【おべけの館】3話その3
そうして月日が経ち、また別の夜。
[ね]《『阿招ちゃん、今日も来るかなぁ』》
しかし、今夜は阿招が来ない。来そうな雰囲気も全くしない。
おかしい…!?!?
急いで匂いを頼りに阿招の元へ向かう。
すると着いた場所は…。
まさかの昔の飼い主の家だった。
[ね]《『ええ!?なんでや!?!?まっまぁとりあえず阿招ちゃん!!』》
家の中へ入ると、刃物を持った昔の飼い主の彼氏がいた。
実はねねは、M女の飼い猫だった。M女が亡くなった頃DV男に捨てられたのだ。
[ね]《『あんちゃん!!なんしよん!?』》
刃物は阿招の方を向いていた。阿招はすでに数回刺されたのか切り傷だらけで、びくびくと部屋の端で脅えている。
DV男は何を考えているのか分からない、漆黒の瞳でふらついた足付きで阿招に近づく。
阿招は言葉が出ず、ただ開いた口をガクガクと動かすだけ。
ねねは「助けないと」と焦るが、足がびくともしない。怖い。「助けなくちゃ」と焦るばかりで足が一歩も動けない。
そうして、刃物は高く阿招に向かって振り落とされた。
[ね]《『ダメ!!!!!!!』》
声は聞こえない。
血の池が広がる部屋。目の前は真っ暗で、頭の中は真っ白に。
そして、DV男がこちらを見る。
「!?!?お前…クソ猫がどうしてここにいる!?」
刃物もこちらを向く。近づいてくる。
[ね]《『"助けて"…!!』》
咄嗟に願ってしまった。
だが、その瞬間。ピタッと自分以外、時間が止まったかのように止まった。
[ね]《『え…?』》
目の前には黒フードの死神らしき者が居た。
[死]「呼んだ???」
見た目とは反した無邪気な声で話しかけてきた。
[ね]《『え…?』》
[死]「助けてほしい???」
いきなりの事過ぎて、自然に「助けてほしい」と言わんばかりの今にも涙が溢れ出しそうな目になってしまった。
すると死神らしき者は、ねねを優しく腕の中に包み。
『「おやすみ」』
と囁きながら頭を撫でた。だんだん意識が遠のいていく。だんだんぼんやり…ぼんやり………。
しばらくして。
ふっと目が覚める。ねねは自分の姿に驚く。
巨大な猫になってる…。
毛並みはピスタチオ色でクローバーカラーの作務衣。目尻のアザはまるで化粧でもされたかのように鮮やかな赤色に。
首には阿招から貰った月色の飾りが。
しばらく自分の変わった容姿を見つめ、前を向くと黒フードの死神らしき者が。
[死]「おはよう。今日から君はこの館のおべけね!」
明るく、相変わらず無邪気な声で話しかけてきた。
[ね]「おっおべけ?ワシ、ぽくったんか?
てっえぇ!?!?喋れる!?にっ人間みたいやぁ…!?」
今の状況が把握しきれてないうえ、自分が人間のように話せることにも気付き、混乱するねね。
[死]「うん。君は私の能力(イタズラ)で死んじゃった。これが本館のサービス、"アンラクシ"だよ。
んで、君の名前は"まねき"さん!!能力(イタズラ)はね、『夜招き』で役職は『イタズラおべけ』!!」
死神らしき者が楽しそうにそう話す。
[ま]「おお…。なるほど…?」
[死]「っていきなり言われても分からないよね…。大丈夫!この館まだ作りたてで、まだ何も…うん。寂しい館。でも、これから賑やかな場になれたらなって。だから手伝ってほしい!"一緒"に館を作り上げて欲しい!!お願い!」
一所懸命にお願いを要望する死神らしき者。
[ま]「おお!ええよ!!」
即答のまねきさん。
相変わらず、見た目とは反した無邪気な口調やなっ。いや、ワシも猫の見た目に反してしゃべってる…笑
「"一緒"やっ…。」
そうして、おべけの館初のおべけ、まねきさん。招き猫としてこの館のおべけに。
「っちゅー話があってな。これがワシの生前の話や。」
とまねきさんは、語ってくれた。
[タ]「なるほどー。そんな事があったのか。」
[パ]「てことはもう、阿招ちゃんに会っていないの?」
まねきさんの話を聞いて少し表情が暗いパンプキンちゃんとターニップくん。
[ま]「ああ、せやな。けどまぁ、久しぶりに阿招ちゃんの事思いだせて良かったわぁ」
明るい声だが、瞳は少し潤っている。
そして、その後もお菓子会を嗜む、パンプキンちゃんとターニップくんとまねきさんとアキとサクラ。
"一緒"ってなんだか嬉しいよね。
3話終わり。ご愛読いただき、誠にありがとうございました。
また次回のお話で。
作・絵 天乃 つくる Hzk(ヘルツク)
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?