P.V.L.日記 父子入院26日目 装具
5月27日(金)
人が歩くという動作は実に繊細なものである。インソールを入れて踵の接地面を増やしただけで姿勢が安定し、てくてくと進む歩数が増した。息子は歩きやすさを覚えたのか、トイレで全裸になって用を足した後に脱走。ナースセンターの看護師さんに手を振り、お尻も左右に振りながら器用に病室に戻っていった。きっと見て欲しかったのだろう。
歩行装具にはいくつか種類がある。股間から踵までを補助する長下肢装具、膝下から下を支える短下装具、靴の形をした靴型装具、靴の左右に支柱が着いたダブルクレンザック等である。息子は、プラスチック製の短下装具で4本のベルトで固定している。今履いているのが2代目。多種に選択肢があるわけではないが、最近は色や柄、ベルトの素材、ステッチなどを自由に組み合わせることができ、1代目は外側がオレンジのチェック柄、内側とナイロン素材のベルトがイエローだった。2代目は外側と内側がピンク、ベルトが濃紺の革素材でピンクのステッチが入っている。どちらも息子が選んだ。
靴は装具を履いた状態でも履けるサイズにする必要があるので当初はニューバランスのキッズモデルから15〜16サイズのスニーカーを選んでいたが、ファッショナブルなことと引き換えにつま先が余ってしまい、歩くときに若干の引っかかりが生まれてしまっていた。そこで半年ほど前に「アルクック」という装具専用の歩行靴に履き替えてからはフィット感が増し足の運びがよくなった。(ただ少し値が張る・・・)福祉用品は今後ますますインクルーシブなアパレル化へと進むだろう。先日も仕事の知り合いが「SOLIT」というオールインクルーシブ・ファッションを起ち上げ、好みと身体に合わせて、サイズ・仕様・丈など1600通り以上の組み合わせの中から、服をカスタマイズできるサービスを開始した。同時期に入院している方から紹介いただいた保護帽も日常使いできそうなデザインだ。行政の補助額に8万円を足して購入した座位保持バギー「クリケット」の機能性とデザイン性も優れていたがデンマークブランドであった。(海外製品はどうしても補助額を超過してしまう)
リハビリが終わり日課である売店でのゼリー購入に向かった後、玄関口のベンチで食す。このゼリーは入院当初は欠品していたが、昨年も日課にしていたため息子のリクエストで復活。さすがに毎日買わないわけにはいかない。ゼリーの袋を自分でゴミを捨てると言い張る息子。その背中を支えて着いていこうとすると、待っていろと釘を刺す。ゴミ箱まで5メートルはあるだろうか。見事に往復して私の両手に飛びつく顔もしたり顔。いいぞ、その勢いだ。と言いたいところだが、直後の買い出しでは全く歩く意欲がでず、私は肩車でスーパーと病院を往復するのだった。(続く)
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