶち込んで青いスポンジで洗う。洗剤に素手で触れないでくださいっていう注意書きには、働き始めて一年半くらい経ったときに気づいた。たまに手の様子がおかしくなるのはこれが原因だったのかーと思った。でも手袋はしない。手袋しなきゃいけないときに手袋しないわたしより、切っちゃいけないスカート切って短くしてたあの子の方が悪い。学校説明会でスカート切ったら買い直しさせますと言ったくせにぜんぶ黙認してた生活指導のS字(あだ名がS字で、本名は忘れた)はもっと悪い。わたしが、校則を守れないやつは法律も守れないと主張しはじめて随分経った。あんな学校は犯罪者育成高校に改名しろ!それか、わたしがあの学校はこういう理由で犯罪者を育成していると言うことができますと積極的に言っていくか、どっちかだ。

アルバイトが終わったら、家に帰って家で寝る。目が覚めたら駅に向かう。わたしは大学に行かなきゃならないんだ。授業を休んだり課題を出さなかったり、そういうことが本当にできない。やらないんじゃなくて、できない。授業に行くやり方を教えるから、誰か、授業に行かないやり方を教えてくれ。そうじゃないなら話しかけないでくれ。電車が来たら電車に乗る。電車ってあんなに走ってるのに、知り合いに電車を運転できる人が一人もいないのヤバすぎると思う。誰が運転してるんだよ、あんなに走ってるのに。最近は、生活が、全体としていろんなものを好きでなくなっていく作業であって、わたしはそれがすごく悲しいと思う。諸行無常であるのに、盛者必衰であるのに、わたしだけの孤独な日々はいつまで続くのよ、教えて祇園精舎、もう許して沙羅双樹(諸行無常であろうが、盛者必衰であろうが、俺と綿子ちゃんの幸福な日々はずっと続くのよ、ごめんね祇園精舎、悪いね沙羅双樹)、って言う。誰も聞いてないけど、いや誰も聞いてないから、声に出して言う。わたしはよく電車で喋ったり歌ったりする。みんなイヤフォンをつけてるから、気にせず声を出せて良い。でも一回、あれは2023年の大晦日、わたしが出会った中で最も常軌を逸している人の家で年越しそばを食べて服に恐竜の刺繍をするという神の予定に向かって終電に乗っているとき、あのときだけは自分が主人公だったから、なんでわたしが歌を歌ってるのにみんな聴いてないんだよと思った。みなさんがノイズノイズとキャンセルしてきたものは、本当にぜんぶノイズだった?

電車を降りて大学までの道のりで信号待ち中に空を見たら、また飛行機が飛んでいる。しばらく飛行機が飛んでいるのを見ていたら、飛行機が飛んでいることの意味が分からなさすぎて面白くなってくる。なんかおかしいだろ、空を飛ぶって。移動としてやり過ぎてるし必死すぎる。でも、カッケー⭐︎友達だったら嬉しいけど、たぶん飛行機にはわたしより仲良い友達がいっぱいいる。チラッと見えたLINEの画面に、知らないアイコンがいっぱいピン留めしてあって、わたしは飛行機が見ている世界のほんの隅っこにしかいないと分かる。鳥は陽気が強いから上を目指し、魚は陰気が強いから下を目指すらしい。東洋哲学の授業で聞いた。じゃあ、飛行機は陽気が強くて、地下鉄は陰気が強いのね。あの人みたいな地下鉄は空を飛ぶのかもしれないし、わたしみたいな飛行機はいずれ地下を這いずり回るのね。

信号が変わる。また歩き出さなきゃいけないのか。小学生のとき全部見たあぶない刑事のことを考える。ユージが「杏仁豆腐が浮いてるぜ」って言ったから、わたしは杏仁豆腐を食べられなくなった。最近また見返してるけど、やっぱり柴田恭兵がめちゃくちゃカッコよくて、Wikipediaを見てみたら、携帯電話は持ったことがなく連絡手段はFAXって書いてあって有り得なかった。連絡手段FAXのやつ、カッコよすぎる。寝落ちFAXって可能なんですか?大学に着く、教室に入る。大学なので、大学生がいっぱいいる。大学なので、授業が始まる。ここではっきりと申し上げておきたいのが、わたしの真面目さは「授業に出席する」「課題を提出する」というところには適用されるものの「授業を聞く」というところには全く適用されないということです!本当にタイミングが合うとき以外、基本的に授業は聞いてない。どうやって話をきくのか分からない。頭の中でずっと何らかの考えが巡っていて、集中して話を聞くということにめっぽう弱い。誰か、話の聞き方を教えてくれ。そうじゃないなら話しかけないでくれ。あと、カルテは出さないでくれ。

授業中は理由を考える。いろんな理由を考える。Be Realをやらないのは思惑が苦手だから、タバコを吸わないのはタバコをやめたくないから。ダムが好きなのは施設の中で最も海にちかいから、きりんが好きなのは嘘みたいなのに本当だから、あいつが嫌いのは本当みたいなのに嘘ばっかだから。少し前に、普通にまとめサイトみたいなやつが見れると思って 死ぬ 苦しくない方法 で検索したら(好奇心旺盛な魚みたい?)いのちの電話やら相談所やらしか出てこなくて、よく考えたらそりゃそうで、世の中に対してやるじゃねえかと思った。バトルなんだよ。わたしが世の中に対して思ってること、それは、バトルなんだよ。バトルに完全勝利して、わたしは金曜日に死にたい。土曜日に生まれたから、金曜日に死んで人生の曜日を均等にする。最後の最後まで意味の分からない強迫性を発揮して、人生で初めてルイボスティーを飲みながら金曜日に死ぬ。ルイボスティーずっと気になってはいたけどこんな感じなんかいと思いながら死ぬ。そんで天国に行く。天国じゃみんな海の話をするんだぜ、っていうのは、悪いけど嘘だね!天国では、わたしが海の話をする。天国には、わたししか行けない。なるべく大きな声で喋るけど、流石に地獄までは聞こえないと思う。だから、みなさんは地獄でそれぞれ海をイメージでもしていればいいと思う。イメージ、大きな海をイメージ!波が生まれる場所、きっとそこには、杏仁豆腐が浮いてるぜ!おい、いつの間に授業終わったんだよ。


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