【おべけの館】5話その2
本日のお客様
・黒田 海斗 様 34歳(くろだ かいと)
船や海賊が大好きな少年がいた。
そして、少年にはある悩みがある。人と話すことが苦手ということだ。
あまり人と話すことがなく、カタコトになったり、急に大声になってしまったりと相手が怖がってしまうような話し方になってしまう。
だから、彼のまわりには人が寄ってこない。
だが、そんな彼にも夢がある。
人と船のことについて語りながら海賊ごっこをすることだ。
しかし、そのまま夢が叶わないまま月日が経ってしまい、いつの間にか大人になっていた。
大人になっても話す相手がいない。
未だに職場の人からはやはり怖がられる。
そうして壮大な孤独感に襲われ、引きこもりになってしまった。布団とお友達になってほぼ寝るだけの生活。なにもやる気が起きない。
ある日、空に"大きく不思議な光を放つ満月"が浮かぶ夜が来た。
ボソボソとなにか呟く。
[海]「ああ…。自分なんて生きてる意味あるのかなぁ。いっそう消えてしまった方が楽かな。誰でも良いからまともに話したい。けど、勇気が出ないや…。誰か"助けて"…。」
すると、ふっと目の前に黒フードの死神らしき者が現れた。
[死]「呼んだか。」
子供っぽい声で不慣れな感じの口調で話しかけてきた。なんだか自分みたい。
疲れているから驚きもしない。てきとうに「うん。」と返事した。
そうすると、死神は両手優しく包み込み、
『「おやすみ」』
と囁きながら頭を撫でた。
だんだんと意識が朦朧としていく。
そして、ながーいながーい眠りについた。
「って言うことがあったんだ。」
死神がホックの生前の話をしてくれた。
[死]「きっと、ホックがビスマにがっついたのは、ビスマの骸骨お面のせいだろう。やっぱり知らない場所だから、似た者同士を探してたんだと思う。
大丈夫。ホックは優しいおべけだ。少し話し方が個性的なだけ。」
それを聴いたクロムはホックに近づき。
[ク]「ホック、申し訳ないことをした。いきなり鞭で叩いたりなんてしてごめん…。」
謝るクロム。ビスマはまだ少し怒っている様子。
[死]「けどまぁ、ホックもいきなり人の顔を引き剥がすように引っ張ったらいけない。次からは気をつけるように。」
死神はホックに注意をした。
そしてビスマはお面を外し、自分は骸骨のおべけではないことを態度で主張し、振り返って自分達の部屋の方向へ歩き始めた。
[テ]「まぁまぁ仲良くしないとね!汗」
そう言いながら、テルルとクロムもビスマの跡に着いていった。
廊下は死神とホックだけに。
[ホ]「オッ怒ラセテシマイマシタ…。」
また怖がられてショックを受けたホック。
[死]「大丈夫。ビスマはきっと優しいおべけさ。きっと許してくれる。まぁすぐ人を裏言葉で煽る奴だからちょっと厄介者だけど。
けど、私はこのおべけの館の館長。死んだことを絶対後悔させない。いつかホックと似合うおべけを見つけてやるさ。」
ホックの背中を軽く叩きながら死神はそう安心付けた。
5話終わり。ご愛読いただき、誠にありがとうございました。
また次回のお話で。
作・絵 天乃 つくる Hzk(ヘルツク)
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