【おべけの館】9話初仕事パンプキンちゃん編その2
その瞬間。目の前に、未来を心配そうな目で見つめるパンプキンちゃんが現れた。
[カボ]「((こいつ、"未来"って言うらしい…。まずは話しかけてみろっ。))」
カボチャーは頭の上でうにょりと動き、パンプキンちゃんに耳打ちする。
[パ]「未来くん…。どうしたの?」
パンプキンちゃんは優しい口調で話しかけ、未来に近づき隣に座る。
ビクッ!!!
[未]「…?」
驚いたのか未来は少し退き、目を大きく開いて涙目のゆらゆらとした瞳でパンプキンちゃんを見つめる。
[パ]「ああ…。急にごめんね汗。
私、こうやって人間と話すの初めてなの。どうしたら良いのか分からなくて。」
そうすると、未来が興味津々な顔で近づいて来た。
本を読むことが好きだった未来。急に現れた人間ではない何か。まるで自分がお話の中の登場人物かのような感覚。
[パ]「ん?どうしたの?」
[未]「ねぇ…君って何か魔法とかって使えるの?」
[パ]「え!?まっ魔法!?そっそれは…。あはは。」
その瞬間。
バサッ!!
[カボ]「使えるぜ!!!」
カボチャーは自慢気な声で、体を巨大なブランケットのように広げ、2人を包んだ。
[パ]「え!?」
[未]「わっ!?」
その後カボチャーはしゅるしゅると小さくなり、いつものベレー帽サイズになってパンプキンちゃんの頭に、ポンッと乗った。
なんとそこはおべけの館の玄関だった。
[未]「!?わぁすごい…!!本当にお話の中みたい!!」
館内は薄暗く、シンとしている。
広く続く廊下、高い天井を"興味津々に"眺める未来。
なんだか、私が初めて館に来た時と似てる。
ぼんやりそんなことを思いながら未来を見つめるパンプキンちゃんに、またカボチャーが耳打ちする。
[カボ]「おいっプキンっ!館内を案内して、未来をおべけにするぞ!プキンの役職、案内人だろっ!カカカ!」
イタズラ計画をする少年のような口調でカボチャーは囁いた。
[パ]「あっ!うん!」
パンプキンちゃんは未来を館中案内する。
各おべけの部屋に行き、そこではおべけが芸やイタズラを見してくてた。
大きなコスモスを使って舞うアキとサクラ。
いろんな月や星を出してくれるまねきさん。
などなど。
そうして案内が終わり、パンプキンちゃんは未来に話しかける。
[パ]「どう、未来くん?おべけになる?」
[未]「…。」
未来は目の視点が外れ、意識が朦朧としている。
それはパンプキンちゃんの役職の仕業。案内人は人間の警戒心を解いて、館内を案内させ、無意識に長時間館内に居させることができる。
このおべけの館の特徴。おべけでない者は、長時間館内にいると意識が薄れていく。
パンプキンちゃんはこれを利用したのだ。
[カボ]「カカカ!黙ってるってことはイエスだ!」
それを見て嬉しそうなカボチャー。
[パ]「んふふ!!それではいただきますか!」
パンプキンちゃんもニコニコ。
なぜかって?だってイタズラができるんですよ?おべけは誰だって嬉しい。
するとカボチャーはドロドロと溶け始め、パンプキンちゃんの体を覆った。そうするとだんだん体が膨れ上がりし、巨大なパンプキンおべけとなった。
そうしてグワッと大きく口を開け、未来を喰べてしまった。
この『館の案内人』の能力(イタズラ)『番人』。
ターゲットを喰べてしまう。
これが本館サービスの"アンラクシ"…。
パチッ
[未]「………?」
目が覚めた未来。怪訝な顔で辺りを見渡す。
[未]「!?!?」
その時未来は自分の姿に驚いた。
全身包帯でぐるぐる巻きで、口元や頭まで覆われている。足下はゆったりとした藍碧色のズボン。
手を動かしてみると、同時に包帯もうにょりと蛇のように動いた。まるで生きているよう。
[未]「!!!」
目を大きく開いて驚く未来の耳に、ある声が入った。
[死]「やぁ。起きたか?」
その声は死神だった。さらに隣にはパンプキンちゃんもいた。ニコニコしている。
[未]「!?」
[死]「ああ、急なことに驚いたな。まぁいずれ慣れるさ。
君は今日からこの、おべけの館のおべけとして過ごしてもらう。君の名前は"ダン"だ。
役職は『イタズラおべけ』。能力(イタズラ)は『絞首』と言ったところか。」
死神は優しい声でそう告げた。
そうして未来は、ダン(ミイラ)としておべけの館のおべけとして過ごすことになった。
さらに、パンプキンちゃんは初の仕事を終えたのだ。
[カボ]「プキン~!!作戦上手くいったじゃないか~!!すげぇじゃん!これからも一緒に頑張っていこうな!!」
[パ]「えへへへ…。カボチャーのおかげだよ~。
また、おべけ勧誘しようね!!」
9話終わり。ご愛読いただき、誠にありがとうございました。
また次回のお話で。
作・絵 天乃 つくる Hzk(ヘルツク)