【読書感想文】殊能将之さんの「ハサミ男」を読んで
僕は Twitter のタイムラインを眺めていました。確か電車で移動中の暇つぶしにスマホを開いて手グセで開いただけだったように思います。たまたま、ゆうきまさみさんがこの本を読んだ話をつぶやいていて、ちょっとだけ気になってしまって、結局買いました。
ミステリーはずいぶん久々です。IT事件簿は読みましたが。
内容紹介
美少女を殺害し、研ぎあげたハサミを首に突き立てる猟奇殺人犯「ハサミ男」。3番目の犠牲者を決め、綿密に調べ上げるが、自分の手口を真似て殺された彼女の死体を発見する羽目に陥る。自分以外の人間に、何故彼女を殺す必要があるのか。「ハサミ男」は調査をはじめる。精緻にして大胆な長編ミステリの傑作! 【2005年公開映画「ハサミ男」原作】(講談社文庫)
あらすじです。
正直、これ以上うまくまとまりません。流石プロのあらすじは半端ないです。それに感想文とはいえ、ネタバレは良くないという気持ちもあります。なので、ネタバレしなさそうな感想を。
ハサミ男はシリアルキラーです。シリアルキラーはウィキペディアによると
一般的に異常な心理的欲求のもと、一ヵ月以上にわたり一定の冷却期間をおきながら複数の殺人を繰り返す連続殺人犯に対し使われる言葉
と書かれています。ここ数年頻繁に使われるサイコパスとはちょっと違います。サイコパスの定義はウィキペディアによると
オックスフォード大学の心理学専門家ケヴィン・ダットンによると、サイコパスの主な特徴は、極端な冷酷さ・無慈悲・エゴイズム・感情の欠如・結果至上主義、である。現状では、チェックリストのみが診断基準であるので医学的にサイコパスと同じ状態であっても反社会性がなければサイコパスとはならない。反社会性などの診断基準を満たす者は幼少期からの素行問題など行動面の異常を示すことが多い。
という感じで、気軽に(?)言われるサイコパスとは大幅に意味が違うように思います。照らし合わせてみると、ハサミ男はちょっと異常ですがサイコパスではないように思います。本人からも語られますが、ちょっとした欲求から複数の殺人を犯したシリアルキラー、ハサミ男です。ハサミ男をよろしくお願いします。
よく考えたらそれはどうでもいい話でした。
この小説の面白いところは、刑事コロンボのように初めに犯人がわかり、しかし真犯人も別にいて、更に刑事役も別にいるという多重構造で仕掛けの多い複雑怪奇な構成であるところです。評判よりもわかりやすい仕掛けじゃないか、などと思っていると足元をすくわれる解決編でした。
ハサミ男は犯罪者としては優秀ですが、探偵役としては平凡で、自己評価が異常に低く、行動力があります。つまり殺人鬼なのに主人公としてある種の好感が持ててしまう魅力があります。
非常に用意周到、焦らずじっくりと自分の生活を過ごし物事を淡々と進めていくクレバーな面と、自分に対して深い諦念を持ち全てを受け入れてしまう面と、偶然から乗り越えてしまう幸運とを絶妙に持ち合わせた人物がハサミ男です。
ハサミ男の視点で語られるこの物語は、ある意味奇妙なハッピーエンドで、1度めと2度めでは印象を変えるミステリー小説でした。
もし何かミステリー小説を読みたければ、まずはこの作品を読んでみることをお勧めしたいです。そして読み終えた後、もう一度読むことをお勧めします。
#読書感想文
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