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小原さんのはなし/引退・小原佳太
フォトグラファーになろうと1ミリも思っていなかった頃の話も交えて、ボクシングファン目線で語る小原さんのはなし。
小原佳太選手(以下、小原さん)が今年いっぱいで引退する。2013年頃からボクシングを観戦しはじめた私にとって、小原さんは最初からチャンピオンだった。チャンピオンの引退は何とも寂しい。
ファンそれぞれに印象的な試合があると思うが、私は何と言っても対岩渕真也戦(OPBF東洋太平洋Sライト級タイトルマッチ・小原さんの防衛戦)。超満員の後楽園ホールの光景と応援の熱量は今でも鮮明に覚えている。試合展開と相まってページをめくって漫画を読んでいるようだった。
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岩渕さんはトリッキーな動きと一撃必殺どでかいパンチのサウスポー。入場時には黄色い声援があがるボクサーである。小原さんからチケットを購入した私はもちろん小原さん応援なので、負けずに黄色い声援(やや茶色)で対抗。応援も楽しい!わくわく最高潮!
岩渕さんのトリッキーな動きと左に冷静に対応する小原さん。動きに慣れ、小原さんの右ストレートが当たり始めてくるのだが、その右を当てるまでが職人技。カウンターやらフェイントやら体の動きやら何やら。専門家説明して!
途中偶然のバッティングで瞼をカットした岩渕さんが、次のラウンドで怒涛の攻撃。左で小原さんの顔をはじいていく。「ギャーッ!」からの「耐えろー!」。小原さん耐えた。死にそうだった(私が)。
最終12ラウンドへ。判定ありそうだなと思ったその瞬間、強烈な左フック!起き上がれない岩渕さんを見てレフェリーが試合を止め、小原さん勝利。試合中は右ストレートの印象が強かったのに、最後に左フックって。何それカッコいい!
それから数年後に一眼レフを買ってボクシングを撮るようになり、取材で一度、試合は二度撮影することができた。ボクシングファン的な感情を封印して仕事をしているので、小原さんと会話をすることはなかった。ただ、試合後の囲み会見でKO♂GANZ(※)のTシャツを着ている私に小原さんが突っ込みを入れてくれた時は、嬉しさのあまりカメラを落としそうになった。
※KO♂GANZ =三迫ジムの横井トレーナーと鈴木トレーナーによる光り輝くユニット。歌は出していないがオリジナルTシャツを何度か販売している。
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今年4月、小原さんの最後の試合を撮影した。リングサイドではなくスタンドのカメラマン席で。遠くてよかったかもしれない。結果はどうであれ、私にとっては最初から小原さんはチャンピオンである。
ボクシングは面白い!楽しい!と思わせてくれてありがとうございました。
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