15年くらい経っても覚えとる、お父さんとホタルをみに行った話し
たしか、今くらいの蒸し暑い時期、土曜の夕方。
中学の部活から帰った私に、お父さんが「今から、ホタル観にいこうや」と誘ってきた。
ホタルみても感動せんしな〜って渋っとったら、妹たちとお母さんが車に向かっとったけん、一人になるのがいやで慌てて付いていった。
お父さんは車を20分くらい走らせて、秋月小学校の近くの川辺に車を停めた。
秋月は「ホタルが乱舞する」と言われるほど、本当にたくさんのホタルを見ることができて、地元じゃ有名やった。
お父さん達は車から降りて、ホタルを探した。
私は、中学のだっさいジャージ姿のまま来たので、友達とかよその中学の子に見かけられんかが気掛かりで、車から降りたくなかった。
田舎やけん、もちろん街灯はほぼ無くて、月明りだけが頼り。
おかげで、ホタルの光が眩しいくらいに輝いていて・・・
と思ったら、
まさかの、ホタル全然おらんやん!
5、6匹くらいがフワフワと飛びよるかと思うと、すぐ草むらに隠れた。
お決まりの、ホタル捕まえて携帯のライトで照らして見て「うげぇ」とリアクションして、げらげら笑い合うも、気分は上がるどころか下がった。
なんせ、ホタルがおらんっちゃもん。
ほぼ暗闇。
目を凝らしてホタルの群れを探すも、いっちょん楽しくなくって、お父さんに文句たれた。
お父さんは、「気を取り直して」と、小石原川添いに5分ほど車を走らせた。
私もここならば、と胸を弾ませたけど、やっぱりホタルはちらほら。
真っ暗やけん、足元の大きめの石につまづいてしまい、さらに私は不機嫌になった。
お母さんや妹たちも、つまらんそうに見えた。
お父さんは「こんなはずじゃなかった」と、申し訳なさそうに、ひっしに探してくれていた。
けど、おらんもんは、おらんかった。
車で10分ほど、水文を抜けて三奈木小学校の近くで、また車を停めた。
今度は、お父さんとお母さんだけが車から降りて、ホタルを探しに行ってくれた。
私は、ホタルはおらんし、恥ずかしいジャージ姿でうろうろさせてから、なんしに来たとよ?って、ぷりぷり腹かいとった。
今思うと、実に心が狭いことか。
あとから、父は「そういえば、さっか雨降ったもんなぁ」ってボヤきよった。
さんざん探し回って、みんなお腹が空いとった。
うちは外食は、滅多にしない家庭だった。
(正確には、田舎ゆえに近くに店が無かった)
でも、この日は違った。
お父さんは、大刀洗にある『あずみ』といううどん屋さん連れてってくれた。
『あずみ』は、お父さんが大好きなお店で、私たちも無条件に好きだった。久しぶりの外食に、テンションが上がった。
私は、お母さんを真似て、ごぼう天うどんを頼んだ。お父さんは、いつも肉うどん。
妹たちは、忘れた。ワカメうどんと海老天うどんやった気がする。
セルフのお惣菜も美味しくて、全種類食べるのがお決まりだ。
美味しいうどんをみんなで食べて、心もお腹も満たされとった。
さっきまでぷりぷりしてたのは、何処へやら。
今となっては、子ども達のために、ひっしにホタルを探して川沿いを走ってたお父さんのことを誇りに思う。
結局、この夜
『ホタルが飛び交う幻想的な景色』を見ることはできんかったけど、
『子どものために走り回る父と、特別な晩ごはんの時間』が、大切な思い出になった。
ちょうど5/26(土)、27(日)は、私たちが最初に行った秋月小学校の近くで《あきづきホタル夜まつり&秋月マルシェ》が開催されるらしい。
天気は曇りやけん湿気も多いし、ホタルが乱舞する景色が見れるっちゃないかな。
あるいは、雨が降れば、うちと同じかも(笑)
https://kurumefan.com/akidukihotaruyorumaturi
まぁ、日を変えれば、ホタルの群れにはきっと会えると思うし、例え会えんくても、私のように素敵な思い出になると願う。
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