P.V.L日記 父子入院9日目 童心
PVL(脳室周囲白質軟化症)から独歩をめざしリハビリ入院、
3歳児と父親が入院という名の合宿生活。
OTが11時30分から。PTが15時5分から。合間に立位台で40分。
昼食時にST(言語聴覚士)さんに咀嚼を診てもらう。
三食介助、入浴、洗濯、同室のお友達とカード遊び、プラレール。
5月10日(火)
連休が明けると、毎日のリハビリの予定表が前日に配布されるようになった。病室に看護師さんが届けてくれる。9時にPTがあって、その後16時20分までOTを待つ日もあればPTもOTも午前中で全部終わることもある。この暮らしに慣れてきたのか、その予定表を見て明日の行動を計画するようになってきた。2時間は空くのでここで洗濯だな、とか、午後にリハビリが集中しているので間髪入れずに入浴と晩ご飯だな、とか、朝8時近くまで寝ていても問題ないな、とかだ。だが、ちょっと気を抜いていると屋上に干した洗濯物を取り込むのを忘れてしまった。もう19時だ。病院の屋上は17:30〜6:30まで施錠される。失態である。パンツが足りない。
息子3歳は、洗濯物も私独りでは取りに行かせてくれない。洗濯機に入れるのも、屋上に干しに行くのも、食事の配膳を取りに行くのも、返却するのにもついてくる。歩けないので、もちろん抱っこ or 片手を引いてのつかまり立ちである。転ぶと危険なので保護帽も被せる。上手に気持ちを乗せないと歩行器も使ってくれない。もちろん、歩く意欲が旺盛なことは嬉しいことだが、24時間ほぼ半径5メートル以内にいる生活が10日を超えてくると私も妙なテンションになってきた。ストローを顔に刺す真似をして、私を吸い付くそうとする息子に対して最初は抵抗していたが、息子の顔を吸い返すというリアクションに転じた。もう吸引合戦である。3歳児との共同生活は45歳も3歳に戻るのが最良の関係構築策である。
今日のPTでは体の筋力をチェックしつつ、セラピストもやや攻めの施術を実力行使。悶絶する姿に少しだけ切なくなるが、よく耐えているなと思う。どうやら装具をずっと着けている影響もあり、ふくらはぎに筋肉がついていないようだ。つま先で踏ん張り、上に引き上げたり伸びようとする力がまだまだ弱い。股関節も固い。そのため、お尻が下がりくの字になってしまう。セラピストが膝と太もものあたりを手で固定したまま、ボールキャッチをし、両手でつかんだボールを頭の上まで上げて投げるという動作で上に伸ばす力の使い方を訓練した。これは自宅でも出来そうな訓練だ。
頭の上で拍手するというサッカーのサポーター(ゴール裏住民)の基本姿勢がストレッチに役立つことは以前にも書いたが、ここでもその姿勢が効果を発揮した。セレッソ大阪のアンセムを歌いながら頭の上で拍手、選手名を連呼しながら頭の上で拍手、選手名を叫びながら上体キープでシュートの動作、これが抜群にいい。息子は左利きなので選手名の選択は「坂元」である。「さかもとシュート!」から「でもさーさかもとべるぎーいっちゃったんだよ」までが一連のお約束である。ちなみに右足のときは「清武」になる。言うまでもないが、私も息子の正面で全く同じ動作を息子より「張り切って」やっている。
昼食の時間には依頼していたST(言語聴覚士による診断)があった。どうも、葉物をかみ切れず飲み込めない。飲み込むときに鳥の雛のように上を向くことも気になっていた。心配していたが、咀嚼は上手に出来ているらしい。飲み込めないからといって事前に柔らかく磨り潰すよりも、小さく切っておいて自分で口の中で磨り潰すことを覚えた方がよいという指示だった。スコップ型スプーンで発掘風に食べさせていることや、海苔巻きにするときにお寿司屋さんと客というミニコントになるのをみて言語聴覚士の方が、こんな楽しいお食事いいですねと笑っていた。「軍艦巻きいっちょ、へいお待ち!」「ぱくっ」「次なにしましょ!」「えーとねー・・・いくら」やはり、3歳児との共同生活は45歳も3歳に戻るのが最良の関係構築策である。若い頃、演劇をやっていたことがこんなところで活きるなんて。いやむしろ今の方が演劇的な毎日かも知れない。(続く)
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