映画「ミロンゲーロス」感想その2

映画「ミロンゲーロス」は、タンゴ黄金時代と呼ばれた1940-1950年代にタンゴを踊った、アルゼンチンのミロンゲーロ、ミロンゲーラ総勢38名へのインタビューからなる映画です。作成者であるリカさん曰く愛すべき「ジジババ映画」。

この映画の何がいいって、歴史の当人たちの思い出が本人の口から聞けるから、今までぼんやりとイメージされていたものが俄然具体性を持ってくるんですね。

映画を見る3ヶ月くらい前かな?レッスン後のプラクティカ(練習)タイムで、男同士の練習はいいですね、女性がどう感じているかわかるからって言った男性がいて、その流れで関谷先生が話してくれた話。
昔は、男性同士でグループでたくさん練習したの。うまくないと女性に踊ってもらえないから。
男性同士でたくさん練習した上でミロンガに行って、誘いたい女の子を見つけたら、女の子たちはお母さんと来ているから(!)、まずはそのお母さんを男性グループの中で一番うまい人が誘うんだって。
そこでうまく踊ってお母さんのお眼鏡にかなえば、「あそこのグループは踊れるわよ」というお墨付きをもらえて、晴れて、その女の子たちを誘えるというわけ。

そういう、なんとなく「へー」て聞いてた話が映画を見ると、すごく解像度上がるの。
ベランダから男性同士で練習しているのを見るのが好きだったとか、
「あの人私を誘うわよ」みたいな会話をしてたとか。
あの人に断られたから、今日はあそこのグループは誘わないんだ!みたいな若い意地があったとか。(なんせ13~17歳とかだ)
時期的には、酒場の踊りであったタンゴがいったんヨーロッパに行って、逆輸入されたころでしょうか。男の人が断然多かったみたいで、そりゃそうかもね。まだ、女の子がそんな酒場の踊りを踊るなんてはしたない!ていうのと、でも遊びたい!というののはざかいだったのかな、と思います。

踊り方に3種類くらいあってさ、みたいな話も、
不況でお金持ちが地方に散らばって、(地方の)スンデルランドではフロアが広いから歩くサロンタンゴが発展して、都市部では(狭くて混んでるから)小さく踊るミロンゲーロスタイルが残ったとか、そういう今まで断片的に聴いていた話が俄然リアルに感じられる。
※このスタイルの区分けも呼び方もいろいろかと思います

あとは、過去若者だった人たちの、その青春時代にキュンキュンしたり。
お金がないながらも、なけなしのスーツにアイロンかけて、ばっちりおしゃれしてミロンガに行ったんだ、とか。その意気、張り。
ステップが今ほど体系だってないので、みんな自分たち(男性同士)で研究するわけだけど、踊り場で真似したい!ていうステップを見た時に、「そのステップくれよ」って言うやり方とか。
教えたり教わったりするんじゃないんだよ。そこで見せてもらって、帰って自分たちで研究して、自分たちのステップを作るという。

前の紹介記事で私、「ダンサー」て書いちゃったけど、ダンサーじゃないね。踊りたくて出会いたくて楽しみのために踊っているんだ。習い事でもないし、職業でもないんだ。

映画のエンディング近く、もう体が若いころのようには動かないけれど、私の踊る踊りは私の踊り。みたいなことを言ってて、映画の最初から通して、人の人生を見ているようで、涙が出ました。

本当に、いろいろ詰まってる映画でした。
詰まり過ぎてて字幕の切り替わりが早い早いw
ぜひ、見て下さい。

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