ティラノゲームフェス2023お薦め作品紹介②未来は幸せ?それとも…なSF
引き続き「ティラノゲームフェス2023」参加作品の中からお薦めできる作品を紹介します!
未来は幸せ?それとも…なSF
と、それぞれ3作~4作ずつ選び5日に渡り紹介します!
今回は第2回、
「未来は幸せ?それとも…なSF」
になります!ユートピアでもディストピアでも、そこで生まれる物語は、時空を超えて今の私たちにも届く。そんな作品を紹介します。
今回の話とは別に、今回紹介する作品に限らずやはり時代性として「AI」をテーマにした作品が多いのは感じました。また、全体にネタバレをしたくない!という作品が多かったので評はあっさり目になっています。
1:未来都市の氾濫
ディストピアSF大好きなので遊ばせてもらったのですが、これ絶品なSFサスペンスなんですよ!ネタバレできないんでぜひ遊んでください!!
「おもしれーーー!」って思いながら物語を進めていました。想像以上に面白かったという意味では今年一番かもしれません。
「SF・特にちょっと昔のSFが好き」な人は絶対遊んだほうがいいです。
そして今作はSF的な設定もさることながらそれ以上に「物語」としての強度、総合的な質がとにかく高いってことは伝えておきたいです…!!グラフィック・BGM・ストーリー・演出・語り口全部ほんとによくて、それらが相まって絶品なんです!始めたらなかなかやめられなくなる作品です!読書やゲームを始めて、今日はこの章まで読もう・遊ぼう…と思っていたのについつい次の章、いやもう一章だけ、となってしまうことがあると思います。きっと今作も多くの人にとってそのような作品になるのではないでしょうか。
今作は実況をしています!
2:「はい」か「YES」で答えられる質問だけ
こちらもディストピアSF作品ですが、今作はその語り口に「よさ」があります。
今作の語り口には爽やかささえ感じる明るさがあります。その語り口と、どう考えてもおかしなことが起きているディストピアっぷり、しかもその事態が物語中でどう扱われていくか……?そしてそんなひどい事態がこんな風に扱われるということは……??と思いを巡らせてしまう一連の流れには身震いするような感覚を覚えます。
そして、「実はこの恐ろしさ、嫌な感じって今自分がいるこの社会にもあるものなのでは?」と、自分の足元をぐらつかせるような寓話性とリアリティが込められている、ディストピアものらしいディストピアもの作品です。
会社をモチーフとしているので、ブラック企業に通ずるものは感じるでしょう。
また、物語中で起きている「事件」が、ある意味本当に怖いです…。これはぜひ皆様で遊んでいただきたい。不気味な赤と青緑?で彩られた世界の色彩も本当にぞわっときます。
あと、私は朝の風景が怖かったです……。なんだよあれ……。どういうことなんだよあれ……。あの光景はまさに「1984年」から続くようなディストピアの神髄だと感じました。
こちらも実況をしています!
3:欠番9号
謎の研究所のアルバイトで、少し変わった存在であるエテルノと会話を重ねていくうちに、少しずつエテルノのこと、エテルノにあったことを知っていくというノベルゲームです。今作もやはりネタバレをとにかく最小限にしたい作品ですのでとにかくプレイしていただきたいのですが会話の内容、そして起きた出来事がとにかく印象深い作品です。プレイした時はエンディングで「あぁ…」と思わず一息吐くような切なさを感じましたし、エテルノという存在のことを今でもたまに考えることがあります。
「名前を入力する」というゲームでとてもよくある行動を使った演出や、真っ白な部屋の風景・BGMなど全てがなんとも言えない苦味と慕情、そして一筋の光を感じさせてくれます。本作、感情に訴えてくるような演出が本当にうまいのでぜひじっくりと味わっていただきたいです。
本当に小さい、ミニマルなシチュエーションの中で心を刺してくる鋭さのある作品です。サムネイルのエテルノの姿から想像できるようにホラー的な展開もあるのですが、そのホラー描写が恐ろしさ以上に切なさ、悲しさ、そして愛おしさを感じさせる、不思議さもありながら心に残る作品です。プレイした人と語り合ってみたい…!
4:Dear Journey:Happy Birth Day
遥か未来、どこかの施設でお手伝いロボットのシェリーがお世話する少女「カナイ」のために誕生日プレゼントを作る探索アドベンチャーです。探索の過程でこの施設の正体、世界の現状、そしてシェリーとカナイの関係性がわかっていきます。
今作を遊んでいる間、ずっと頬がほころんでいたように感じます。オープニングのシェリーの姿、そして最高のBGMの段階で顔がほころびました。あのBGMフリーBGMだったら使いたい…!
ドット絵の美しさと優しさ、細やかに表情を変え動くキャラクターの圧倒的だけどあざとくないかわいらしさ、BGMの優しい空気、そして誕生日プレゼントを探すというそのストーリー自体の持つ暖かさ、優しさが遊ぶたびに体に沁みわたっていくことを覚えています。いわゆる「エモい」という言葉が最もピッタリくる作品でした。
「変わってしまった世界」とあらすじにあるように、この物語の通底音として深刻な事態が起きているのですが、それでも今作は暖かく、優しく、ポジティブなものであり続けます。
その暖かさを体現する今作の白眉はストーリーを語る際の言葉選びです。シェリーのちょっとした言葉、数文字からこの世界の姿、そしてシェリーや周囲にいる人の優しさや確かなつながりが浮き上がってくる、それを実現する文章力があまりに見事でした。ある七文字の、その選び方の完璧さに思わずうなったのを覚えています。ぜひみなさんもこの暖かさを共有してほしいです。
今作も実況をしています!