【おべけの館】初仕事パンプキンちゃん編その1
~回想~
[死]『パンプキンとターニップはまだ、仕事をさせたことがなかったな。
もう、しばらくここにいて、だいたいのことは分かったころやろう。
よしっ!パンプキンとターニップ1人ずつ、人間をこの館に案内させろ!
"おべけ勧誘"や!
ターニップにも伝えといてくれ!!んじゃ!』
~~~
[パ]「とは、言われたものの~…。うーん…。」
前に死神から頼まれたこと。"おべけ勧誘"。
それがどういうものなのかよく分からず、不安に悩まされるある日。
ーーーー助けて…。ーーーー
いきなり、聞き覚えのない少年の声が聞こえた。
本当に微かな声だったが、パンプキンちゃんの耳から頭の中に轟いた。
[パ]「ん?誰?」
パンプキンちゃんが驚き、周辺をチラチラと見回す挙動をとるのを見たカボチャー。
[カボ]「おっどうしたプキン?」
[パ]「いっいやぁ、さっきなんか。『助けて』って、聞こえた気がして…。」
それを聞くとカボチャーは喜ぶように一跳ねした。
[カボ]「おお!!やったじゃねーか!それは人間からプキンに、本館のサービスを依頼されたってことだぜ!」
[パ]「えっ?えっ?そうなの!?」
唐突のことに困惑するパンプキンちゃんと、主の初仕事でハイテンションのカボチャー。
[カボ]「よし!早速、サービスの準備だー!!」
[パ]「ええぇぇ~!?!?」
本日のお客様
・弾 未来 様 14歳(だん みらい)
「未来~!!カッコいいわよ~!!ほらほらこっち向いて~!」
そうカメラを構えた母の声に未来は反応する。
地毛の金髪をなびかせ、ペールグレー色の瞳を輝かせ、澄ました顔でポーズをとる。
しかしその目は、富や成功などの意味をもつ金色の髪と異なり、迷いや曖昧に満ちた瞳だった。
[未]「…。」
エジプト人の父親と日本母親のハーフの未来。
父親が大手会社の社長でお金持ちの家。
未来は親や周りの人から美麗な容姿に一目惚れされ、"カッコいい"という言葉を気の遠くなるような回数を言われている。
そして強制的にモデルにされる。
未来は黙りで内気な性格だった。人前に立つことが苦手。しかし「嫌。」とも言えることも出来ず、一向に有名になってしまう現実。
今更、やめるなんて言えない…。
毎日親からは高級ブランドの服を着せられ、さらにカメラ地獄。
こんなことせずに、ゆっくりまったり1人で本をのんびり読む時間が楽しい…。
そんな嫌な日々が続くなか、空に"大きく不思議な光を放つ満月"が浮かぶ夜が来る。
ベットで表では絶対見せない我武者羅に泣いて、ぐしゃぐしゃの顔を布団に押さえつける未来。
[未]「もう、もう、こんなの嫌だ!!誰か…"助けて"…。」
8話終わり。ご愛読いただき、誠にありがとうございました。
また次回のお話で。
作・絵 天乃 つくる Hzk(ヘルツク)