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11月6日

「これいいですね。作品を広げてくださる。」

え…?

新曲「愛のネタバレ」がリリースされた際、
YouTubeで「愛のネタバレのネタバレ」の生配信を聞いているときの出来事だった。

何となく呟いた自分の考察が番組内で読み上げられ、それを尾崎さんが肯定してくれたのだ。

びっくりした。
今までこんなことなかったから。

それと同時に恐ろしいくらい嬉しかった。

ネタバレによると、どうやらMVの中の女性はシリアルキラーらしい。

淡々と自分の恋人を殺していく。
ただそこには切なさが見えた。

それが自分と重なった。

Twitterの考察のように、私は失恋するたびに自分の中で元彼を殺してきたのだ。

大好きだった。ずっと一緒にいたかった。私のことをもっと好きになってほしかった。でも、そうじゃないなら、殺すしかない。自分の中で。

楽曲『愛のネタバレ』に対する最初の印象は過去の恋愛と重ねた。

しかし、さらに自分の中で作品が広がる出来事が1ヶ月後に起こる。




2022年11月6日、この日は母親の誕生日ということもあり、地元に帰省をしていた。

朝、家族で出かけようとしているときだった。
母の携帯に1本の電話が入る。祖母からだった。

祖父の体調が悪いらしく、病院へ連れて行くという。

数時間後、また連絡があり、病院で診断を受けたところ異常はなく、無事に帰宅をしたという連絡だった。

夜になり家族で家に帰っている途中、また祖母から連絡があり、その内容に全身が凍りついた。

祖父が救急車で運ばれたのだ。

急いで病院へ駆けつけた。

祖母は私たちの顔を見るなり涙を流した。

処置室からICU(集中治療室)へ祖父が運ばれていった。
そのとき祖父が私たちに「おぉ、来たんだな。」というように手を挙げてくれた。

意識はあるようだ。

きっと大丈夫だよね。

そうやって自分に言い聞かせた。

医者の説明によると、祖父は心筋梗塞で倒れたようだ。


一旦、祖母と母親だけ病院に残り、入院の手続きをすることになった。

私と妹は家へ帰宅した。

検索フォームで「心筋梗塞」と打つと「心筋梗塞 急死」というワードが1番上に出てきた。

違う。おじいちゃんは大丈夫。
心筋梗塞から助かった事例を検索しよう。
そうやって祈った。
助かると信じていた。

数時間後妹とまた病院へ向かった。


「おじいちゃん、もうだめみたい。」

母親からの信じたくない言葉。

ICU(集中治療室)へ入り、皆でおじいちゃんに話しかけた。

祖母は「行かないで。嫌だ。」と祖父に触れた。

心電図はずっと0のままだ。

医師によると、聴覚は最後まで残るから、言葉は聞こえるという。

泣きながら「おじいちゃん、おじいちゃん、東京から帰省してきたよ」と話しかけた。

家族皆で必死に話しかけた。


そのときだった。

祖父が何かを話そうとしたのか、スゥッと大きく息を吸った。そのときに一瞬だけ心電図が大きく動いた。



そして亡くなった。

ICUに響き渡る0の心電図の痛い音と共に
医師、看護師が90度のお辞儀を祖父へ向けた。


そこからはあっという間に通夜、葬儀が終わった。

葬儀場から火葬場へ向かうバスの中で気持ちを落ち着かせようと『愛のネタバレ』を聴いて静かに涙を流した。


祖父がくれた沢山の愛を思い出す。

子供の頃地域の行事に参加しなかった私を可哀想だから、と公園に遊びに連れていってくれたこと。

中学時代反抗期の私を心配して毎日家に来てくれたこと。

高校受験で第一志望の高校に落ちたとき、私も泣いていないのに祖父が泣いて電話を切られたこと。


寂しいんだけど、悲しいんだけど、何故か祖父の大きな愛に包まれていたことを嬉しく感じた。


火葬場に着き、祖父と最後のお別れをした。
しっかりと顔を見て、「ありがとうございました」と言った。


脳裏であのフレーズが流れた。

『最後に見た時最後に見たと思ったそれだけで当たり前だけどいつも愛しかった』

『だから これでお別れ まるでネタ切れ
 
握りしめた手を振り払え』





火葬をしている間、別室で見ていた景色が何だか清々しく、綺麗だった。




その夜、私は東京へ帰った。

新幹線の中で祖父とのLINEのやりとりを見返す。

毎日スタンプで「おはよう」「おやすみ」のやりとりをしていた。

『泣きそうになる っていうか泣いてる』


ふとランダムでクリープハイプを流した。

聴いたことない楽曲のタイトルが携帯に表示された。

『燃えるごみの日』

今日、火葬だったから燃える、なのか?
いや、ごみじゃないぞ!おじいちゃんは。

とか1人で考えながら曲を聴いていく。

『誰かじゃない人と決めた 記念日を見つけてね』

さらに曲が進む。

『こんな日が来るなら もう幸せと言い切れるよ』

家族で祖父と祖母の金婚式を祝ったとき、祖父が「こんなに幸せな日はない」と涙を流しながら言ってくれたことを思い出す。


『そばに居なくてもわかるのは 君が生まれた初めての記念日があるから』

まさに祖父と母親のことを表現しているようだ。

まさかその日が命日にもなるなんて思わなかったけれど…。


『こんな日の先には なんでもない日々を重ねて
そばに居なくてもわかる程 笑っていてください』

祖父に「かっこよく生きてください」と言われたことを思い出した。


曲が終盤に差しかかる。

『もうどんな日の先にも 大切な日々を重ねて
 
そばに居なくてもわかる程

2人のおかえり 2人のただいま
 2人のおはよう  2人のおやすみ
 なんでもない日々に 重ねて』



祖父との毎日のLINEのやりとりを表示した画面に涙がポタポタと流れた。

なんでもない日々がこんなにも幸せなことだったんだな…。




2023年3月11日、3月12日。

私はまだ自分の中で殺す予定のない彼氏とアリーナツアー「本当なんてぶっ飛ばしてよ」@幕張メッセ国際展示場に2日間参戦した。

初めてのクリープハイプのライブ。

しかも1日目は1列目だった。

ずっと人生を寄り添ってくれたクリープハイプを目の前にしたとき、もの凄い感情が体の奥から湧き出てきた。

私は彼らに人生を救われたと思っている。



ライブの帰り、彼氏に「死ぬまで一生愛されてると思っててもいいですか?」と聞いた。

「愛しましょう。」

そう言ってくれた。




翌週、2人で結婚指輪を買いに行った。


次は私が、誰かじゃない この人と決めた記念日を見つける番だ。






#だからそれはクリープハイプ

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