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『るろうに剣心 -明治剣客浪漫譚-』を視て思ったこと

今年07月からフジテレビ系列ノイタミナ枠ほかで放送された和月伸宏原作漫画『るろうに剣心-明治剣客浪漫譚-』が先日放送終了となりました。

開始当初に本作に期待している旨を書いていたのですが、全24話を視て気になった点などを書き記しておこうと思います。

尚、るろうに剣心は1996年にもアニメ化されており、本記事ではそちらを『1996年版』今年放送されたものを『2023年版』と定義しています。


主要キャストの演技が似通っていることに最後まで困惑

2023年版の制作が発表されキャストの一新が分かった当初、1996年版ファンの少なくない方がそのことへ反対的な意見を述べていらっしゃいました。その当時私はそこに拘りが無かった為全く気にしていなかったのですが、いざ視聴を始めてみたところ最も気になったのがこの『声』でした。

それは『イメージに合う/合わない』や『1996年版の方が良かった』という話ではなく、とにかく主要登場人物達を演じる方々の演技の方向性が『低く野太く響かせる』で似通っており、物語や画よりそちらに意識が行ってしまい結局最終回まで集中力を削がれる時間が続きました。

緋村剣心、相楽左之助、鵜堂刃衛、四乃森蒼紫、斎藤一と味方にしても敵役にしても同じ様な演技で掛け合いをされると気になるもので、画や話に集中出来ない原因となりました。緊張感が伴うシーンや深刻なやり取りを描いたシーンではその傾向が更に増したように思います。

私は声優の方には詳しくはないのですが、斎藤一役を担当された日野聡さんは数少ない"知っている声優さん"で、同じ週刊少年ジャンプ掲載作品の『バクマン。』や『ハイキュー!!』での演技を気に入っていただけに斎藤一の演技を最初に聞いた際は複雑な思いでした。

当初「何故似た声の方々ばかりを起用したのか」とも思ったのですが、その後これは演技に由来するものであると考えを改めました。演じていらっしゃる当人の役作りの問題なのか音響監督がこうした演技を要求した結果なのかは想像するしかありませんが視聴中とにかく悪い意味で声の要素に意識を奪われ続けました。

これまで他の作品を見ていてもこうした経験が無かった為、自分としてもこんなにも気になるものかと驚いたのですが今回一番良くないと感じた点がここです。

戦闘シーンの描写が緻密に

スタッフの方々には大変失礼ながら1996年版では何処か安っぽく格好良いとは言い難かった戦闘シーンが格好良く生き生きと描かれた点は2023年版の素晴らしい点であると強調したいところです。

龍槌閃がどのような技なのか、回天剣舞は、牙突は…原作を読んでいる時は想像で補っていた動きが生き生きと連続的に描かれ、爽快感を失わない程度に重力の存在も感じさせることで玩具っぽさと距離を置く絶妙なバランスが見出されている点は多くの人に注目して頂きたいポイントです。

新たに追加されたエピソードと1996年版から修正されたエピソード

原作漫画で省略されている場面を補ったり印象を変えない程度に話を膨らませる要素はアニメ化の楽しみな点ですが、追加エピソードの面で言えば良くなかったと感じました。

例えば原作に於ける月岡津南編では終盤の炸裂弾を剣心が処分したと左之助が伝えたやり取りの後、長屋内での会話のみで津南を諭し終幕へ向かうわけですが、2023年版では大幅に描写が追加。その決断はともかく、内容が原作が持っていた感傷的でハードボイルドな雰囲気を壊す熱血青春方向に進んだことは蛇足であったと言わざるを得ません。

一方で良かった点としては1996年版では原作と違う道を辿った話が原作準拠に修正された点です。具体的には高荷恵誘拐後観柳邸に乗り込む際薫は同行していなかったのですが、1996年版では同行する展開に改変。ところが今回2023年版は原作通り薫は神谷道場で帰りを待つ展開で描かれました。これによって観柳邸内でのやり取りが剣心・左之助・弥彦に集中して描かれる点が原作通りとなりました。

また、1996年版では以上の理由から京都編で巻町操に御庭番衆の最期を語る際に薫の台詞が異なっていましたがこれも修正されるでしょう。

何故"原作準拠に修正されて良かった"と書いたかというと、私は明確に良くなったと感じる改変以外は可能な限り原作の展開に沿うものである方が原作への敬意の表し方として適切であると考えているからです。制作の都合やビジネス上の都合など理由があれば納得出来ますし、一語一句変更を許さないなどという純粋主義的な考えは持っていません。しかし、作者と担当編集者が吟味し時間を掛けて作り出した物語を安易には変えないことはアニメ化の際重要視されるべき要素だと考えます。

最後に

先ずは制作に関わった全ての方に感謝し、この時代に再度アニメとしてるろうに剣心が蘇った姿を見ることが出来た幸運を喜びたいと思います。一度アニメ化済み且つ20年以上前に連載が終了した漫画が再度アニメ化されるというのは傑出した人気作であるということの証明であり、それ自体は単純に祝福するべきことです。

その上で正直な感想を綴ると2023年版の出来は『やや期待外れ』でしたが、全く予備知識無くるろうに剣心に触れた方の感想は私とは全く異なるものでしょうし、そうした方が漫画にも手を伸ばし北海道編含め新たなシリーズファンとなって下さるのは喜ばしいことだと思います。

既に京都編の続きの物語が2024年にアニメ化される予定である旨が発表されています。小規模な話が続いた東京編と異なり志々雄真実による"国盗り"とそれを阻止せんとする剣心一行の対峙という少年漫画らしい壮大な物語が描かれるのは楽しみですし、願わくば私が気になった点が修正された姿で視ることが出来たらなと希望を持っています。

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