【おべけの館】1話その2
そんな憂鬱な日々の中、空に"大きく不思議な光を放つ満月"が浮かぶある夜。
南美は寝る前に窓から外を眺め、独り言を。
[南]「どうして、どうして、なにもかもやらかしちゃうんだろ。なんで怒られちゃうんだろ。どうして…。誰か…"助けて"…。」
すると近所の大きな山の中に大きな館らしきものがあることに気づく。ちょうど月光に照らされてすぐに目に入った。
南美は「なにあれ?」と一瞬疑問が湧いたが、「行ってみたい!」という思いが強く出てきた。こっそり窓から出て、館へ向かう。
一方その頃
マンションの屋上に立つ照。
「僕は真面目なんかじゃないっ…。もう…僕を、頼らないで…。まだ、やりきれてないタスクが残ってるけど、もう、何もしたくない…。誰も本当の僕を知らない。誰も"助けて"くれなかったなぁ…」
そう呟いて、飛び降りようとした瞬間。
近くの森の中にポツンと1つの館らしきものが視界に入った。さらに、そこへ向かう南美の姿も見えた。
照は無意識に体が勝手に階段を下り、マンションの外にでて、こっそり南美の後をついて行っていた。
「行ってみたい。」
無意識にそんなことを思っていた。
館らしきものの近くへ行くと不思議な雰囲気が漂っていた。
廃館のようだ。月光が館全体を包むように照っていた。まるでスポットライト。
しかし、ただの館には見えない。
それもそのはず。館の窓、扉、壁、全てをぶち破って、至るところからかぼちゃや蕪が生えていたからだ。
さらに、かぼちゃのツルや蕪の葉は巨木のように太く、ヤマタノオロチのような偉容な、迫力のある生え方をしていた。まるで生きているよう。
いかにも不気味で危ない雰囲気を感じる。
だが、2人は吸い込まれるように足がふらつき、館の中へよろよろとした足つきで入った。
意識はすでに朦朧としている。
館の中は薄暗く、辛うじて月光で少し明るいぐらいだ。かぼちゃや蕪も中へ中へと鬱蒼に生えていた。
ぎしぃっ…ぎしぃっ…
年季の入った木の板で作られた床は、一歩一歩踏み込む度に軋む音がする。
2人は館の奥へ奥へと進んでいく。
すると…。
目の前にぶわぁっと赤紫色の何かが視界を覆った。なにが起きているのか把握しきれず、必死に踠こうも体が思うように動かない。
意識はだんだんと薄れていく。
ーーーープツンッーーーー……
完全に意識が途切れた。
何が起きたのか。
これがおべけの館のサービス、"アンラクシ"でございます。
本日のおべけは、メイドの「アキ」。そして、シスターの「サクラ」。
南美はアキに。照はサクラに。それぞれ彼女たちに"能力"(イタズラ)「束縛」をされました。
Trick or Treat.
その能力は、ターゲットに向かい大きなコスモスの花を広げ、包み縛うというもの。
なぜこんなことをしたのか。それは。
彼女らはこの館の館長、死神の信者(館長主義)であり、館長の許可もなく無断で侵入し、入館料(お菓子)も払わずなんてする子は悪い子と判断したからだ。
そして、南美と照は、アキとサクラによって喰べられました。
さらに、本館のサービスはこれだけではありません。死後、お客様がお客様らしく過ごすことのできる場をご提供いたします。
1話その2はここまでです。長文ご愛読いただきありがとうございました。また、次のお話で。
絵・作 Hzk(ヘルツク)〔天乃 つくる〕