高尾洋之「患者+医師だからこそ見えた デジタル医療 現在の実力と未来」の感想
東京慈恵会医科大学の高尾洋之医師が書れた、「患者+医師だからこそ見えた デジタル医療 現在の実力と未来」を読みました。読んだ動機ですが、特にデジタル医療に関心があったわけではなく、ただ同じ病気にかかった著者の活動に関心があったからです。
主な内容
本の主な内容は以下のとおりです。①体が自由に動かせない方でも使える生活向上機器の紹介、具体的にはスマートスピーカーやipadの機能などです。そして②東京慈恵会医科大学が関わっていた、ICTを用いた医療向上ツールの紹介、例えば医師間のコミュニケーションツールや医療スタッフの勤怠管理システムです。
2つの内容それぞれが異なる読者に役立つ情報だと思いました。具体的には、①生活向上機器の紹介は、体が自由に動かせない患者(目は動く、口は動く方など)の家族に役立つと思います。そして②医療向上ツールの紹介は、病院の運営などにかかわるスタッフに役立つと思います。ツール名や共同開発に関わった会社の名前も書いているので、詳細情報を調べたり、ツール利用の相談をすることも可能だと思います。あと②医療向上ツールの紹介は、デジタル医療の開発に関わる人にも役立つかもと思いました。
本のタイトルに「患者+医師だからこそ見えた」とあります。まさにそのとおりで②医療向上ツールの紹介は、著者が大病を患う前の医師のときの研究活動をもとに書かれています。そして①生活向上機器の紹介は、著者が患者になった後に機器を利用したときの経験をもとに書かれています。
感想
デジタル医療にビジネスの香りを感じました。
本に書かれていますが、日本の医療市場の規模は世界的に見ても大きいそうです。それは日本には国民皆保険制度があり、約1.2億の国民が医療を受ける基盤となっているからです。具体的な数値としては例えば、2018年度の国の医療費全体は約43兆円だそうです。
それほどの大きな規模を持つ日本の医療市場でビジネスをしたい会社は国内外にあると思います。それらの会社に向けて医療データ提供ビジネスとプラットフォームビジネスができれば良いなと思いました。
前者の医療データ提供ビジネスについてですが、医療データを欲しい企業に売る、またはそれらデータを利用できるインフラを提供し利用料を得るビジネスができれば良いと思いました。医療機器開発には大量のデータが必要です。特に近年大きく発展したAIに関わる技術の一種の機械学習を用いた開発ではなおさらです。(機械学習は大量のデータから何らかの問題を解くソフトウェアを合成する技術です。)日本人を診療する機器は日本人のデータを使って作られるべし、または性能評価されるべしという考えが広がればよりデータ提供ビジネスが上手く進むかと思います。日本の医療市場は世界的に見ても大きいそうなので、機器開発企業が嫌がりそうなそのようなルールを設定することも可能かもしれません。
後者のプラットフォームビジネスについてですが、患者が使うまたは医療関係者が使う医療プラットフォームへアプリを提供する企業からプラットフォーム利用料を取れれば良いと思いました。Android上のアプリに課金すると、androidを提供するgoogleにお金が入るのと似た仕組みです。例えば、患者の持つスマホ(プラットフォーム。lineみたいなものをイメージしてます)上で動く治療用アプリ(本では禁煙治療用アプリと糖尿病治療用アプリが触れられています)を開発する企業からその利用料を取れれば良いと思います。企業にとってのメリットは、プラットフォームが提供する医療情報管理APIが利用できアプリ開発のハードルが下がる、また普及しているプラットフォーム上のアプリを開発することで利用者数が上がる、ということが考えられます。
ユーザーにとっても、治療用アプリの使いやすさが上がると言う点で、医療プラットフォームはメリットがあると思います。医療のことは一つのプラットフォームにまとめてくれたほうが煩わしくないです。例えば、複数の治療用アプリに体の情報を別々に入力するなんてやりたくないですよね。
両者とも実現は困難かもしれませんが、なんせ日本の医療市場は世界的に見ても大きいわけですから、機器開発企業が嫌がりそうな仕組みも実現可能と思います。
デジタル医療ツールにはうまくお金を儲けてもらい、それらがデータの提供者(?)である患者や日本の医療費に還元される流れもできるといいなと思いました。(虫が良すぎますかね。。。)