ひとつテンヤでマダイを釣ってみたい/新幸丸
※掲載終了の「@niftyつり」から2010年3月上旬の「ゆるゆる釣り部」釣行記を一部修正して移植しました。これが連載一回目なんですけど、釣果が酷いんでわざわざ再掲載するのもなーと思ったんですが、記念なのでアップしました。自己紹介から始まっているのが恥ずかしいですね、それにしてもひどい釣果、よく連載が続いたものだ。
ひとつテンヤが流行っているらしい
私を知らないほとんどの人ははじめまして。知っている一部の人はこんにちは。「私的標本」というサイトで釣りレポートなどを書いております玉置と申します。
さて、ここ数年でブームになっている釣りが「ひとつテンヤ」という釣法である。この釣りは、なんでも極細の道糸と軽いおもりを使うのが特徴らしく、釣りは好きだけど上達する気はあまりない友人達の間でも、「あれは絶対楽しそうだ」とか、「でもなんだか難しそうだ」と、なにかと話題になっている。
しかし、実際にやったことのある人はまわりに一人もいないという、ちょっと敷居の高そうな釣りでもあるのだ。
これがテンヤ、ではなくて、その原点であるカブラ。テンヤとカブラは違うものなのですが、違いを説明するほどの知識はないので、この記事ではカブラもテンヤと書きます。どうか怒らないでください。
「誰かが背中を押してくれたら行くんだけどなー」なんて、バレンタインを前にした女子中学生みたいな気持ちで悶々としていたら、ニフティの方から「君、ちょっと沖釣りのレポート記事を書いてみないかね」とのオファー到来。「してやったり」という言葉を人生で初めて使いたくなった瞬間だ。
ということで、記念すべき第一回として「ひとつテンヤでのマダイ釣り」に挑戦することにした。昔からいうように「大原、大原、本気になったら大原」なのだ。
ちなみに釣りは今までに何度となくいっているけれど、手のひらより大きいタイを釣ったことないよ。
船宿へレッツゴー
今回お世話になるのは、ニフティの担当者の方が「この船長なら間違いない!」といっていた大原港の新幸丸さん。新しい幸せで丸と書いて新幸丸。うん、縁起がいい。きっと大漁。そして夕飯は鯛料理大量。
かっこいい船宿。
さあひとつテンヤでマダイを釣るぞと意気込んではみたものの、どうにも海が荒れ模様。ただでさえ波の高いイメージがある外房、少しでもコンディションがいい日を狙って待ち続け、どうにか晴れそうな三月三日に決定。ひな祭りの日ってめでたい感じだし、なんだかタイ釣りが似合うよね。きっと爆釣。
しかし同じように晴れを待っていたひとつテンヤに魅せられた釣り人は多かったらしく、予約の電話をしたときにはすでに午前の船がいっぱいで、初挑戦は午後船となった。まあ早起きしなくていいからいいか。
12時半出船の午後船に車で行く場合、家を何時に出たらいいのかよくわからないのだが、遅刻をするよりは早めがいいだろうと、埼玉の自宅を7時半に出発し、途中で同行者の鈴木君をピックアップ。高速道路に入るまでは混んでいたが、そこから先はスムーズで、10時半には大原に到着してしまった。
予約の時に、船宿ではなく船に直接来てくださいといわれていたのだが、まだちょっと時間が早いので船宿にお邪魔させていただこうとしたのだが、カーナビが細い路地裏に連れ込んでおいて「案内を終了します」と一方的に言い放ったため、その後30分道に迷う。素直に船にいけばよかったかとも思ったが、どうにかたどり着いた船宿の建物がかっこよかったので良しとしよう。
船宿への道がわかりにくいので、自分のためにもメモしておきます。でも船宿ではなく、直接港の船にいってOKみたいです。
さんざん道に迷ってもまだ時間があったので、車を船宿に止めて、港のすぐ前にあるお店でアラ煮定食を注文。
鈴木君:「アラ煮ってタイのアラじゃないの? 今からタイを釣るんでしょ?」
私: 「いや、そんなはずはない。でもそうかな」
鈴木君:「そうなんじゃないの。で、家に帰ってまたタイのアラ煮を作ることになるんだよ」
私:「 わかった、じゃあ今から来るアラ煮の魚が、今日釣れるということだ!」
よくわからない問答をしつつ料理を待ち、果たしてやってきたアラ煮は、どーんとワラサの頭が半分だった。
本日の外道はワラサに決定!
今日はレンタルタックルで挑みます
アラ煮をきれいに食べていたら船宿から港への送迎の時間に間に合わず、港まで荷物担いでダッシュすることになったという小話は置いておいて、さっそうと港から新幸丸に乗りこむ。ここの船は初めてだったのだが、釣り座も広いしキャビンもトイレもきれいだった。
無駄に走ったので、今、汗をだらだら流しています。
釣りは釣り方、狙う魚によって専用の竿がある訳だが、当然ひとつテンヤのマダイ釣りも、専用の竿が各種発売されている。だが初挑戦の私は当然持っていない。自前のシロギス用の竿で代用できるか予約の時に船長に相談してみたら、無料の貸し竿があるとのこと。
キス竿よりは貸し竿を断然薦めるということだったので、せっかくなので借りてみることにした。もちろんリールも付いている。糸は道糸がPE0.8号にハリス(リーダー)が3号2メートル。船長曰く、これ以上細い糸だと、初心者の場合は切れてしまうことが多いそうだ。
貸し竿は先調子の2.2メートル。穂先は柔らかいけど、かなりしっかりしている。これで大きなタイをこれから釣るわけですね。
ちなみに同行いただいた鈴木君もはじめてのひとつテンヤなのだが、彼は張り切って4万円の専用竿を買ってきていた。
テンヤは事前に買おうとすると、何号がいくつ必要になるのかがわからなくて、ついいろいろ買ってしまいそうになるが、船長に聞いたら1~10号まで船で買えるということだったので用意してこなかった。船長の考えだと、11号より重いテンヤはこの釣りでは必要ないので置いていないそうで、そのあたりにひとつテンヤという釣りへのこだわりが見られる。
敷居が高いイメージだったけど、貸し竿は借りられるし、テンヤは船で買えるから、釣り道具をなにも持ってなくてもできる釣りということだ。仕事にいくふりをして家を出て、電車で大原まできてスーツで午後船に乗るというプレイをぜひ今度やってみたい。アタッシュケース型のクーラーボックス作らなきゃ。
釣り方を習おう
港を出た船はポイント目指して一直線。外房らしく波しぶきがすごいのでキャビンに避難し、用意されているコーヒーやお茶を飲む。
常連さんの話では、この釣りはタイ以外の外道もオニカサゴやホウボウ、ハタなど豪華らしい。まあ私の場合、アラ煮占いによって外道はワラサと決まっているのだが。
「タイはさ、落としているときに食うんだ」と、はるばる茅ヶ崎から来た常連さん。
ポイントに到着。パラシュートアンカーでの流し釣りスタイル。
ポイントに到着したところで、仲乗りさん(四代目の若船長だそうです)に声をかけて、まず最初に餌の付け方を習う。
尾羽をハサミで切って、そこから大きい方の針をエビがまっすぐになるように刺して、小さいほうの針をエビの頭にひっかける。写真で見るとややこしそうな付け方だが、やってみると意外と簡単。エビは最初に配られた分がなくなっても、無料で補充してもらえるよ。
小さい方の針は頭の好きな場所に掛けてください。
エサが用意できたら次は釣り方。テンヤは基本的には投げずに真下に落とし(状況次第ではちょっと投げることも)、糸ふけがでないようにサミング(眼つぶしではなく、指先で道糸を軽く押さえること)をしながら底まで落としていく。この落としている途中でアタリがでる時もあるので気を抜いてはいけないらしい。
このサミングが大切なのだが、それを理解するのにはもう少し時間がかかった。
テンヤが底までつくと、糸のたるみなどでわかるので、リールのベールを戻して糸ふけをとる。
誘い方は、竿先を水面近くまで下げて、そこから旗のように大きく持ち上げて、ゆっくり竿を下げていく。そして15秒くらい待ってみて、また持ち上げる誘いを入れる。
これを3、4回繰り返したら、仕掛けを巻き上げてエサのチェック。アタリがあったら即あわせで、魚がかかったらポンピング(竿を上げて、下げながらリールを巻くのをくりかえすこと。よくマグロと戦っている人がやっているアレ。)せずに、できるだけ一定のスピードで巻き上げること。
※追記:レンタルだからやってもらってあるけどリールのドラグ調整とかが必要だよ。
竿先を下におろして着底させて……
上まで大きく誘う。後ろのグラサンが鈴木くん。
もちろん細かいことをいえば他にもいろいろポイントはあるのだろうけれど、基本的な流れは以上である。どうやら初心者にとっての一番のポイントは、きっちりと底をとれるかどうかのようだ。
底がとれない!
仲乗りさんにやさしく教えてもらって、なんとなくひとつテンヤの釣り方はわかった(気がした)ので、さっそく釣り開始。船長のアナウンスによると、水深は58メートルとかなり深い。テンヤは水深10メートルあたり1号が基本ということで、ちょっと見栄を張って購入した5号のテンヤを海底へと落としていく。すると、そろそろかなと思ったところを過ぎて、まだ糸がヒョロヒョロとでていく。あれ?
わかんなーい。
高い竿を買ってきた鈴木君も首をかしげている。
両軸リールを使った重いオモリの釣りだと、仕掛けが底に着けば糸は止まるが、軽いオモリでスピニングリールの場合、一旦(一瞬)は止まるけど、そのままにすると糸が潮を受けてヒョロヒョロと出てしまうようだ。
今思えば、サミングをすると着底までの時間が長くなるのを嫌って、いわれた通りにサミングをしていないところに底をとれない大きな要因があるのだが、この思いをあの時の私に伝える方法は残念ながらない。
こんな状態なので当然アタリをとるという段階ではなく、仕掛けを上げてみるとエサがいつの間にか齧られていた。
後頭部だけ食べられていることが多かった。
ここまで食べられてもアタリわからず。
とりあえずおやつをたべて一休み。
この前ライトタックルアジ釣りに釣り初心者の友人といったとき、「底がわからない」といっているのが不思議だったが、今ならその気持ちが理解できる。
こういうのって、できる人にとっては当たり前のことだけど、できない人にはまったく理解できないものなのだなー。
底がとれた!
このままでは釣りにならないので、仲人、じゃなくて仲乗りさんに相談。状況を正直に話すと、ちょっと重めで練習しましょうということになり8号を追加購入。今度はちゃんとサミングしつつ、糸ふけが出ないようにゆっくりと丁寧にテンヤ(じゃなくてカブラなんだけど)を落としていく。
底に着くまでに出る糸の長さを、水深と糸が落ちていく角度を三角関数で計算しておき(というのはウソで、だいたい水深+数メートルくらいだろうと勘で計算)、落ちていくPEラインの糸の色(10メートルごとに色が変わる)に注目し、底付近まで落ちたら集中力を高める。しばらくしてフワリと道糸が弛んだ。
あ、底!
やったー。底がとれたー。
しかし底がとれただけで喜ぶ釣りっていうのも新鮮だ。
みんなもサミングしようぜ!
何回かやっていくうちにだんだんと当たり前のように底がとれるようになり、水深30メートルくらいの浅場だったら、最初に買った5号でも大丈夫になった。釣り以前に底をとるというのがゲームみたいでおもしろい。
ポイントを変えるたびに船長がアナウンスで水深を教えてくれるが、流し釣りなので水深がころころ変わるため、常連さんがやっているみたいな探検丸で深さを確認しながらの釣りが有利そうではある。
そして大物が釣れた!
さて底がとれたはいいけれど、この日は魚の活性がすこぶる悪く、周りの人もほとんど釣れていない。それでも餌は食べられているし、たまーにコツっと手に感じるアタリや、竿先がクっと曲がるアタリがある。でもこれが合わせられないんだ。
そんな感じでなにも釣れないまま時間が経ったのだが、船が浅場に移動してアタリがわかりやすくなったところで、ようやく、ようやく合わせることに成功。興奮しながらリールを巻くと、緩めに設定されたドラグがジージーと音を立てて適度に糸を出してくれる。細い糸でも切れない理由はこれか。
仕掛けが軽いので、巻き上げるリールの重さが、ほぼ釣れた魚とイコールなのが気持ちいい。この釣りは魚の重さと引く力が、ハリから竿先まで一直線の糸を通じてダイレクトに伝わってくるのだな。最高。
この重さだと結構大きいんじゃないかなと思いつつ、ジージーいうリールを巻いていく。そして上がった記念すべきひとつテンヤでの一匹目は…
あ、赤くない! しかも隣の人とオマツリしている!
35センチの良型ウマヅラハギでした。
なんか重いと思ったらオマツリしていたのか。それでもやったー、ひとつテンヤウマヅラ釣り成功だー。
なんだか今日は喜びのハードルがとても低い気がするが、この渋い状態の中、ひとつテンヤでアタリがとれて、魚が釣れたというのがとてもうれしいのだ。もう一仕事を終えた気分である。
すぐに鈴木くんも同じくウマヅラをゲット。ウマヅラが釣れて大喜びしているのは我々だけ。彼の方が釣りライターっぽい外見ですね。
エラをハサミでチョキチョキして、海水を入れたバケツに頭から入れて血抜きをする。釣れた魚はおいしく食べる派です。
そしてそのまま日が暮れた
ウマヅラとはいえ一匹釣れたことで気分がだいぶ軽くなった。時間はまだある。次こそは赤い魚を釣ってやると5号のテンヤで攻めると、今度は明らかにウマヅラとは違う引き。それほど大きくはなさそうだが、途中まで巻き上げても引きが弱くならないところに好感を覚える。これがタイの引きっていうやつなのかな。
この勇姿をぜひ鈴木君に撮影してもらおうとカメラを渡したところで、フッと軽くなった。
あああああーっと驚くタメゴロウって誰のギャグだっけ。
どうやら無駄な動きをしたことによって糸のテンションが緩んだタイミングで、ハリが外れてしまったようだ。巻き上げるときにポンピングをしてはいけないという理由がこの辺にあるようだ。
これがこの日の私に訪れた最後のチャンス。あとの見せ場は、大物が釣れたと思ってドラグを滑らせながら竿を曲げていたら、船長から「それは根がかりだよー」と恥ずかしいアナウンスをされて鈴木君に笑われたくらい。それは見せ場なのか。そして根がかりでハリスごとロスト。
道糸とハリスを直結するの苦手なんだよなと思っていたら、船長が船の中で結んでくれた。ドラグの調整も道糸とハリスを結ぶのも、なんでもやってくれて頼もしい。
ちなみに鈴木君はウマヅラをもう一匹釣ったが、やはりタイの姿は見られず。一度いい引きを見せたのだが、買ったばかりの0.6号のPEラインが高切れしてサヨウナラ。船長曰く、0.6号だとオマツリなどでできたちょっとの傷でも切れやすいので、初心者にはまず0.8号を使ってほしいそうだ。
こんな日でも釣る人は釣る。こちらの常連さんが釣ったのは高級魚のハタ。
結局この日の午後船で釣れたタイは全部で2匹だけという、ベテランでも大苦戦の一日だった。船長曰く、潮が動かなかった上に、ここ数日の悪天候で水温が一気に下がったためで、これから温かくなってくれば、乗っ込みの爆釣が期待できるそうだ。
うん、きっと私の腕が悪かったのではなくて、来た日が悪かったのだな。
アラ煮定食の謎が解けた
港に戻ると、今日はあまりにも釣れなかったからということで、おかみさんからお土産にイナダをもらった。
イナダにしては大きめ。
……イナダか。イナダといえば、ワラサの小さいやつだよな。
ハッ、謎はすべて解けた。昼ごはんに食べたワラサのアラ煮は、私が釣る外道ではなく、このお土産のイナダを予言したものだったのだ!
なんていう話でこの記事を終わらせて、ニフティ的に大丈夫ですかね。
常連さんと一緒に船宿にお邪魔して、船長とひとつテンヤの復習をする。親戚の家っぽくなっていますが、初めて訪れた船宿です。
釣果としてはウマヅラ一匹という情けないものだったが、ひとつテンヤの釣り自体はとても楽しかった。釣れなかった私がいっても説得力がないかもしれないけれど。これで魚の活性が高かったらどんなに楽しい釣りなんだろう。やはりシンプルな道具でやる釣りは楽しい。
ひとつテンヤで釣果を上げるには、この釣りを理解することが大切。初めての人はもちろん、本で学んだ人も、他の船宿でやったことがある人も、とりあえず初めてこの船宿でひとつテンヤにチャレンジするときは、一度説明させてほしいと船長はいう。
今日はひとつテンヤという釣りのルールをどうにか覚えたことが収穫だ。釣り方を教えてくれた仲乗りさんも「ウマヅラが釣れるならタイも釣れる」といってくれているし、次回こそは釣ってやるさということで、後日どうにかリベンジしたのでした。
専用竿とリールを買って挑んだよ。
自分で釣った大原のタイ、おいしかったです!野菜ゼロ生活!
ついでにおいしいウマヅラの肝合え丼の作り方を載せておきます。唐辛子が臭みを消してくれるよ。
(1)ウマズラを釣るか、リリースしようとしている人からもらう。
(2)鰓蓋から頭に向けてハサミをいれて血抜きをする。
(4)家に帰ったら丁寧に内臓を取り出し、肝は酒で洗っておく。
※ここから先は、釣りの翌日でも大丈夫。大切なのは、血抜きをしっかりすることと、内臓の匂いを肝や身に移さないこと。
(5)ウマズラの皮を剥いて、適当に刺身を作る。どうせ混ぜるので、多少ぐちゃぐちゃでもOK。
(6)肝を熱湯で数秒湯通しをして、味噌を溶くやつとかザルとかで濾す。
(7)濾した肝に醤油多め、みりん少々、みじん切りのネギをたっぷり入れて混ぜ、刺身と和える。
(8)ドサっとご飯に乗せて、好みでたっぷり唐辛子を振る。