【おべけの館】4話その3
どこからか、ヴァンビちゃんの名曲『九結記』が生声で聞こえてきた。その声はまるでヴァンビちゃんそのもの。玖太郎の耳を貫き、部屋中に轟いた。
えっ…?ヴァンビ…ちゃんさん?
麗しい歌声はだんだんこちらへ近づいてくる。
歌声が目の前にきたころ、いきなりヘンテコな格好をした道化師3兄弟が現れた。
そして、なんとヴァンビちゃんと思われた歌声はクロムから!?!?
技術力の高いクラウンのクロムには声真似や歌うことができる。
さらに曲に合わせて、ビスマとテルルが大道芸を行う。
不思議とそれを見ていると笑いが込み上げてくる。
[玖]「あははっ。はははははぁ!!!あ"はは!ひひひ!!」
自然と笑顔になってしまい、笑いだしてしまい、大爆笑に変わる。
止まらない。どうして?悲しいはずなのになぜか笑いが止まらない。なんで?
3兄弟の能力(イタズラ)『道化師』のせいだった。その能力(イタズラ)は人を笑い死にしてしまうもの。
みんな笑顔で死ねれば、楽しいじゃん…。
怖い思いをして死んだ3人のそんな考えだった。
そうして目が覚めた玖太郎。
なんと自分はバンパイアの格好をしていた。
驚く玖太郎の目の前には黒フードの死神らしき者と道化師3兄弟が立っていた。
[死]「今日から君にここ、おべけの館のおべけとして過ごしてもらう。役職は『イタズラおべけ』。能力(イタズラ)は『全吸血』と言ったところか。」
玖太郎は、キュー太(バンパイア)としておべけの館の者となった。
「っていうことがあったんでごさるよ…。」
キュー太は話し終わり、ため息をついた。
[タ]「そうだったんだね。僕もあのニュースを見た時は驚いたよ。」
ターニップくんはうんうんと共感する。
[キ]「いやぁ~聴いてくれてありがとうでござる。なんかスッキリしたでござる。」
少し明るい声色になったキュー太。
[タ]「なんか、ヴァンビちゃんの声が恋しいね。」
ターニップくんがボソッとそんなことを。
[キ]「ああ、そうでござるな。
けどクロム殿が前に、『ヴァンビちゃんの声が恋しくなったらいつでも俺のとこに来いよ。完璧な声真似で歌ってやるよ。』と言われたんでござる。
確かに姫様本人ではないが、凄く似ていて。まるでライブの時を思い出せて、亡くなってしまったことを忘れていられるんでござる。」
[タ]「そうなの。クロムって凄いな。」
そして、ターニップくんはキュー太と雑談をしながら、アキに頼まれたことを済ませる。
その後「またね。」とキュー太の部屋から出た。
アキに知らせると。
[ア]「ターニップさんありがとうございます!キュー太さんと趣味が合ったのですね。
恐縮ですが、これからキュー太さんのお部屋は任せてもよろしいでしょうか?」
[タ]「はい。いいですよ。」
アキからの要望に心良く応えるターニップくん。
生前の頃、真面目な性格で好きなこともろくに話せていなかったターニップくん。なんだか嬉しそう。
4話終わり。ご愛読いただき、誠にありがとうございました。
また次回のお話で。
作・絵 天乃 つくる Hzk(ヘルツク)
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