見出し画像

61日目 中津から始めよう

突然ステージに登った5歳児が、その直前に一瞬私のほうを見て「いくぜ」という顔をしたのを見逃さなかった。父は「いけ」とうなずいた。フリーペーパーイベントの3日目。大阪のフリーペーパー専門店の大先輩「はっち」さんの8周年イベントに店主の恭子さんがゲスト登壇した。場所は中津で、かつて私が住んでいたマンションのすぐ近くである。数年ぶりに降りた地下鉄中津駅は改装され綺麗になり、全く別の顔をしていた。恭子さんと友達と一緒に行った阪急中津下の激シブ居酒屋「いこい」は健在だし、その後に行った屋台もこの辺りだが、高架下の再開発でピエロハーバーはなくなり、日本屈指のアンダーグランドな入り組んだ道は姿を消していた。

3部構成の8周年イベントの第2部に全国のフリーペーパー設置者として登壇した恭子さん。Tシャツも只本屋島根浜田店オリジナルのものを着込んでやる気だ。他のゲストは偶然にも京都から2店舗と島根から1店舗。神戸在住であるが只本屋島根浜田店なので島根も実質2店舗だ。島根の大森町から車を6時間飛ばしてやってきた方は、阪神ファンで日本シリーズ最終戦の行方が気になってしかたないようだった。

小さなライブハウスでのイベントだったせいか、照明が舞台にしか当たっておらず、それに引っ張られたのかゲストの口調もちょっと暗い雰囲気だった。恭子さんはそのなかでも頑張って明るい感じを出そうとしていた。そんなとき、とうわがおもむろに最前列の席に独りで移動した。恭子さんが「電車もあんまり走ってない地域なんです」と店舗紹介をすると「さんいんちゅうおうほんせん、あるやん!」とちゃやちゃいれ。「ワーゲンで地域を回っています」と車の紹介をすると「めっちゃふるいよねー」とつっこむ。なかなか良い具合に場を盛り上げだしたので、しばらく放置してみたところ、ついに5歳児は決行したのだった。ステージ乱入。恭子さんのマイクを奪おうと必死ですがる。「もっとやれ、予定調和をかきみだすのだ」と内心で笑いのとまらない私。

ほどよく乱れたところで、私に拉致されステージを下ろされた息子はむちゃくちゃ不満そうだったが、記念撮影のときには再びステージに登り、ちゃっかりどセンターでピースサインを決めていた。

阪神がほぼ日本一になりそうだというので、混雑と狂乱に巻き込まれないよう、急いで神戸に帰った。壇上で暴走したとうわは力尽きてバギーで寝てしまった。フリーペーパーイベント3連発、おつかれさん。

20231105

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?