
木瓜の花
お散歩をしていたら、お庭に木瓜をそのまま植え付けているお家を発見いたしました。
木瓜と言えば盆栽のイメージが強くて、はじめはこの花が木瓜だとはわかりませんでした。
有吉佐和子さんの著書に「木瓜の花」というのがあります。
これは三部作で成り立っており、芝桜(上下)そして木瓜の花と続くストーリーです。
真面目で一本気な正子と、お金には目がないくせに信仰心が深く親孝行な蔦代との関係が書いてあります。
正子と蔦代は同じ置屋にいる芸妓さんでした。
大物ばかりがパトロンに付く正子と違い、
成金ばかりがパトロンになる蔦代。
全く真逆の二人が何故か縁が切れないという奇妙な物語です。
そして、ラストの木瓜の花は自分よりも遥かに年下の男性に恋をしてしまう正子と、
言いなりになる優しい年下の男性を養子にする蔦代。
正子の想い人は事故で亡くなってしまいます。
そして、蔦代はその年下の男性との穏やかな老後を過ごすお話です。
これは何度も舞台化されているので知っている方も多いと思います。
ラストを読み終わり、なぜ正直者で一本気な正子が一人ぼっちになり、
狡猾でお金に汚い蔦代が幸せになるのか不思議でした。
そしてその謎が今日わかりました。
あの木瓜の花を見てからのことです。
木瓜の花は、枯れ木にポンと真っ赤な花が咲きます。
年を取った女性にも、そんなことはたくさん起きるということを有吉佐和子は伝えたかったのだと。
正子は一本気過ぎて妾ということに耐えられませんでした。
そのくせ、家庭に憧れるのです。欲しかった子どもは遂に授からず、芸者として家庭のある男性としか知り合えませんでした。
翻って蔦代は、
戦地に赴く若い男性に年齢を大幅に偽り、
最後の夜に花を咲かせます。
その中の一人が蔦代のもとに帰ってきた男性でした。
これ、今の婚活にも言えることですが、正子は相手に欠点があると縁を切ってしまうのです。
顧みて蔦代は、来るもの拒まず、去るもの追わずでした。
実際に正子や蔦代と同じような年齢になってみると、一人ぼっちでいることが寂しく感じるのです。
蔦代の養子の男性はお金目当てではなく、本当に蔦代を好きで一緒にいる人でした。
なにが真実なのか、本当はなにが正しいのか、
主人公の名前を「正子」としたところも、作者の意図があったように思えてなりません。
