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【おべけの館】2話その2

ちょっと前にアキから聞いたこと。このおべけの館に来る者は"助けてと強く願った人間"だけと。

ということは、きっとこの3兄弟ももともとは生きていた人だと。

「生前のことが気になるなぁ~…。」と思った。

[パ]「ねぇ、カボチャー?このおべけたちの生前の事って知ってるの?」

[カボ]「ああ。知ってるぜ。教えてやろーか?」

コクっと頷くパンプキンちゃん。すると。

[ク]「いやいや!そんなん恥ずかしい!蕪ババアに怒られた悪夢が甦る!!」

あわててカボチャーの口を抑えようとするクロム。

[カブ]「いーや、教えてやりなさい。後でまた、みっっっちり叱ってやるわ。」

相変わらず何故かギスギスなクロムとカブーナ。

ビスマとテルルは、仕方ないなと言わんばかりの表情。

そして、カボチャーが口を開く。


「これはちょっと数年前の話だ。」



本日のお客様

・加賀 あかね 様 16歳

・加賀 わかば 様 15歳

・加賀 たくみ 様 14歳


「わかばおっはよー!」

早朝の学校、中等部の下駄箱で通りすがりの友達がわかばへハイタッチを勧めながら挨拶をしてきた。

[わ]「おはよ~。」

わかばはやわらかい口調でキレの良いハイタッチを返した。

次男のわかばは、クラスみんなからの人気者。一見ぼんやりな性格に見えるが、実は毒舌家というギャップに人気があるらしい。

友達と点数を競ったり、スポーツの強さを競ったりとゲーム感覚な対決をすることが好きな少年。

しかしそんな楽しい学校生活だが、実は悩みが兄弟内であった。


一方長男のあかねは、お喋りをすることが好きで、弟2人のことが大好きなお兄ちゃん。

だが母親が自分のことを生んだ後、離婚をしてしまっている。その後別の男性と再婚後、わかばとたくみを授かった。

それで何か弟たちと距離が遠いなとモヤモヤもありつつ日常を過ごす。

[あ]「なーな!俺、スーパーミリオブラザーズの裏技見つけちゃったんだけど~!最初のな~○○を~××すると…」

「あーあー分かった分かった俺ら次、移動教室だから。んじゃ。」

学校の高等部ではお喋り好きなのが裏目に出てしまい、みんなからはうざがられて無視されてしまう。誰も話を聞いてくれない。

唯一会話をしてくれるのはわかばとたくみだけ。2人の前だけでもかっこいいお兄ちゃんでいたい。


そして三男たくみは、兄2人のことが大好きなちょっと臆病な性格。生まれつき片目に盲目の障害を患っていた。

中等部の子からは障害の事でいじめられていた。

「はははっこれも見えねーのかよっw」

「じゃあこれは?w」

[た]「いたっ!!足元は見えないんだよ!

わ~ん!!(泣)あか兄ぃー!!わか兄ぃー!!会いたいよぉ~!!(泣)」

「ははっあんな奴らお前の兄なわけねーだろw」

さらに、兄のあかねやわかばのことでもいじめられていた。

「あかね先輩とはお前全然似てねーじゃんw先輩は部活の大会で優勝してんだぞ?wこんなびくびくした奴が弟なわけねーだろw

あっそっか♪親がバツイチなんか♪ははっw」

「わかばなんてもってのほかだwクラスで人気者のわかばにこんな弟がwあーあわかばかわいそっw」

毎日放課後、旧校舎でそういじめられていた。兄ちゃんたちは、ぼくと兄弟なのが嫌なのかなぁ。


ダッダッダッダ!!

[あ]「たくみーーーー!!お兄ちゃん迎えに来たぞーーーー!!」

あかねが声を枯らして必死にたくみを探す。

「あっやべっ」

いじめっ子は走って逃げていった。

[た]「あか兄ぃ~!!会いたかったよ~!!」

踏みつけられたであろう後がついたYシャツ。上靴は片方無くなっているボロボロのたくみを抱擁するあかね。

[あ]「頑張ったなぁ…1人で…よく頑張った。お兄ちゃんと帰ろうなぁ。」


一方わかばは友達と雑談をしながら帰り、友達の家で勉強中。

あかねやたくみがいじめられている事は知っている。

だが、クラスの子からいろいろ誘われてしまいそっちで手がいっぱいいっぱいで、たくみのもとには行けない。

門限もあり、家に帰って友達とオンラインでゲームをする。

その時あかねとたくみは楽しそうに勉強やゲームを教えて合ったりとお話し中。

そんなこんなで、最近あかねとたくみと遊んでいないなと毎度思ってしまう。

2人と距離が遠いな。避けられてるかな。

けど、友達との誘いは断れない。どうしよ。


「無視される毎日。弟たちとは距離が遠い感じがする…。わかばは昔みたいに遊んでくれないし、たくみはいじめ。どうしたら良いんだよ。"助けて"欲しいよ。」


「あかねとたくみは僕のこと嫌いじゃないかな。なんか避けられてる気がして…。一緒に遊びたいけど、友達にも嫌われたくない。どうしよ…。誰か"助けて"。」


「いつも障害の事でいじめられるなんて嫌だ…。兄ちゃんたちは、ぼくのこと嫌いなのかな…。ぼくが臆病じゃなければ…。どうしたら良いの?誰か"助けて"欲しい。」


3人とも兄弟間での距離感が複雑だった。


『また、昔みたいに3人で楽しくゲームしたいなぁ。』


3人とも同じことを思っていた。

2話その2はここまでです。長文ご愛読いただきありがとうございました。また、次のお話で。

作・絵 天乃 つくる Hzk(ヘルツク)


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