催眠術で犯罪はできるのか?元警察官催眠術師の分析
皆さん、はじめまして。
催眠術師の十文字悠迦(ようか)です。
7年間警視庁警察官として勤務しておりましたが、現在は催眠術師という怪しいイメージの仕事をしております。
楽しいエンターテイメントの催眠術ショーを全国を回ってしておりますが、未だに「怖い」「危ない」「かけないでください」などのマイナスな意見が多いので、この度noteを書くことにしました。
多くの方に正しい催眠術が伝わりますように…
◯催眠術が原因の犯罪
催眠術で犯罪は出来るのか?その答えの前に催眠術が原因と言われている事件のお話をします。
1930年、後に「ハイデルベルク事件」と呼ばれる事件が起きました。妻が夫の殺害を企てたり、自殺未遂を起こしたものですが、捜査をしていくと不可解なことに、妻が通っていた医者からの治療の記憶がないという事実が浮上し、更に捜査をすると医者ではなく、医者になりすましたベンゲルという詐欺師が催眠の暗示によってそのような事を引き起こしていることが判明したというのが事件の概要です。
※詳しくは様々なサイトで取り上げているので割愛します。
◯では催眠術で犯罪は可能?
では、やはり催眠術は危ないのでしょうか?
ここで皆さんに質問したいと思います。
「今まで催眠術が原因で起きた犯罪のニュースを見たことがありますか?」
おそらくほとんど皆さんの答えは「NO」だと思います。このネット社会でもそんな話は聞かないはずです。
もし、可能であれば毎日のように催眠術が原因の事件が起き、「振り込め詐欺」よりも社会問題になっていると思いますし、僕自信も警察官時代に催眠術の事件を扱ったり、聞いたことはありません。
◯催眠術に強制力はない
意外かもしれませんが、催眠術には強制力はありません。なので嫌がっていたり、怖がっていたり、かけてみろ!なんて思っていたらかかりません。
TVで芸能人が「本当に嫌だ!かかりたくない!」と言っていても、かかっているのはヤラセなどではなく、ちゃんと仕事のオファーの段階から「催眠術にかかる仕事です」と言われていて、ちゃんとOKしているからです。
◯では、何故過去に催眠術の事件が起こったのか?
催眠術は人によってかかりやすさが異なります。なので、催眠術にかかりにくい人にはまずそんなことはできないでしょう。
かかりやすい人なら?と思いますが、それもほとんど無理です。推理小説に出てくるような「鐘が鳴ったら飛び降りる」なんて暗示はかかりやすい人でもブレーキがかかってしまします。
では、絶対にできないのかというと実は例外もあります。稀に「暗示に従順に従ってしまう特殊な脳」を持っている人が存在します。その数は数万人に一人とも言われるほど見つけるのが困難です。過去に起こった催眠術の事件はそういったものが偶然重なったものだと考えられます。更にハイデルベルク事件の場合は1000回も催眠術をかけていたという記録もあり、一人に対してそれだけの回数をかけること自体も異常な数字です。
◯おわりに
催眠術を悪用しようとしても基本的には強制力はないので犯罪を起こすのはほとんど出来ません。
使う技術や道具は使う人次第。包丁も使い方を誤れば凶器ですが、本来の使い方は美味しい料理を作るものです。
催眠術も楽しいエンターテイメントや医療にも使われている脳科学を使った技術です。是非正しい知識が広まって、より人の役に立つ技術として認識して欲しいと願っています。