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得意なことが無ければ,特異なことを

現代は,明るく,強い専門性を持っていないと,成功者の席を確保するのは難しい時代です.
SNSに上げる適切な「何か」...を持たない人は,その業界にハマる「何か」を持たない人は,優位な状況に有る人から,認めて頂かないと,世間で評価されるのは難しいでしょう.
そのような「持たざる」人たちは,世間の話題に乗っかったウマい表現でバズった後に宣伝するしか無いのでしょうか?
私も,かつてはそう思っていました. しかし,今は違います.
得意なこと(専門性)がなければ,特異なこと(ユニーク)を誇りを持って,突き詰めれば良い.
それを,私はこれから紹介するコンテンツから学びました.

そのコンテンツ, #まいにちキャノンボーラー とは,
twitterで公開されている,1~4コマのゆる漫画で,名前の通り毎日更新されています.
「キャノン・ボーラー」とは,漫画『キン肉マン』のキャラで,
キン肉マンビッグボディチームの副将として,後にキン肉マンチームを大いに苦しめる「マンモスマン」と引き分ける(両者KO)活躍をした超人です.

しかし,この引き分けは対戦チームのリーダー,キン肉マンスーパーフェニックスにより指示された,マンモスマンの芝居であり,単なる引き立て役であった...というのが本編の筋書きです.
彼の登場回数はわずか3ページ,8コマしかありません.要は「噛ませ犬」ってヤツですね.
2017年1月1日から,そんなネタキャラ「キャノン・ボーラー」ネタひとすじに延々と更新し続けている,謎深きコンテンツ.
それが#まいにちキャノンボーラー です.

そんな #まいにちキャノンボーラー は,頻繁に(ニセの)最終回を行います.
大体,5回に1回くらいは最終回です.

その(多分ニセの)最終回を見る度,私は軽く不安になります.
只でさえ冗談めいた異形のコンテンツですし,大人気企画とは言い難い.
いつ作者が飽きて,ぶん投げてしまうか解りません. 私はそれが怖い...
作者は屈託なく「最終回」ネタを乱発しますが,数少ない熱烈な「ファン」は結構ひやひやしてるのです(笑)

芸風とも言える特徴は,「ネタの使い回し」です.
そんなに丁寧に描いたような絵には見え無いのに,とにかく使い回しが多い... 時には顔部分に切り貼りをしてまで...
どう考えても,切り貼るよりチャッチャッと描いた方が早そうですが,これはおそらく,抜ける手は極限まで抜く,と言う(逆)職人魂なのでしょう(笑)

ネタが使い回される為,キャノン・ボーラーは,10回に1回は,ビッグ・ザ・武道に投げられ,20回に1回は逃走中にすごいジャンプ力で壁を背面飛びした後に着地失敗し,30回に1回は金八先生オマージュの「キャノぱっつぁん」として登場します.

くだらない! くだらない! くだらない! のです.
肉ヲタ向けの一発ネタ,出オチ...と解釈するのが,正しい批評でしょう.
(ザ・マリーの知名度なんて肉ヲタでも怪しいぞ...)

時事ネタは有りますが,社会を射抜くような描写は皆無ですし...

今風な可愛い女のコが出てくる訳でもありませんし...

ぬいぐるみ兄弟のようにキャッチーな愛らしさも無いですし...

淡々と,ネットの辺境の荒野で,ネタを磨き続けています.

しかし,その飄々とした,ネタ更新の活動は,答えの出ない議論を仕掛けてはバズヘイトを稼ぐようなtwitter界では,貴重な存在です.

元ネタを知らなければ笑えない...のは,確かに難点ですが,故にニッチな破壊力は抜群と言えるでしょう.

(作者の本気の絵は上手いかもですが)絵のクオリティだって,正直低い.
しかし,この一見くだらないことを突き詰める姿に,私は作者のすごい根性を感じます.

なぜ私がそんなに肩入れするのか,と言うと,こういう,くだらな~いネタを私が大好きだ,ということが1つ.
そして,もう1つは,さして得意なことが無い人間が,それでも,これなら世界に通じるかもと,仮説を立て,特異なことをし続け,独自性を出してる姿が,私と重なるからです.

私にはさしたる専門性が有りません. だからユニークさで負けたくない.
昔からずっと,そう思い,過ごしてきました.
世界で1番になれる「何か」は有りませんし,これからも手に入れられる事は無いでしょう.奇妙で,奇抜な事をして行くしか,私の道は有りません.

日本の業界で1番になれなくても,世界中でただ1人しかやってないような,ユニークな(バカな)ことをひたすら続け,それを世界に宣言し続ける...
それは「覚悟」さえ有れば,誰にでも可能な道では無いでしょうか.

少し古びた言葉で言えば,ナンバー1よりオンリー1というヤツです.
愚直で,孤独で,地道な努力を続けるこの作者は,まさに「オンリー1」の体現者だと,私は思います.

現代は,共感が集まる,解りやすいコンテンツを繰り出すネット陽キャに人気が集中する時代です.それ自体は仕方がありません.そう云う時代です.
そうは出来ない人でも,ネットの周縁で,世間の耳目を集めるニュースに上手い悪口をタイミング良く乗せれば,自分のプロダクトや活動を宣伝するチャンスを貰えるかもしれません.

しかし,本来,ネットは広大です.そんな,自分がしなくても,他人がやるような事に,あなたが,私が,参加する必要は無いと思います.

青過ぎて魚も住めないようなブルーオーシャンかもしれませんが,そこで極々一部の読者を熱狂させる,彼の作品を,まいにち読む度に,
バカ(で自分のやることに)正直に生きてるのは,私一人では無いのだな,と,勝手なシンパシーを感じ,勇気を貰っています.

「いいね」の数を増やそうとすればするほど,コンテンツのエッジは丸く削られ,相手の中に既に存在してる琴線を探さねばなりません.
みんなの願いを叶える...それも尊い事です.
が,それで5万「いいね」を得たとしても,そのやり方では,明日に価値を持ち越せません.それは5万「いいね」は焼き直しだからです.

自分にしか,この世界から掘り出せない価値を,現実に提示すること.

それをする自分で有りたいし,そう云う人を応援する自分で有りたい.
私は,そう思います.
得意なことがなければ,特異なことを,やり続ければいい.
私は,そう思います.


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